カーリングLS北見、再浮上のカギは!? 元代表が注目する二つのポイント

高野祐太

リスクがあるサードの変更

パシフィック・アジア選手権の3位決定戦から本橋がサードに入った。しかし、シーズン途中での変更はリスクもある 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 続いて、敦賀副委員長は「あそこでサードを替えてくるとは予想していませんでした」と語る。「あそこ」とは、パシフィック・アジア選手権の3位決定戦のこと。それまでは昨年の世界選手権と同じポジションだったが、この大会で中国に負けて決勝に残れなかったこともあってか本橋がサードとして復帰し、以後、吉田夕―吉田知―本橋―藤澤のポジションを日本選手権、アジア大会と今季後半の主要大会を通じて採用した。

 シーズン途中でのサードの変更は、危険を伴う大胆な決断であるというのがカーリングの一般論として言える。自分のペースを大事にするスキップとサードとのコンビネーション“醸成”には、それなりの時間が必要なのだ。敦賀副委員長は「1年をかけてじっくりコンビネーションを築くことができた昨季と比べ、今季のLS北見はその時間が足りなかったのだと思います」と分析した。つまり、オフシーズンにじっくりと戦略イメージをすり合わせる作業が欠かせないというのだ。ほかと替え難い本橋の才能も、そうした熟成期間を設けることでこそ、スキップ藤澤との連携の中で輝き出す。

ウエートジャッジが秀逸な鈴木の起用

「ウエートジャッジが秀逸」だという鈴木の起用は、再浮上のカギとなるかもしれない 【写真:アフロスポーツ】

 もう一方の「セットアッパーによるウエートジャッジ」(※セットアッパー=投球順が1人目のリード、2人目のセカンドからなるゲームメーク役)について、敦賀副委員長が指摘するのは、ポジションチェンジで控えに回った鈴木夕湖の実力だ。小柄な145センチだが「ウエートジャッジが秀逸」(敦賀副委員長)だという。ウエートジャッジとは、刻一刻変化するアイスの状況との関わりで、あるスピードで打ち出されたストーンがどこまで進むかを判断し、スイープの程度を決定すること。この正確さはセンチ単位で争う高いレベルになればなるほど重要なスペックになる。

 ウエート管理を全幅の信頼で任せられるセットアッパーがいれば「スキップが最後に大事なドローをするときに相当安心できる」(敦賀副委員長)。もしかすると、鈴木をあらためて起用することが再浮上の二つ目のカギになるかもしれないということになる。

今季を土台に、五輪シーズンへ

 さて、今季の結果を受けて、来季のLS北見は、どんなチームに仕上げてくるだろうか。冬季アジア大会で今季の主要大会を終え、選手たちはこんなコメントを残した。

 吉田知は、悔し泣きする妹の吉田夕の横に立ち、「もう少しやれたはずなのにと思う前に、今シーズンの結果を受け入れたい。楽観も悲観もせず、私たちのカーリングを作っていきたい」と語った。

 本橋は「新スキップを迎えて産みの苦しみが続いたと思うが」と問うた際、“苦しみ”という言葉を明確に否定した上で、「産休の間で、周りの人たちのおかげで私のカーリングがあると思えましたし、こんなに好きなんだと分かりました。さっちゃん(藤澤)のカーリングが大好きだし、カーリングのための人生ではなくて、人生の一部としてのカーリングを楽しみたい。平昌のメダルを目指していきます」と答えた。

 これらの力強い声からは、どんなスタイルを確立するにせよ7か月後の彼女たちは、ひと味違うプレーでファンを楽しませるつもりだという覚悟が感じられた。まずは出場権、そしてメダルへ。手探りの今シーズンが、進化への土台となるはずだ。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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