「復興支援マッチ」に臨む松本山雅の思い 熊本の苦闘を知っているからこそ、全力で

多岐太宿

益城町出身の鐡戸が語る「忘れられない光景」

現在チームのアンバサダーを務める鐡戸。益城町出身の鐡戸には忘れられない光景がある 【多岐太宿】

「熊本地震復興支援マッチ」に向けて準備を進めているのは、選手ばかりではない。昨季限りでユニホームを脱ぎ、現在は松本のアンバサダー兼強化担当として活動する鐡戸裕史も同様だ。

 鐡戸は最も大きな揺れを観測した益城町の出身。実家は大きな被害を受けなかったものの、街中は様変わりしていた。年末年始まで熊本には帰らなかったが、地震から半年以上たってなお、歪んだ道路や倒壊した住宅が多く見られることに衝撃を覚えた。復興はまだまだ遠いことを悟ったが、熊本城の櫓(やぐら)を支えた「奇跡の一本石垣」には、大地震に負けないという熊本の意地を感じた。

 選手だった昨シーズンは募金活動やチャリティーTシャツの製作などを行ってきた。現役を終えたこともあり、今年の熊本戦では、これまでと異なる活動を計画していた。シーズンの日程が発表される前から、いくつかの企画を立案してきたが、知人である地元サッカー関係者の協力を得たことで、試合前日に益城町でサッカークリニックを行うことが決定した。これには07〜08年に熊本に所属していた小林陽介ホームタウン担当に加えて、神田文之社長も参加することになった。

 鐡戸には忘れられない光景がある。昨年末に選手会の主催でサッカークリニックを行った時、多くの子供たちが純粋に楽しんでくれたことだ。サッカーボールを追いかける子供たちの笑顔――。その表情に、熊本の将来への希望を見いだした。

「今回のサッカークリニックでも子供たちに笑顔になってほしい。だからこそ、自分も一緒になって楽しめればと思っています。そうでなければ子供たちも楽しめませんから」

 そして、多くの有名選手が参加したクリニックにおいて、子供たちの人気を集めたのが熊本の選手たちだったことにも感銘を受けたという。あらためて地元クラブが勇気や感動を与えられる特別な存在であることを実感した瞬間だった。

試合を最高ものにすべく、全力で挑む

松本は最善の調整を重ね、ピッチ上で最高のパフォーマンスを見せるつもりだ 【(C)J.LEAGUE PHOTOS】

 この「熊本地震復興支援マッチ」では、同じピッチに立つ松本は敵役とならねばならない。どの試合であっても自らが身を置くチームの目標達成に貢献することこそ、プロフェッショナルの責務であり、勝ち点「1」の差でJ1復帰を逃した昨季の悔しさを晴らすためにも、負けられない試合となる。勝利のために最善の調整を重ね、ピッチ上では最高のパフォーマンスを見せる心積もりだ。

 その上で「ロアッソ熊本は、県民の希望であり誇りだと思っています。一県民として応援しているし、この試合を素晴らしいものにしたい」と藤嶋は口にする。熊本が直面してきた苦闘の1年を知っているからこそ――。

 藤嶋はホームチームをリスペクトしつつ、対戦相手としての立場で「熊本地震復興支援マッチ」を最高のものとすべく、全力で挑むことを誓った。ゲストやOB選手による前座試合など各種イベントが彩る試合は、意地と意地のぶつかり合う好ゲームとなるはずだ。

 最後に「県外の皆さんが熊本に足を運んでもらうことが復興への助けになる」という鐡戸の言葉を紹介して、終わりとしたい。

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著者プロフィール

1976年生まれ、信州産。物書きを志し、地域リーグで戦っていた松本山雅FCのウォッチを開始。長い雌伏(兼業ライター活動)を経て、2012年3月より筆一本の生活に。サッカー以外の原稿も断ることなく、紙、雑誌、ウェブサイト問わず寄稿する雑食性ライター。信州に根を張って活動中!

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