「再燃」したリーガの優勝争い 上位3チームが勝ち点2差にひしめく

レベルの高いプレーを見せたビジャレアル

レアル・マドリーとの試合でも“イエロー・サブマリン”ことビジャレアルは高レベルのプレーを披露 【Getty Images】

 一方のアトレティコ・マドリーは、バルセロナに敗れた時点で実質的に優勝争いに別れを告げた。すでに国王杯でも敗退しており、残るシーズンはCLの勝ち上がりに全力を尽くすことになる(幸いベスト8進出に向けてはバイヤー・レバークーゼンとのファーストレグで4−2と勝利を収めている)。とはいえ、リーグ戦では5位のレアル・ソシエダに勝ち点1差、6位のビジャレアルにも同4差で追走されているだけに、来季のCL出場権を懸けた4位争いでは気を抜く余裕もない。

 上位陣には一歩遅れをとっているものの、“イエロー・サブマリン”の愛称を持つビジャレアルの現在の順位は、彼らの実力を正確に表すものではない。

 2−3で敗れたレアル・マドリー戦もそうだ。クリスティアーノ・ロナウドが決め、2−2としたPKの判定は現行のルールに反するもので、ブルーノ・ソリアーノが故意に手でボールに触れたわけではなかった。また、世界で最も強力かつ無数のタレントを擁する相手に対し、2点のリードを得たビジャレアルがボールとピッチを譲渡してしまう過ちを犯さなければ、ゲーム終盤の猛攻に屈することもなかったかもしれない。

 バルセロナが結果を出しながらもプレー内容の悪さをごまかせないように、リーガで勝ち切れず、ヨーロッパリーグでも敗退したからといって、ビジャレアルのフットボールがかすんで見えることはない。彼らがレアル・マドリー戦の前半に見せたプレーレベルは非常に高かった。これまで“ロス・ブランコス(白い巨人)”をあそこまで翻弄(ほんろう)したチームは多くない。しかも、ビジャレアルは2−0とした後、さらにリードを広げるチャンスも手にしていたのだ。

面白くなってきたリーガの優勝争い

シーズンの佳境に差し掛かり、リーガの優勝争いはいよいよ面白くなってきた 【Getty Images】

 そのような状況下で、試合の流れを一変させたのはリスクを承知で交代カードを切ったジネディーヌ・ジダン監督の決断だった。カゼミーロに代わってイスコを投入した後、レアル・マドリーはサイドバックのダニエル・カルバハルとマルセロが敵陣深くまで攻め上がり、2人のCBもほとんどセンターサークル付近にとどまりながら圧力をかけ続け、遂には敗戦濃厚だった試合を3−2と覆してしまった。

 レアル・マドリーのしぶとさには毎度驚かされるばかりだ。翌節のラス・パルマス戦では2点のリードを許しただけでなく、ガレス・ベイルの退場によって1人少ない状況にまで追い込まれた。それでも、ゲーム終盤は鬼気迫る猛攻を仕掛け、終了間際に2点を返し同点に持ち込んでしまった。2試合連続での逆転勝利には至らなかったものの、この勝ち点1は後々大きな意味を持つことになるかもしれない。

 リーガは各チームの浮き沈みが激しいリーグである。現時点ではこれまで最も安定して結果を出してきたレアル・マドリーがタイトルに一番近い位置に付けているが、それも延期分の第21節で国王杯準々決勝で敗退に追い込まれたセルタ・デ・ビーゴに勝つことができればの話である。

 レアル・マドリーのすぐ後ろには、こちらもハイレベルなフットボールを実践しているセビージャがいる。バルセロナも未知数な部分が大きいものの、どんな偉業も成し遂げかねない攻撃力を秘めていることは確かだ。

 シーズンの佳境に差し掛かり、リーガの優勝争いはいよいよ面白くなってきた。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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