武豊キタサンに不安材料「デキ8分」 対するマカヒキは?GI昇格大阪杯を激論
競馬専門紙「優馬」トラックマン座談会
夢の初対決キタサン&マカヒキに 世界のサトノも黙っちゃいない
昨年の年度代表馬キタサンブラック(白帽)が人気を集めているが……(撮影:日刊ゲンダイ) 【(C)競馬専門紙「優馬」】
田崎「中でも、やっぱりキタサンブラックですね。常にレベルの高い相手と戦いながら、一度も崩れなかった昨年の成績は立派の一言で、まさに年度代表馬にふさわしい活躍ぶりでしたからね。馬体が合ってからの渋太さも天下一品で、軸は譲れませんよ」
西田「昨年はクビ差の2着でしたが、勝ち馬とは2キロの斤量差がありましたからね。GIになって全馬同じ斤量になったのなら、メンバーのレベルが上がっても信頼できますよ」
小野智「加えて、昨年は勝ち馬にピッタリとマークもされてましたから、斤量差が余計に響いたと思います。先行馬であっても流れに注文の付くタイプではないですし、どんな時でも馬券圏内に来る安定感はさすがですよ」
佐藤直「キレ味不足がキタサンブラックの唯一の泣きどころと言えるんだけど、今回はマルターズアポジーが淀みのない流れで引っ張ってくれそうだし、だったら長所であるスピードの持続力が最大限に生きるはずだよな」
デスク「ただ、他のライバル達がステップレースを経て臨んでいるのに対して、休み明けというのはマイナス材料なんじゃないか?」
那谷「キタサンブラックは久々を苦にするタイプではないんだけど、今回は帰厩した時からテンションが上がっていた点が気懸かりなんだ。調教を積んで落ち着きは出たけど、本来の動きからすると物足りないし、馬体のハリも凄味すら感じさせたジャパンカップの時と比べると一息に映るんだよ。正味、8分くらいのデキしかないんじゃないかと思うんだけど」
小桧山「俺も、又聞きの又聞きで真偽のほどは定かではないけど、“いつもの休み明けのデキにない”という噂は耳にしたぞ」
デスク「この辺は担当の菅にジャッジしてもらいたいが、時計が軽いので調教欄には掲載されていないものの、一日に坂路を3本、なんていう調教もこなしているって聞いたけど」
菅「清水久師が助手時代を過ごした浜田厩舎では、過去にビワハヤヒデが坂路3本追いをやっていて、その話をよく聞いていたそうです。“ハヤヒデは今では考えられない速い時計だったようだけど、ブラックも普通の馬と一緒ではもう鍛えることができない域。今までハードな調教をこなしても少々の事ではへこたれない感じだったし、年を越すあたりから坂路3本ということは頭に浮かんでいた”とのことです」
デスク「でも、キタサンブラックは今までと同じ調整でもここで勝ち負けできる実力を持っているはずだよな。あえて、新しい調教パターンを取り入れたというのは?」
菅「それもしっかり聞いておきましたよ。“確かに今まで通りでもいいかもしれないが、2000mが得意の馬が一叩きして上積みと勢いをもって臨んでくるわけだから、こちらも体力アップして臨まないと。年度代表馬として恥ずかしい姿は見せられないからね。あれをしておけばよかったとか後で悔いが残るレースをしたくはないし、鍛えればそれに応えてくれて競馬に行けばいつも驚かされる馬だから”と。強い馬が更にパワーアップを、と攻めて仕上げてきた師の気持ちに◎を打ちました」
武井「ただ、それでも一叩きして臨む馬との比較では割引きが必要だと思いますし、僕はダービー馬マカヒキを上位に取りたいですね。前走に関しては、大敗した凱旋門賞後の調整が難しかったことと、持ち前のキレ味が削がれる馬場で、情状酌量の余地があります。先ほどは直さんから“淀みのない流れ”という話も出ましたが、速い時計での決着でも好走しているこの馬にとっても、願ってもないことなのではないでしょうか」
坂倉「最近は重賞でも超の付くスローペースが度々あるとはいえ、阪神内回りの2000mで、強力な先行馬が揃っているのなら、まずガチンコ勝負の流れになるはずですし、最強世代のダービー馬を信頼すべきですね。天気予報を見ても良馬場に回復しそうですから、前走のようなこともないはずです」
須藤「マカヒキは、前走時の仕上げの過程で無理をさせていない印象を受けたんですが、まぁそれでも勝てると踏んでいたんじゃないかと……。対して今回は、本気度が違う感じの仕上げですから、間違いなく変わってきますよ」
那谷「今年の1・2月の京都開催は雪や雨が多くて、緩んだ路盤のまま使い込んだから例年以上にタフな馬場だったよな。特に京都記念の週は、障害戦を除いてディープインパクト産駒の勝ち鞍がゼロだったし、極上のキレ味を身上とするマカヒキにとっては厳しい状況。むしろ久々ながらよく走ったとすら言えるよ。今の阪神の良好な馬場なら、現役屈指のキレ味が黙っちゃいないよ」
広田「マカヒキの前走の敗因は、みなさんがおっしゃる通りですが、陣営によると“久々ということで普段よりも少しテンションが高く、レースでも巧く息が入らなかった”という面もあったようです。一度叩いてガス抜きができて、今度はリラックスして臨めるはずですし、最終追いに騎乗したルメール騎手も“秋と比べて特に変わっていないのは何より”と、前向きに捉えていましたよ」
デスク「あとはもう1頭のGI馬、サトノクラウンだが、まずは那谷にミルコの感触がどうだったか教えてもらおうか」
那谷「勝負どころでの反応がけっしていいタイプではないから、内回りの2000mという条件をミルコは不安視していたんだ。ただ、前走の馬体増が太目ではなく、トモに力強さを増した点は評価していたよ。鞍上の勝負強さと堀厩舎の抜かりのない仕上げを考えれば、勝たれて不思議もないけどな」
デスク「そして、コジの番だ。吹いてくれ」
小島「まずは香港でのGI勝ちですが、天皇賞の時も体調は良かったんですが気持ちの面が一息で、そのあたりをモレイラ騎手がピリッとさせたと言えますね。“この馬はジョッキーを選ぶというか、上手な騎手だとキチンと結果を出す”というジョークも陣営から聞かれたほどです。海外も含めて色々あった選択肢から、国内GIにこだわってここに目標を定めたわけですが、これまでは使った反動も出た馬が、今回は予定通りの調整ができて、これだけ万全に仕上ったのは初めてでしょう。とにかく、陣営からはかなりの自信が伝わってきましたよ」