東レをVリーグ制覇に導いたサーブの強化 セッター藤井の成長、レシーブの安定感
「本当に嫌なセッター」となった藤井の成長
多彩なトス回しを見せたセッター藤井の成長もチームにとって大きかった 【坂本清】
「アタックラインぐらいからクイックを通してくるセッターはいるけれど、藤井の場合はもっと離れた場所からでも使ってくる。だから、多少パスが乱れると他のセッターなら『ここに上げる』と絞れるのに、『藤井だったらミドルもあるかもしれない』と思ってブロックが遅れる。ミドルからしたら、本当に嫌なセッターです」
ボールを取る位置が高く、ミドルへのクイックと同じように見せ、ライトへ素早く上げるトスも藤井の持ち味であるため、ブロックに跳ぶ側からすれば最後までどこに上げるのか分からない。ミドルと同じタイミングでオポジットのジョルジェフも攻撃に入ってくるため、ブロックを絞ることもできない。近が言う「本当に嫌なセッター」はこれ以上ない褒め言葉だ。
お互いの関係性を生かすトス
藤井は富松(1番)らミドルを生かしつつ、オポジットのジョルジェフも生かすトスワークを披露した 【坂本清】
だが、今季は違う。昨シーズンのファイナル3で敗れたことや、昨年末の天皇杯を制したこと――。さまざまな経験が藤井にセッターとして厚みを加えるきっかけになった。
「周りからはミドルを使うと思われているから、そこにこだわるのではなくて、利用する。ミドルも使えばニコ(ジョルジェフ)も生きるし、ニコが生きればミドルも生きる。お互いの関係性を生かすのが、自分のセッターとしての軸だと思うんです」
打たせるのではなく、互いを生かすためにはスピードを意識しながらも、打点を生かせるよう高さも出す。相手のブロックを見ながら勝負どころはジョルジェフに託しつつ、決勝の豊田合成のようにラリー中に相手ブロックが中央に寄りながら、サイドを警戒していると見れば「最低でも1枚しか来ないだろうと分析していた」と確信を持って、鈴木のバックアタックを使う。
初の大舞台に「初日は緊張してトスが短くなってアタッカーに迷惑をかけた」と笑う25歳の司令塔を、小林監督は「3年目の正直で非常に成長して、優勝を勝ち取ってくれた」とたたえた。
頂上決戦から日本代表も学ぶべき
東レの優勝で幕を閉じた頂上決戦からは、日本代表も学ぶべき要素が大いにあるはずだ 【坂本清】
勝つために何をすべきかを明確にし、やるべきことをやり遂げる。だからこそ、バレーボールは面白い。Vリーグに限らず、これから世界へと挑む日本代表も、頂上決戦から学ぶべき要素が大いにあるはずだ。