オルティスの最終年を支えた日本人 Rソックスで活躍するスタッフの献身

菊地慶剛

現役最終年のオルティス(左)のコンディショニングをサポートした百瀬コーチ(右) 【Getty Images】

 2016年シーズンは、カブスが108年ぶりにワールドシリーズを制覇し近年にない盛り上がりを見せた一方、MLB史上最強の指名打者と評価されるデービッド・オルティス選手が選手やファンに惜しまれながら、MLB通算20年の現役生活に別れを告げた。

 16年限りでの引退を表明してシーズンに臨み、151試合に出場。打率3割1分5厘、38本塁打、127打点の成績で打点王を獲得するとともに、チームの地区優勝に貢献した。また二塁打数、長打数、長打率では両リーグ1位に立つ活躍を見せた。

 15年の打率2割7分3厘、108打点、14年の2割6分3厘、104打点と比較しても今季の活躍のほどが分かるだろう。

 まさに選手として最高の形で有終の美を飾ったオルティスだが、引退を決意せざるを得なかった両足首の古傷を抱えながら無事にシーズンを乗りきることができたのは、レッドソックスのメディカルスタッフの献身的なサポートがあったからだ。そこで今回、今シーズンからストレングス&コンディショニング部門の責任者としてレッドソックスに加わった百瀬喜与志コーチに話を聞いた。

「彼をケガ無くシーズンを過ごさせるというのはチームとして最大のミッションの1つでした。その点についてはメディカルスタッフを筆頭に僕らが一緒にアシストできたのは良かったです。

 本人がどう感じたのかは憶測するしかないですが、個人的には納得できない終わり方でした。戦力はそろっていましたし、チームとしてはまだまだできたと思いますし、もっと彼のプレーを見たかったという気持ちはありますね」

 シーズンが終わっても、百瀬コーチはディビジョンシリーズで敗退した悔しさを拭い切れていなかった。どんなにオルティスが素晴らしい個人成績を残したとしても、やはりワールドシリーズを制しシャンパンファイトで盛り上がりながら、選手全員で送り出したかったと考えてしまうのも仕方ないところだろう。

青年海外協力隊などを経て現職へ

 ここで百瀬コーチの簡単な略歴と主な役割について説明しておこう。

 日体大野球部出身の百瀬コーチは卒業と同時に、青年海外協力隊の一員としてコスタリカで野球指導に従事。この時にスペイン語を習得している。その後、米国に渡り大学院に進学。ストレングスコーチになるための国家資格を取得し、01年からパイレーツでアシスタントのストレングス&コンディショニングコーチを務めてきた。

 パイレーツ時代はチームに帯同しながら、遠征中はドミニカ共和国やベネズエラにあるパイレーツ直営のアカデミーで若手選手の育成も担当。また第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)ではMLBから派遣され、中南米チームのコンディショニングを任され、優勝したドミニカ共和国代表を最後までサポートした。

 そして昨年オフにパイレーツでの実績が評価され、レッドソックスからストレングス&コンディショニング部門の責任者としてオファーを受け、今シーズンから同職に就任した。

 ところで各チームのメディカルスタッフは、アスレチックトレーナー、ストレングス&コンディショニングコーチ、マッサージセラピスト、フィジカルセラピストらで構成されている。百瀬コーチは各選手の体調を日々管理しながら、トレーニングメニューを組んでいくのが主な仕事だ。今シーズンのレッドソックスは百瀬コーチ以外にも、アシスタントトレーナーの高橋真彩氏、マッサージセラピストの内窪信一郎氏と、2人の日本人スタッフも在籍していた。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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