理屈抜きで大インパクトの“電流爆破” 東京03豊本のプロレスあれこれ(9)

東京03 豊本明長

いつ見てもインパクト大の“電流爆破”のお話です 【写真提供:東京03 豊本明長】

 1990年8月4日、レールシティ汐留――

 大仁田厚選手と、自らの身体を張って大仁田選手とFMWを守っていたターザン後藤選手。しかし後藤選手の突然の裏切りに決着をつけるべく用意された舞台が、大仁田厚vs.ターザン後藤のノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチ。ロープの代わりに有刺鉄線が張り巡らされ、そこに触れると電流が流れ、それと同時に爆弾が爆発するという。

 正直冷やかしというか、物珍しさということで会場に足を運んだお客さんもいると思います。しかしその爆破の衝撃を目の当たりにして空気は一変。

「もうやめてくれ!」

 観客から悲鳴があがりました。

 これは日本で行われた初めての電流爆破デスマッチです。

 この壮絶な試合は、その年の東スポプロレス大賞のベストバウト賞もとりました。それぐらいのインパクトがありました。

 それ以降、「大仁田厚=電流爆破」と一般的にも認知され、大きな興行では数々の爆破マッチが行われました。

 今回のコラムは名古屋での電流爆破デスマッチを見てきた話。

ヤンキーも態度を変える爆破のすごさ!

 一言で電流爆破デスマッチと言っても正式にはいろいろな爆破形態があります。

・地雷爆破デスマッチ
・水上機雷爆破デスマッチ
・金網電流爆破デスマッチ
・時限爆弾デスマッチ、などなど

 そのリングで戦った選手は、皮膚が裂け、大火傷を負うこともありました。爆破によって背中に穴が開いた選手もいました。地雷爆破の試合前に、カメラマンさんが地雷の板と接触し爆破に巻き込まれ運ばれる、なんて事もありました。

 とにかく危険極まりない。

 その証拠に、あの蝶野正洋選手は電流爆破の試合にしれっと防弾チョッキの様な上着を羽織って試合してました。

 そして、このところの大仁田選手は引退、いや、さよならを前により一層の爆破の試合のペースをあげています。

 都市部だけでなく、小さな地方の会場のお客さんにも、爆破の試合を見てもらおうと全国行脚。

 それと同時に、先程挙げたような大掛かりなリングに仕掛けがある爆破マッチではなく、有刺鉄線バットなどのアイテムに爆弾を付けて、それで殴って爆破させるという電流爆破バットデスマッチなどを考案。

 一見スケールダウンしていると思うかもしれませんが、それがそうではなく、機動力のある仕掛けというのがポイントで、要は爆弾を持って動けるという、今までの電流爆破マッチにはない試合展開も見られます。つまり、電流爆破デスマッチの進化です。

 ちなみにアイテムを使った電流爆破デスマッチはこんなのがあります。

・電流爆破イスデスマッチ
・電流爆破レガースデスマッチ
・電流爆破ラダーデスマッチ
・人間爆弾デスマッチ

 どうです? ワクワクしませんか? 何でも爆弾付けて、爆破させちゃってます。

 それに「人間爆弾って!?」って思った人もいると思います。

 ざっくりとしか説明しませんが、第三者が爆弾を付けて出てくるんです。

 ここまで来ると「なにそれ?」と言われそうですが、そういう人も実際見てみたら簡単にバカにできないと思います。

 事実、場所は言いませんけど、僕が、とある地方の興行を見に行った時に、試合中に酷いヤジを飛ばしたり騒いだりしている集団がいました。そのヤジで笑ってるのもその集団だけで、なんとも不愉快な思いで見てました。

 まぁ、いわゆる地元のヤンキーというか、ヤンキーの延長戦上というか、そういう感じの集団なので、誰も注意もできず興行は進みます。

 でもメインの電流爆破バットが爆発してからは「爆破すげー!」「オーニタ! オーニタ!」

 理屈抜きですごいもの見たらそうなるんでしょうね。

 実に痛快でした。

相容れない2人の絡みに味わい深さも

「サムライTV」の撮影隊もリングサイドではゴーグルをつけて対応 【写真提供:東京03 豊本明長】

 そもそも通常のプロレスの試合だけでもすごいのに、さらに爆破が加わる事で衝撃音、光、火薬の匂い、煙、見ている人の五感のすべてを刺激するんです。爆破の試合は会場で体感するのが一番ですね。

 ちなみに、リングサイドを見るとカメラマンもゴーグルしてますからね。

 格闘専門チャンネル「サムライTV」のカメラマンです。

 それを見るだけでも爆破の怖さが分かりますし、実際カメラをまわしていてカメラに火の粉が飛んできてレンズがダメになったりすることもあるらしく、慣れたカメラマンはレンズにフィルムを付けてカバーしたりもしているらしいです。

 先日の3月5日の名古屋国際会議場で行われた「しゃちほこ超花火」という興行を見に行きました。

 国際会議場は僕の地元が愛知県なので、高校生の頃に行っていた懐かしい会場。

 その当時見て印象に残っているのが、FMWの興行で江崎英治選手のデビュー戦でした。アミーゴ・ウルトラと組んでのデビュー戦、新人でありながらすでに華があり、後のハヤブサ選手になるのも納得でした。

 そんな僕にとっての思い入れのある会場で船木誠勝選手と大仁田厚選手が初タッグです。

 UWFとFMW。プロレスにおいて打投極の技術を研ぎ澄まして戦うUWF。凶器、デスマッチ、ルチャ、女子プロレスと、なんでもありのハチャメチャなFMW。プロレス界において、いわば対極にいた相容れない団体。それが1980年後半の同時期に人気団体にありました。

 UWFの会場に大仁田選手が乱入しようとして会場に行くと、当時の社長さんから「チケット持ってますか?」と門前払い。相容れないどころか会場に入れませんでした。

 それからFMWとUWFは特に交わる事なく独自の歴史を経て、近年FMWが復活してその興行にUWF戦士達が参戦。そこでついに大仁田選手と巡りあった船木選手。

 それを機に、爆破王のベルトを巡り何度か戦ってきましたが、この2人の電流爆破デスマッチは実に味わい深いものでした。

 というのも、船木選手はほとんど電流爆破のリングで爆破を食らってないんです。直接負けてしまった1試合だけ爆破を食らってしまいましたが。

 とにかく徹底的に爆破対策をして試合に臨み、その作戦通りに試合を進める。FMWに寄った試合をするのではなく、あくまでUWFの匂いを漂わせて戦っていたのが素晴らしい。

 その戦いを経ての初タッグだったんです。2人がリングに上がって同じコーナーに立つ訳ですが、そこには若干の距離があります。やはり相容れない者同士、お互いの背負うものの大きさがその距離を産んでるのかなぁと。しかし争い戦い抜いた上でタッグを組んでるというのはお互いを認めているからこそでもあります。その気持ちの揺らぎが見えるのも面白い。そして、歴史を知ると味わい深いんです。

 試合自体も骨折をしている腕を狙われて苦しむ大仁田選手を船木選手が救出したり絵になるシーンがありましたし、何度見ても爆破のインパクトはすさまじかったです。
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著者プロフィール

プロダクション人力舎所属のお笑いトリオ「東京03」のメンバー。「特技:プロレス観戦」というほどのプロレス通。FIGHTING TV サムライでは「速報!バトル☆メン」の水曜司会も担当している

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