三原と樋口が国別対抗戦で大躍進 FS日本最高得点も、問われる真価

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SPでも共に自己ベストをマーク

キス&クライで羽生(後列右から2番め)ら日本チームから拍手を送られる樋口(中央) 【坂本清】

 しかし、こうした苦い経験が彼女たちを成長させた。国別対抗戦のSPでは、共に70点台をマークし自己ベストを更新。三原はジャンプのみならず、スピンとステップですべてレベル4を獲得した。

「練習中には、どうしても世界選手権でのフリップの失敗が頭をよぎることはありました。でも国別対抗戦に出させていただくことになって、世界選手権でのミスをここで挽回しようと、強い気持ちで行きました」

 三原はフリップのミスを取り返すために、「連続で何回か跳べたら、試合でも絶対に跳べる」と自分に言い聞かせて練習していたそうだ。最高では15回連続成功したという。その練習が生き、3回転フリップも見事に決めてみせた。

 樋口も会心の演技を披露した。後半の3回転ルッツ+3回転トウループについては「1つめのジャンプを下りたときにダメかと思った」と言うが、しっかりと体を締めて着氷。7つの要素すべてに加点も付いた。

「ジャンプでミスをしないようにと思い過ぎて、これまでの試合では失敗していたので、失敗しないようにと思い過ぎなかったのが良かったと思います。世界選手権では余裕がなかったので、この大会はとにかく挑戦することを目指していました」

 その言葉通り、競技前の公式練習ではトリプルアクセルに挑んだ。何回か着氷させ、その完成度の高さには樋口を指導する岡島功治コーチをもうならせた。今大会では構成に入れなかったが、来季の導入を考えているという。

待ち受けるし烈な五輪出場権争い

 悔しさを糧に、国別対抗戦では進化した姿を見せた三原と樋口だが、それに安住しているわけにはいかない。この大会はISU(国際スケート連盟)主催の公式戦ではあるが、チーム戦であり、キス&クライで各選手が楽しんでいる様子を見ても、ややお祭り的な要素が強い。もちろん「チームに迷惑をかけられない」という別のプレッシャーは存在するだろうが、世界選手権や五輪といった大舞台で感じるそれとは比較にならない。重圧が掛かる中で、同様の演技をしてこそ、本当の強さが備わったと認められる。

 三原は今後に向けての決意を語る。

「今回は皆さんに伝わる演技ができたんじゃないかと思います。来季はたぶん曲は変わるんですけど、(FSで使用した)シンデレラという曲で戦ってきた経験を生かして、もっともっと強くなりたいと思います」

 樋口は新たな挑戦に思いをはせた。

「FSに関して言えば、130点を超えることを目標にしていたんですけど、それを大きく超えたので、次は150点を出したいです。それからトータルで今回は200点を超えましたが、大きな大会でまた200点を超えたいと思います。とにかく点が出ないと意味がないので、来季はトリプルアクセルにもトライして、確率を上げていきたいです」

 平昌五輪の出場枠は2つ。シーズン後半戦を欠場した宮原が復帰し、本田真凜(関西大中・高スケート部)らジュニアの有望株がシニアに参戦する来季は、かつてない混戦が予想される。五輪の出場権争いはし烈を極めることだろう。そうした重圧が掛かる中、いかに自分の演技を貫けるか。三原と樋口の真価が問われるのはこれからだ。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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