アンチェロッティは完璧な指揮官? バイエルンが取り戻した家族的な雰囲気
好スタートを切ったバイエルン
開幕から5勝1分けで首位に立つバイエルン。まずは素晴らしい結果を手にした 【写真:ロイター/アフロ】
2013年の夏、クラブとファン、そしてメディアは、ペップ・グアルディオラを救世主のごとく迎えた。ファッションにおいても新たなスタイルとして騒がれ、監督業の“神”であるともてはやされた。だが、グアルディオラ本人が没頭したのは戦術、戦術、戦術……それだけだった。
グアルディオラのお披露目に比べて、アンチェロッティのミュンヘンでの最初の日々は、もっと落ち着いてリラックスしたもので、ヒステリーとは無縁だった。ミランで2度、レアル・マドリーで1度、すでにチャンピオンズリーグ(CL)を3度制していることも、理由の1つだったかもしれない。
バイエルンのスターたちが全員そろって1試合たりともプレーしないうちから、数日もすると、クラブ周辺には早くも“感じられるもの”が漂った。このクラブにとって、完璧な男がやって来た、という感触である。
そのように言われたのは、写真撮影のために伝統の皮製品の衣装に身を包むことを、指揮官が大した問題としなかったからではない。というより、無理してそうする必要が、アンチェロッティにはなかったのだ。すでにバイエルン地方のライフスタイルを気に入っており、ワインの愛好家であった前任者とは違い、グラスに注がれたビールを本当に愛している。これはドイツの南部において、共感を得るのに大いに役立った。
アンチェロッティは“人間力”に長けた監督
アンチェロッティ(中央)は“人間力”に長けた監督である 【写真:ロイター/アフロ】
『シュポルト・ビルト』紙でバイエルンを深く追いかけているクリスティアン・ファルクも、「雰囲気は全体的に良くなっている」と認める。
「アンチェロッティは毎朝、体重をコントロールするようなことはしない。もっとチームのことを信頼しているし、“自己責任”という言葉を信じているんだ」
アンチェロッティは“人間力”に長けた監督である。スター選手をいかに喜ばせるかも心得ている。それが開幕直後のバイエルンのプレーから、非常に強く感じられた。シーズン序盤の戦いぶりは、グアルディオラ時代のプレーをも上回っているように見えたほどだ。
ファルクは「フランク・リベリーは明らかに勝者だ」と話す。「それにシャビ・アロンソも、もちろんロベルト・レバンドフスキもそうだ。最高に気分が良さそうなのは、グアルディオラの時代が終わったことも一因であるように思える。アンチェロッティはこれ以上、他のストライカーは必要ないと発言している。レバンドフスキへの信頼は厚いんだ」と語る。だからこそ、夏の移籍市場で流れたロメル・ルカクやゴンサロ・イグアイン獲得のうわさも、あっという間に消えてしまった。