日曜オフを実践する近大附属が16強 バスケだけではない部活のあり方に一石

平野貴也

コーチの負担も減らした取り組み

代表入りを果たしたエース西野(緑5番)の存在を中心に残りの14人をいかし戦った 【加藤よしお】

 強豪校が思い切って採用し、なおかつ全国大会でも一定の成績を収めたことには価値がある。何より「オフの効果」に着目し始めたのは、選手を指導する観点からだけではなかったという。学校で2つの主任とクラス担任を務めている大森コーチ自身が、部活動の指導との両立を健全に行うためでもあった。近年は、指導者による暴力問題が取り沙汰されている一方で、指導者が休めない、手当が少ないといった顧問の負担増も問題視されている。

 もともと、強化を重視する学校以外では、指導者による情熱頼みで成り立ってきた背景があるが、近年は理不尽に指導方針を批判したり、圧力をかけたりする保護者、いわゆる“モンスターペアレンツ”の問題も増加。教員にとって部活動の指導が大きな負担となるケースが少なくなく、部活動のあり方を見直す必要性が叫ばれている。大森コーチは「しんどい思いをされている指導者が多いと思うんですけど、休んだらいいんですよ。休みましょうよ」と問いかけ、自身も肩の力を抜く取り組みを実施したのだ。

オフは、悪ではない。害でもない

 前例のない取り組みで「日曜に休むチームなど勝てなくなる」という批判も受けたという。多くの指導者が似たようなプレッシャーを受けているだろう。しかし、大森コーチは日曜のオフに気持ちをリフレッシュし、何かもっと面白い方法はないかと気持ちに余裕を持った発想から、今大会の3段構えを考案した。チームはモチベーションを高め、全国大会で健闘した。敗れた直後、大森コーチは、相手エースであるセネガル人留学生への対策を振り返り、ほかに勝たせてあげる方法があったのではないかと話したあとで選手に目を向けた。そして「西野は日本代表を目指せる選手だから、大学で頑張ってほしい。それにしても、なんで、みんな泣いているんやろうか。彼らの力でここまで勝ち上がるのは、かなりすごいことだと思うんですけどね」と笑った。

 西野という高い能力を持つ選手を抱えたことが好成績の一番の理由であることは、大森コーチも否定しない。彼が喜んでいるのは、チームが好成績を目指すためにほかのものを踏み台にしてしまう選手を作らず、全体が成長する中で勝ち上がれたことだ。強さを求める中でも、オフは、悪ではない。害でもない——日曜を休むチームは、一つの提言を残して大会を後にした。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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