ハイレベルな投打を見せつけた作新学院 史上5校目の「夏春連覇」に好発進

楊順行

相手監督も脱帽するフルスイング

4番・中島は先制タイムリー三塁打を皮切りに3安打3打点の大当たり 【写真は共同】

 打つほうは、初回は併殺で逸機かに思えたが、池澤快斗が四球を選ぶと4番・中島淳の三塁打を皮切りに、相原光星、加藤翼も適時打。コンパクトで鋭い振りには敵将・小林監督も、「昨夏の優勝チームと同等の破壊力でした。先発の岡元(健太朗)に対して、あれだけフルスイングしてきたのは、よほど研究していたのでは……」と脱帽する。

 この日、あわやサイクルの3打数3安打3打点を記録した中島はかつて、「夏はベンチから漏れて悔しかった。センバツは自分の番」と語っていたことがある。打球をもっと飛ばせるようにトレーニングしてきた冬場の成果で、まさにそれを実践したわけだ。

 昨秋は4番に座ることが多かった大関はこの日、9番で2安打1打点。「自分にも中島にもチャンスが回ったように、打線のつながりがよくなっていると思います」と語る。

 小針監督によると、昨秋の関東大会を制した時点では「まだまだ改善点、問題点が多い」チームだった。それはそうだろう。前チームが夏の甲子園を制覇したのが8月21日。新チームは23日にスタートしたが、これは県内のライバルより1カ月遅いことになる。しかも、前チームから残るのは添田と鈴木萌斗くらい。メンバーは、がらりと入れ替わるのだ。

 ただ、「下級生にとって、3年生の戦いを間近で見られたことが最高の財産になっています」と小針監督は言う。今井との対話によって成長した大関がそうだし、添田もこう付け加える。

「先輩たちがやっていたように、全体練習が始まる30分前から自主練習をやるようになりました。“つらい練習の先に、勝てる喜びがある”ことを学んだんです」

 というわけで、「ハイレベルな投打」(帝京第五・小林監督)を見せつけた作新学院は、あの池田(1982年夏〜83年春)以来、34年ぶりの夏春連覇に挑む。次戦の相手は、直近の2期連続ベスト4の秀岳館(熊本)。昨夏優勝の作新との対戦は、開催中の大相撲大阪場所になぞらえれば、横綱と大関の大一番だ。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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