男子は4回転激戦時代を象徴する一戦に 羽生がGPファイナル4連覇、宇野も3位

「誰からも追随されない羽生結弦に」

史上初のGPファイナル4連覇を飾った羽生。それでも「今季前半はめちゃくちゃ悔しい」と振り返り、さらなる飛躍を誓った 【坂本清】

 中1日空けたフリーは、大きく順位が入れ替わる下克上の展開となった。

 若手の追撃のなか、踏ん張ったのは羽生。冒頭の4回転ループ、4回転サルコウともに成功し、4連覇へ王手をかける。演技後半の4回転サルコウで転倒し、そこからリズムを崩すといくつかのミスはあったが、演技後半のコレオシークエンスでは曲に溶け込むような演技をみせる。プログラム全体の印象を崩すことなく、貫禄ある滑りに仕上げた。

 得点は187.37点で、フリーは3位。ショートの貯金を生かして優勝を決めた。得点を待ちながら疲れた表情だったが、総合得点でのランキング「1」が出ると、ホッとした様子で笑顔を見せた。

「これがフィギュアスケート。ショートとフリーを合わせて順位が決まるものです。4連覇という目標を達成できました。これからはショート、フリー共に良い演技をする前提の練習をしていきたいです」

 そう語りながらも、やはり悔しさのほうが勝っている様子。

「ジャンプが跳べないと、スケーティングやスピンがおろそかになってくる感じがあったので、全日本に向けてしっかり頑張りたいです。もっと点数を上げて、誰からも追随されないような羽生結弦になりたい。今季前半はめちゃくちゃ悔しいので(4回転4本を)今季の後半には完成させたいです」と誓った。

銀メダルのチェンは4回転4本成功

銀メダルのネイサン・チェン。米国の17歳は、フリーで4回転4本を跳んだ 【坂本清】

 一方、注目の的は、ネイサン・チェン。米国の新エースとして期待される17歳で、今季初戦では「フリーで4回転を4種類5本」という前人未踏の挑戦をした。NHK杯からは「まずは演技を完成させる」として「4回転を3種類4本」にしたが、4本だとしても世界最高難度のプログラムになる。

 そして迎えたフリー。4回転ルッツ、フリップ、トウループを次々と決めていく。10年間のバレエ経験で培った美しい踊りもさえ、演技構成点もすべて8点台に乗せた。フリーは197.55点、総合282.85点の自己ベストで銀メダルを獲得した。

「とうとう最高の演技ができました。まだ信じられない気持ちです。とにかく4回転をそろえる能力があることを示せたのがうれしいです」と笑顔を見せた。

 また宇野も大健闘を見せた。ショートから2日後のフリーは調子も向上し、タンゴ曲に合わせて、キレのある動きで演技をスタートさせた。3本の4回転はすべて成功し、会場を沸かせる。トリプルアクセルからの連続ジャンプが抜けた以外は、ほとんどミスのない演技で、不安のない滑りを見せた。

 自己ベストを更新する195.69点をマークすると、樋口美穂子コーチとともに手をたたいて喜ぶ。いよいよ200点超えを照準圏内に置いた。

「今日は何とかやり切ってホッとしました。やはり課題はコンディショニング。でも去年よりは、GPファイナルという舞台で戦えている実感はあります。皆のレベルが高く、ミスを少なくすることに尽きると感じました」

 そう落ち着いた表情で話した宇野。2年連続での銅メダルを獲得し、シニア2年目にしてトップスケーターの地位を確立した。

 またショート2位のチャンは、4回転トウループとトリプルアクセルで転倒する出だしとなったが、4回転サルコウを成功。順位は5位に落としたものの「最初の2本をミスしたあとにサルコウを成功できたことが収穫。2種類の4回転を入れる戦いに参入できました」と手応えを感じた様子だった。

 フェルナンデスはジャンプのミスが続き4位。「いろいろと欲を出しすぎて、かえってまとまらなかった状態です。来週のスペイン選手権、そして欧州選手権に向けて、集中し直します」と話した。

 男子は、今季の4回転激戦時代を象徴する一戦。17歳のチェンや18歳の宇野、そして進化の止まらない羽生らの4回転が飛び交う、華麗かつハイレベルな戦いだった。

(文・野口美恵)

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