オルティスの最終年を支えた日本人 Rソックスで活躍するスタッフの献身
キャンプ序盤から信頼を勝ち取る
オルティスはケガなくシーズンフル稼働し、チームをプレーオフに導いた 【Getty Images】
「最初に話し合いをした時に、こちらから今までのルーティンを継続してやってほしいと話したところ、彼から『オフから早めに動いてきて、例年よりしっかりやりたいからメニューをつくってくれ』と言われました。なのでキャンプ3日目ぐらいから特に下半身を中心に例年より多めのトレーニングを行いました。
とにかくケガはしてほしくなかったですし、無理もさせたくなかったので、フィジカルセラピストが中心になってサポートをしていたので、その意見を尊重して何が必要なのかを確認しながらやっていきました。(周りからも)『今年はしっかりトレーニングをやっている』と言われましたし、春のキャンプは順調にいったなという感じでした。(開幕前の状態は)例年と比べたら良かったと思います」
百瀬コーチはすぐにオルティスと信頼関係を築くことができたようだ。というのも百瀬コーチは前述通りスペイン語に堪能で、長年ラテン系選手と関わってきて彼らの性格を把握していたからだ。しかも第3回WBCの時にサポートしていた選手数人がレッドソックスに在籍していたことも大きかったと言う。
「彼の性格上誰に対してもフェアだったというのもありますが、(WBCで一緒だった)ハンリー(ラミレス)やパブロ(サンドバル)を知っていた関係もあって、すぐに打ち解けた感じですね。その後もコミュニケーションは取りやすかったです」
シーズン中は「ハラハラ」の場面も
「(足首の状態は)日によって違いました。つらい日はウォーミングアップの時点で自分から調子が良くないと申告してくることもありました。こちらとしても、まず足の状態がどうなのかが第一でした。シーズンに入っても量は減らしましたがキャンプに組んだメニューを継続的にやってくれました」
もちろんメディカルスタッフとして万全のサポートはするものの、いざ試合が始まればオルティスもプレーに集中してしまう。いつ不測の事態が起こるかもしれない。
「古傷を抱えていたので、それが悪い方に行かなければと願っていましたね。いざ試合が始まれば、彼がチームを引っ張っていたので、(全力プレーで)二塁打とか本塁までの走塁でかなり際どかったのが何回もありました。そういう場面があるのは仕方ないんですけど、いつもハラハラしながら見ていましたね」
さらにメディカルスタッフを悩ませることも起こった。球界屈指の人気選手だったオルティスが引退宣言をしていたこともあり、シーズン中盤以降は遠征先でも試合前に取材や引退イベントが目白押しで、しっかりケアする時間も確保できなかったと言う。
「彼は準備が必要な選手だったので、そこの時間が奪われたのはすごく大変でした。忙しかった時は最低限のトレーニングと、いかに休んでもらうかでした。それでも彼は結果を出したのだから本当にすごいと思いますね」
こうして百瀬コーチをはじめとするメディカルスタッフのサポートを受け、オルティスはケガなく無事にシーズンを乗り切り、最後までファンにグラウンドでのプレーを披露することができた。
最後に百瀬コーチにもう一つだけ質問をぶつけた。コンディショニング担当の立場からオルティスが現役を続けられる可能性があったのだろうか?
「いろいろな人がまだまだ(現役で)できると言ったりもしていますが、僕はそれを言える立場ではないと思います。自分の身体に関しては彼が一番分かっていますから。ただ彼の最後のシーズンを少しでもアシストできたのは自分の中で納得しています」
コンディショニング担当として、自分の仕事は選手が最大限のパフォーマンスを発揮できるようにサポートすることと割り切る。
今シーズンはやり切った。しかし来シーズンに向け、このオフも選手たちのサポートを休む暇もなく続けている。