有力1年生を軸に躍進を狙う東海大 注目は序盤の鬼塚、關の走り=箱根駅伝

加藤康博

山岳区間の1年生が力を出し切れば目標達成に近づく

 3区は前回6区を走った國行麗生(3年)、そして4区にはU20世界選手権1500メートル日本代表の阪口竜平(1年)が配された。この4区は上尾シティハーフで62分18秒と鬼塚に迫るタイムで走った松尾淳之介(1年)も準備を進めている。
「2区が終わった位置で往路の全体像が見えてきます。この時点で3位が見える位置につけたいところです。3区、4区で粘ってその位置をキープし、5区につなげたいですね」
 両角監督はこう目論む。

 今大会から5区が短縮されたがそれでも箱根駅伝に置いて山の重要性は変わらない。その5区、そして6区にも1年生が配された。

 5区の館澤亨次は腰が低く接地に特徴のあるフォームで、決して軽やかな走りではないが、1500メートルの自己ベストでは鬼塚を上回るスピードランナー。春からこの区間を志願し、様々な形で対策を重ねてきた。
「最大酸素摂取量や乳酸の出方などのデータを見ても山への適性を感じますし、実際に上りを走るとチームでもっとも速い選手。夏合宿でも距離走は上りで行うなど、対策にも時間をかけてきました。大きく崩れることはないでしょうし、あわよくばここで他大学をアッと言わせたいという思いもあります」(両角監督)

 6区は中島怜利が担う。前回、この区間は國行が区間11位。今回、再度この区間を任せる案もあったそうだが、國行自身が平地区間を希望したこと。そして中島が下りの適性を見せたことでこの配置が決まった。区間タイムの目標も59分40秒。これは前回の國行のタイムを上回るものだが、両角監督は「十分に狙える」と期待を寄せる。この山岳区間2つで攻めに転じられれば、東海大の目標に一気に近づくはずだ。

“裏の2区”となる9区

ユニバシアード日本代表の経験もある川端千都が復路の重要区間に配置 【写真:アフロスポーツ】

 冒頭の両角監督の言葉にあった通り、1年生はこの6区までに起用されることになりそうだ。ここからは実績のある上級生の出番となる。区間エントリー時点では補欠に回ったが、石橋安孝(4年)、林竜之介(4年)も復路での起用が濃厚だろう。

 この後半区間で注目なのが9区の川端千都(3年)だ。1年時には2区を走り、68分32秒の日本人1年生歴代4位(当時)と好走し、2年生ではユニバーシアードに日本代表として出場している。だがその秋に髄膜炎を発症。箱根は万全の状態でない中、7区で区間12位、この1年も本来の走りを取り戻すことができなかった。9区は復路のエース区間となるがここで復活を期す。
「川端は11月の全日本後はレースに出さず、十分に練習を積んできましたので不安はありません。もし石橋が7区、林が10区に入れば復路の4区間は箱根経験者が並ぶことになりますので、そうなれば自信を持って戦えます」(両角監督)

 最近の箱根では復路後半は上位勢の順位はほぼ固まり、単独走となる場面が多い。だがここまで勝負がもつれるようであれば、前回4区区間2位の石橋、3月の全日本学生ハーフで優勝している林という2人の4年生は他大学にとって脅威となりそうだ。

 両角監督は11月の全日本大学駅伝以降、「箱根は伸るか反るかです」と繰り返してきた。1年生が多いだけに崩れれば、その後の順位の立て直しが難しくなるが、逆に勢いに乗れば、チーム全体に「やれる」という雰囲気が生まれ、指揮官の想定以上の力を発揮する可能性も秘めている。両角監督がキーマンに挙げた鬼塚、そしてエース区間で戦う關まででどこまで上位に食い込めるか。今大会、東海大の浮沈のカギは前半2区間にかかっていると言えそうだ。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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