大迫勇也がケルンで見せる新たな表情 現地記者の評価と本人が語る好調の理由

好調を支えるモデストと大迫

今季のチームの好調を支えているのは、好パフォーマンスを見せるモデスト(写真)と大迫の存在だろう 【Getty Images】

 今季のケルン好調の要因の1つが、アントニー・モデストである。

 ホッフェンハイムでプレーしていたこのフランス人ストライカーにはこの夏、中国からのオファーが届いていたが、彼はドイツに残ることを決断した。自身の子供が多くの食品アレルギーに悩まされており、ケルンがその対処のために最高の環境を用意したことが、彼が残留した理由の1つだ。そして、本人がケルンで喜びを感じていたことが挙げられる。

 モデストは第10節までを終えた現在、11ゴールを挙げ、ドルトムントのピエール・エメリク・オーバメヤンとともにブンデスリーガの得点ランクのトップに立っている。だが、ケルン上昇の要因は、モデストだけではない。大迫勇也もまた、素晴らしいパフォーマンスで爆発しているのだ。その変貌ぶりは、ファンの間で“新戦力のようなもの”と言われるほどだ。この数年間、多くのファンは大迫を気にも留めていなかったのだ。

『ヴェルト』紙や『ケルナー・シュタット・アンツァイガー』紙などでケルンの番記者を務めるフィリップ・サギオグルは、今季の大迫が見せる新たな表情をこう見ている。

「大迫は大きく自信を深めた。それがすべての基盤になっていると思う。技術に関して、大迫がケルンでも上から2、3番目の存在であることは、いつでもはっきりとしていた。でも今までは、大迫が自身のポテンシャルを発揮することはなかった」

「大迫はピッチ上で、今までにない姿勢を見せている」とサギオグルは続ける。「すべてのルーズボールに対して毎回バトルを挑み、奪い合いに勝てるんだという姿勢を見せて、それを実現している。以前とはまったく違うね。まだ、すべてがうまくいっているわけではないが、あらゆることに果敢に挑んでいる。うまくいくことも、ずっと増えているんだ」

 そして、サギオグルは指揮官の胸の内をこう代弁する。「シュテーガーが公の場で大迫以上に擁護する選手はいないよ。期待に応えられない時期はとても長かったが、彼は本当に大迫に多くのチャンスを与えてきた。今や大迫は結果を出すようになったし、シュテーガーも確信を深めたことだろう」

「ここでは厳しい時期もありました」と大迫勇也は今回、クラブを通じて送った質問に対して返答してくれた。「でも、常にクラブにサポートしてもらいました。だからこそ、退団を考えたことはありませんでした」

「ゴールに近い位置に入るから危険な存在になれる」

今季のケルンはどのようなシーズンを過ごすのだろうか? 【Getty Images】

 どうしてこの26歳のFWは、パフォーマンスが向上したのだろう? 本人は、こう説明する。

「今はモデストの近くでアタッカーとして、より前線でプレーするようになりました。それが、僕にとってはやりやすいんです。僕らにはコーディネートされたランニングのパターンがあります。ゴールに近い位置にも入るから、自然と危険な存在になれる。前線では自分の本能に頼ることができます」

 大迫は人生最高の調子にあるのだろうか。そんなことはないと大迫は言うが、そのパフォーマンスは素晴らしく、日本代表にも復帰することになった。ついに、ケルンと大迫は共に幸せを感じることができた。また、両者はこの幸せが続くことを願い、契約を20年まで延長することで合意した。

 シュトマケSDも、大迫への称賛を惜しまない。今回、取材に対してこう語ってくれた。

「ユウヤは素晴らしい仕事をしている。私たちは彼の成長に満足しているよ。だからこそ、彼との契約を延長したんだ。彼にはスピードがあり、運動能力が高く、技術的にも優れている。(大迫は)われわれにとって、とても貴重な選手なんだ」

 この“新たな大迫”とともに、ケルンはどのような今シーズンを過ごすのだろうか。 サギオグルは、その予測は難しいと語る。「チームはベルリンでの敗戦(第8節のヘルタ戦、1−2)や不運な負傷といった痛手に対しても、どっしりとしていて大きな影響を受けていないように見える。5位から7位の間でシーズンを終えることは想像できる。一方で、チームはモデストへの依存度が非常に高い。モデストの得点が止まった時に、どうなるのか様子を見てみよう。

 現在、ケルンは勢いに乗っている。ほぼすべてがうまくいっていると言っていい。こういう時間は、いつか終わるものだ。しかし、チームが素晴らしいメンタリティーを備えているのも確かだ。倒れても盛り返してくるだろう。運が良ければ、9位でシーズンを終えられるかもしれない。こういうスタートを切った後では、6位から10位の間で終わるというのが現実的なところだろう」

 大迫とケルンの今季の終着点はどこになるのか? それは進化を続けるプレーと同様、良い意味で期待を裏切ってくれるかもしれない。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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