キューバ戦勝利も喜べない理由 ブルペンに明確な役割分担を――
初めてのWBCで予想以上の重圧
3イニング目となった7回に集中打を浴びて3失点を喫した則本 【写真は共同】
先発・石川歩の後を受けた則本が5、6回を完璧に抑え、7対1で7回表を迎えた。継投をするには万全のタイミングで、3人目の投手を送り込んでくると思われた。そうすれば則本をいい結果で降板させ、次の登板に備えさせることができる。加えて、余裕のある点差で他のリリーフ陣を送り込むのは、WBCの緊張感を経験させる点で意味があるからだ。
しかし、小久保監督にはそうした余裕がなかった。「正直、予想以上にプレッシャーがかかっていた」と振り返ったが、それはある意味仕方がない。指揮官にとっても初めてのWBCの舞台だ。
抑え候補・秋吉が8回途中で登板
8回表、2死二三塁からマウンドに上がった秋吉は、登板までの段取りをこう振り返っている。
「(投手コーチの)権藤(博)さんから伝達が来て、『もしランナーが出たら』という感じで言われました」
準備しづらいと言っていられない
クローザーの第一候補だった秋吉だが、8回2死二三塁のピンチで登板し、タイムリーを浴びた 【写真は共同】
小久保監督は記者陣の前で「クローザーの第一候補は秋吉」と語っているが、秋吉自身は「そうは言われていないので、自分が抑えなのかはわからない」と話している。
「今日みたいに8回、ああやってランナーがいる場面で行くときもあると思います。それ(登板機会)はその日にならないとわからないので。でも、それでは準備しづらいと言っているような舞台ではない。準備しておかないといけないですし、8、9回なのかなという感じはしています」
プレミア12の韓国戦と同じミス
則本や秋吉の言うように、投手自身はいつでも行けるように準備をしておくしかない。それがプロフェッショナルの仕事と言えば、それまでだ。しかし、出番が決まっていたほうが、登板までの準備がしやすいことは間違いない。
さらに言えば、2015年11月に行われたプレミア12の準決勝で韓国に逆転負けを喫したのは、ブルペンの役割分担を明確にしておらず、万全の準備をできなかったことが大きい。この日のキューバ戦は勝利したとはいえ、小久保監督は同じミスを犯しているのだ。
ブルペンの役割を明確にすべき
今回のWBCで日本は、組分けにかなり恵まれた。京セラドーム大阪で行われた強化試合を見る限り、キューバ、オーストラリア、中国とも負けるような相手ではない。しかし、2次ラウンドで対戦するであろうオランダやイスラエルは手強い。さらにその先で待つアメリカやドミニカ共和国、ベネズエラは、この日のキューバとは比較にならないほど重量打線を誇っている。そうした相手に勝つには、投手陣が最善の準備をしてマウンドに向かうことが不可欠だ。
相手の力が劣る1次ラウンドは、ブルペンの役割分担が不明確でも勝ち抜ける。しかし「世界一奪還」を掲げるのであれば、相手がくみしやすいうちにブルペンの形を定めていくべきだ。キューバに喫した被安打11、失点6を、明日への糧にしなければならない。