過去10年のデータから有馬記念を斬る 最も隙がないのはサトノダイヤモンド

JRA-VANデータラボ

3歳・芝2000m以上G1の1着実績

【表4】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表4は3歳馬についてのデータで、芝2000m以上のG1を勝ったことがある馬とない馬の成績を比較した。当然ではあるが、「実績あり」のほうが成績は圧倒的によく、複勝率50.0%と2回に1回は好走する。一方、「実績なし」で好走した3歳馬は、10年3着のトゥザグローリーと14年2着のトゥザワールドの2頭だけで、この2頭が全兄弟の関係にあたるのは実に興味深い。いずれにしても、3歳馬は芝2000m以上のG1勝ち馬のみ狙うのが手堅いはずだ。

4歳以上・同年芝2200m・2500m重賞の1着実績

【表5】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表5は4歳以上の馬についてのデータで、同年に芝2200mか2500m重賞を勝ったことがある馬とない馬の成績を比較したもので、「実績あり」のほうが好走率は明らかに高い。競馬では400の倍数にあたる距離(1600m、2000m、2400mなど)を根幹距離、それ以外の距離を非根幹距離と呼び、有馬記念の2500mは非根幹距離にあたる。このデータを見る限り、有馬記念と同じ芝2500mか、同じく非根幹で距離が近い芝2200mの重賞を同じ年に勝っていた馬のほうが好走しやすいといえる。

有馬記念が秋何戦目か

【表6】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表6は、「同じ年の秋シーズン何戦目で有馬記念に出走したか」によって成績を分けて示したもの。ただし、秋シーズンに海外遠征を行なった馬、地方競馬の所属馬は集計対象から外している。このデータを見ると、もっとも出走例が多い秋3戦目で有馬記念を迎えるローテーションが、そのままベストと考えてよさそうだ。次いで出走例が多いのは秋4戦目だが、過去10年で勝ち馬はなく、好走率も秋3戦目より落ちる。意外なのは、秋2戦目の成績がそれほどでもないこと。有馬記念の前に1走だけのローテーションで、消耗を最小限にとどめて好走しやすそうにも思えるのだが、あまり結果にはつながっていない。

前走レース別成績

【表7】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表7は前走レース別成績。最多出走のジャパンC組については、表8の項で後述する。ジャパンC組以外で出走例がそこそこあって好走率が高いのは天皇賞(秋)組と菊花賞組。天皇賞(秋)組は過去10年で3頭の勝ち馬を送り出し、回収率も非常に高い要注意の前走。菊花賞組の場合、そこで1着なら【2.0.1.1】で、4着以下に敗れたのは有馬記念のレース中に競走を中止した09年のスリーロールスだけ。菊花賞1着から直行してきた場合はかなり有望とみてもよさそうだ。海外遠征帰りの馬も好成績だが、今年は出走がない。

 前走がこれら以外のレースだった好走馬は延べ8頭おり、そのうち6頭は前走1着だった。残る2頭は、09年2着のブエナビスタと13年2着のウインバリアシオンで、いずれも前走3着だった。この2頭が出走時点で複数回のG1連対歴を誇る強豪だったことを考慮すると、主流ローテのJC、秋天、菊花賞以外のレースから臨む場合は、相当な実績馬以外は前走1着が必須と考えたい。

前走ジャパンC出走馬・前走着順別成績

【表8】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】

 表8は前走ジャパンC出走馬の前走着順別成績を「3、4歳」と「5歳以上」に分けて示したものである。

 この表で注目すべきは、5歳以上がジャパンCで1、2着だった場合、有馬記念で【0.0.0.5】と1頭も好走していないことだ。このケースではJC激走の疲労が尾を引きやすいのかもしれない。むしろ、JC組の5歳以上馬の場合、3〜5着だった馬のほうが有馬記念では結果を残していることは覚えておきたい。

 その点、まだ若い3、4歳馬は、JCでよい着順を収めた馬のほうが有馬記念でも好走できるようだ。JC組は、年齢による傾向の違いに注意したい。

結論

 今年の有馬記念は、ファン投票1位のキタサンブラックと同2位のサトノダイヤモンドが1番人気を争う構図となっている。1番人気の好走率が非常に高いことは表1の項で確認した通りなので、最終的にどちらが収まるのか気になるところである。

 両馬ともに有馬記念が秋3戦目という臨戦過程で甲乙つけがたいのだが、強いて優劣を決めるとすれば、より隙がないのはサトノダイヤモンドのほうか。菊花賞1着から直行のローテが抜群の成績を収めているのは、表7の項で述べた通り。菊花賞馬だから、芝2000m以上のG1勝ちという3歳馬が好走するためのデータも当然クリアしている。21日に行なわれた枠順を決める公開抽選会で6枠11番に決まったものの、1、2番人気であれば問題ないことは表2の項で指摘した。

 キタサンブラックに関してはJC激走の反動も気になるところではあるが、表8で確認した通り、4歳馬ならそれほど心配する必要はない。むしろ、気になるのは枠順か。今年の天皇賞(春)とJCを含む4戦4勝と、この馬にとって縁起のいい1枠1番に決まったものの、有馬記念の1枠はイメージほどの成績を収めていない。今のこの馬の実力を思えば杞憂に終わる可能性も大きいだろうが、一応は注意しておきたい。

 昨年の勝ち馬ゴールドアクターも、もちろん有望。今年は2500mの日経賞とオールカマーを制しており、サトノダイヤモンドやキタサンブラックと同じ秋3戦目で臨む。前走のJC4着は期待を裏切った感もあるが、5歳のこの馬にとっては福に転じるかもしれない。一方、JC2着の5歳馬であるサウンズオブアースは、当日の馬体重やパドックから調子が落ちていないかどうかを見極めたいところだ。

 今年の宝塚記念1着のマリアライト、同じくアルゼンチン共和国杯1着のシュヴァルグランも秋3戦目で、この2頭もデータ的には有力。ただし、前者は8枠16番、後者も7枠14番と、枠順にはあまり恵まれなかった。G1勝ちのある出走馬のなかで、もっとも消耗度が低そうなのは秋2戦目のミッキークイーンだが、秋2戦目で有馬記念に出走する成績が意外と悪かった点は気になる。

 そのほか、天皇賞(秋)から直行する唯一の馬となったアドマイヤデウス、前走金鯱賞1着のヤマカツエースを穴候補に挙げておきたい。アルバートも前走1着だが、過去10年のステイヤーズS組が【0.0.0.10】というデータはやはり無視できないところだ。

文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。

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