【RIZIN】川尻達也、急転直下でグレイシー戦へ UFC離脱、これからの格闘技人生を語る

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今のままじゃやばいという危機感がUFC離脱の理由

「今のままじゃやばい」という危機感が、UFCを自ら止めるという決断にいたった理由だと話す 【(C)RIZIN FF/Sachiko Hotaka】

――改めてになりますがUFCを離脱した理由についてうかがいます。先ほど「恐る恐る一歩を踏み出した」と表現されましたが、不安が大きかった?

 やっぱりこの選択をしたことで、10年後20年後に格闘技を止めた時、良かったと思うのか後悔するのかは考えたし、いま、世界最高峰の場所であるUFCを自ら離れることは、“ファイター川尻”にとって正しい選択なのかなと。
 素の川尻達也は女々しくて情けないし、弱いし、どうしようもない人間なんですけど。僕は、こういう人間になりたいと理想の“ファイター川尻達也”を演じていると思っているのですが、だからこそその選択は「ありなのか?」と。

――その迷いというのは、UFC最後の試合となった8月のカブ・スワンソン戦の直後からあった?

 そこはなかったです。とにかく試合が終わってから、もう1回チャンスが欲しいと思ったし、このまま終わったら、絶対に一生後悔すると思ったので。フェイスブックに自分の思いを書いて、とにかくUFCに伝えていたのは、リリースなのかリリースでないのかを教えて欲しいということです。リリースなら次の人生を考えないといけないし、リリースでないなら、僕はもう1回、UFCに評価されるように上がるからと。とにかく今の状態だと練習にも身が入らないし、強くなれない。世界最高峰にいるのに、僕自身が強くなれない状況にいるのは本末転倒だと思いました。

 でもマネジメントを通して言われるのは「あと1週間待って」ということ。それを何回も繰り返し聞いたし、2カ月間はドーピング検査の結果が出るまで待っていようと思ったけど、とにかくリリースなのかどうかを知りたかった。僕のことが必要だったら、ドーピングどうこうじゃなく「お前が必要」と言ってくれれば、僕は次に向けて頑張るだけだし、ドーピング検査に問題があっても、そこで罰則を受けたらいいだけなんで。

 とにかく2カ月待って、どうなのかを改めて聞いても「1週間待って」と返答は変わらなかったんです。2カ月間フワフワして身の入らない練習をして強くなれなかったし、何か意味がない。自分が許せなかったので、一歩踏み出して強くなれる環境を作るべきだなと思って吹っ切りました。そして、「リリースして欲しい」とマネジメントを通じて伝えたのが10月11日でした。

――吹っ切れたきっかけは?

 今の状態は、向こうから反応がないから、ふてくされているだけじゃないかと。冷静に考えたらものすごく後悔するんじゃないかという考えもありました。でも、僕の中では「強くなれれば何とかなる。ファイター人生なんとかなる」という考えがあって。ファイターは強くなり続けないとあっという間に置いていかれる世界だし、そこが一番重要。とにかく今のままじゃ強くなれないし、より必要とされたいという欲があって、僕のことを本当に必要としているところで戦いたいという気持ちが、日に日に大きくなっていきました。UFCが僕のことを必要としてないんじゃないかと思い始めた結果ですね。

――UFCにしがみつくより、強くなりたい、前向きになりたいと?

 そうですね。最初はもっとボロボロになるまで努力してもがいて、しがみついて戦い続けることが川尻達也らしいと思っていたけど、それは強くなり続けることが前提です。試合がなくてフワフワして、練習に身が入らないと強くなれない。そんな状況で急に試合をして、こっぴどくやられてボロボロになるのは違うなと。それなら強くなれる環境に自分を置くしかないと思いました。

 UFCと契約した時も、何も決まっていない状況で、全然練習ができていなくて、このままじゃやばいという中で契約をしました。より強くなる環境にいたくて、それが世界最高のUFCだった。それと一緒で、とにかく今のままじゃやばいという危機感が自分の中で芽生えて、何か自分から変えないと変わらないと思い、一歩踏み出してみた結果、バタバタ決まった感じですね。

――迷っていた時の選択肢として、自分が一歩引いて後進を育てるというものはなかった?

 まったくなかったですね。できる限り戦い続けたいし、知り合いにポロッと言われたのは「川尻くん、50歳までやればいいじゃん」と。何気ない一言だったんですけどね。40歳まで頑張ろうとは思っていたけど、それ以上は考えたことがなくて。でも、「あれ、それもいいかな」と。(サッカーの)カズさんみたいに(笑)。ごまかしなしで、最前線でその年齢までやる選手が格闘界にいても面白いかなと思いました。正直そういう気持ちが芽生えましたね。
 だから後進がどうとかではなく、僕は戦う中で若い選手に背中を見せて、ファイターとしていろいろ伝えられたらいいなと思っています。

 若い人って、僕もそうでしたけど、口で言っても響かないんですよ。態度で見せるしかない。自分より弱い奴にあれしろこれしろと言われても、言うこと聞かない。自分より強い奴が、「あの人もあんなことをやっているんだ」と見るんです。若い時は「弱い奴が偉そうに何を言ってるんだよ」と思っていたので、それだと伝わらないから、試合で結果を出して若いファイターに伝えられたらなと思います。

“打倒・川尻”で狙われ選手層を充実させる

――話を少し戻しますが、クロン・グレイシー選手、そしてBJ・ペン選手以外で、今後戦ってみたい相手はいますか?

 いや、むしろ僕に勝つことでUFCの首脳陣にも情報が入ると思うんです。僕が誰かを求めるんじゃなくて、UFCに出たいという人がいるのであれば、僕を倒しにRIZINに来ればいい。僕はここにいるし、逃げない。そうやって世界中のファイターが、僕を倒しにRIZINに来ればいいかなと思います。

――元UFCファイターとして、UFCへの登竜門的な存在になる……。

 もちろん最終的な目的ではなくて、それがきっかけでRIZINにたくさんのファイターが集まり、「RIZIN、面白いじゃん」ってなれば、RIZIN自体が盛り上がるし。UFCのためのRIZINになる必要はないですが、きっかけはそれでもいいと思います。

――RIZINに注目を集めて、選手層を広げたいと?

 選手層を充実させたいですね。僕と戦うことで世間に魅力を知ってもらえる日本人ファイターもたくさんいると思うし、輝ける才能を持った選手はもちろんたくさんいます。現時点では負けるつもりはないけど、そういう選手たちとしのぎを削ることで、相乗効果でいろいろなものを巻き込めればいいかなと。世界的にもそうだし、日本の中でもそうだし、周りを巻き込んで、ワクワクドキドキする舞台を作っていきたいと思います。

――それでは最後にクロン戦に向けての意気込みをお願いします。

 真剣で切り合うような、ヒリヒリした試合になると思うし、その中でクロン・グレイシーを叩き切りたいと思っています。そして最後は自分が勝利し、気持ちよく年越しをしたいです。

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