過去10年のデータから有馬記念を斬る 最も隙がないのはサトノダイヤモンド
3歳・芝2000m以上G1の1着実績
【表4】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】
4歳以上・同年芝2200m・2500m重賞の1着実績
【表5】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】
有馬記念が秋何戦目か
【表6】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】
前走レース別成績
【表7】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】
前走がこれら以外のレースだった好走馬は延べ8頭おり、そのうち6頭は前走1着だった。残る2頭は、09年2着のブエナビスタと13年2着のウインバリアシオンで、いずれも前走3着だった。この2頭が出走時点で複数回のG1連対歴を誇る強豪だったことを考慮すると、主流ローテのJC、秋天、菊花賞以外のレースから臨む場合は、相当な実績馬以外は前走1着が必須と考えたい。
前走ジャパンC出走馬・前走着順別成績
【表8】 【画像提供:JRA-VANデータラボ】
この表で注目すべきは、5歳以上がジャパンCで1、2着だった場合、有馬記念で【0.0.0.5】と1頭も好走していないことだ。このケースではJC激走の疲労が尾を引きやすいのかもしれない。むしろ、JC組の5歳以上馬の場合、3〜5着だった馬のほうが有馬記念では結果を残していることは覚えておきたい。
その点、まだ若い3、4歳馬は、JCでよい着順を収めた馬のほうが有馬記念でも好走できるようだ。JC組は、年齢による傾向の違いに注意したい。
結論
両馬ともに有馬記念が秋3戦目という臨戦過程で甲乙つけがたいのだが、強いて優劣を決めるとすれば、より隙がないのはサトノダイヤモンドのほうか。菊花賞1着から直行のローテが抜群の成績を収めているのは、表7の項で述べた通り。菊花賞馬だから、芝2000m以上のG1勝ちという3歳馬が好走するためのデータも当然クリアしている。21日に行なわれた枠順を決める公開抽選会で6枠11番に決まったものの、1、2番人気であれば問題ないことは表2の項で指摘した。
キタサンブラックに関してはJC激走の反動も気になるところではあるが、表8で確認した通り、4歳馬ならそれほど心配する必要はない。むしろ、気になるのは枠順か。今年の天皇賞(春)とJCを含む4戦4勝と、この馬にとって縁起のいい1枠1番に決まったものの、有馬記念の1枠はイメージほどの成績を収めていない。今のこの馬の実力を思えば杞憂に終わる可能性も大きいだろうが、一応は注意しておきたい。
昨年の勝ち馬ゴールドアクターも、もちろん有望。今年は2500mの日経賞とオールカマーを制しており、サトノダイヤモンドやキタサンブラックと同じ秋3戦目で臨む。前走のJC4着は期待を裏切った感もあるが、5歳のこの馬にとっては福に転じるかもしれない。一方、JC2着の5歳馬であるサウンズオブアースは、当日の馬体重やパドックから調子が落ちていないかどうかを見極めたいところだ。
今年の宝塚記念1着のマリアライト、同じくアルゼンチン共和国杯1着のシュヴァルグランも秋3戦目で、この2頭もデータ的には有力。ただし、前者は8枠16番、後者も7枠14番と、枠順にはあまり恵まれなかった。G1勝ちのある出走馬のなかで、もっとも消耗度が低そうなのは秋2戦目のミッキークイーンだが、秋2戦目で有馬記念に出走する成績が意外と悪かった点は気になる。
そのほか、天皇賞(秋)から直行する唯一の馬となったアドマイヤデウス、前走金鯱賞1着のヤマカツエースを穴候補に挙げておきたい。アルバートも前走1着だが、過去10年のステイヤーズS組が【0.0.0.10】というデータはやはり無視できないところだ。
文:出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。