ペップはマンCに何をもたらしたのか? 破壊力を増した攻撃、課題を露呈する守備
最終ラインがプレスを受けるとパニックに陥る
トッテナム戦では高い位置からプレスを受け、シティのDFはパニックに陥った 【写真:ロイター/アフロ】
クラウディオ・ブラボとシティの4バックは、相手が引いてパスを回させてくれる間は素晴らしく落ち着いている。だが、“ちょっかい”を出され始めるとパニックに陥り、危険なエリアでボールを失っていた。
グアルディオラがチームに求めるのは、試合の完全支配だ。だからシティのやり方を妨害する最適な方法は、選手に嫌がらせをして苦し紛れのロングパスを強いることだ。
今回の対戦でスパーズは、シティの選手に1人たりとも落ち着いてボールを持たせることをしなかった。その敵がい心の発露の連続に、シティのスターFWは誰1人として、試合の足掛かりさえつかむことができなかった。
適材を欠く守備的MFとSB
中盤の中央に2人のプレーメーカーを置く弱みは、守備的MFのフェルナンジーニョに大きな負担がかかることだ。このブラジル人の運動能力には強い印象を抱いているが、世界的エリート選手たちを相手に、4バックの前で頑強な盾となるには不十分ではないかと危惧(きぐ)する。フェルナンジーニョのポジショニングは緩むことが考えられ、ピッチの重要なエリアのスペースがオープンなままにされる可能性がある。代役候補のフェルナンド・レゲスについても、この仕事を適切にこなすにはスピードが足りなすぎる。
GKのブラボは素晴らしいシュートストッパーだが、ボックス内にクロスが集中した時にも自身の領地を支配し続けられるだろうか? これには大きな疑問符がつく。
SBに関しては、パブロ・サバレタはもはやトップレベルで生き抜くだけのスピードがない。最近でも、トッテナムのソン・フンミンのスピードに蹴散らされていた。バカリ・サニャには速さがあるが、グアルディオラの求める典型的なSBとなるにはダイナミズムが欠けている。ガエル・クリシーは1対1において、素晴らしいDFであるとは言えない。ユーティリティープレーヤーであるアレクサンダル・コラロフは、荒っぽいアタッカーを嫌う。このセルビア人の輝くばかりの左足はボールを持てば、本当に価値あるものだが、クロスやフィジカルの強いFWは苦手とする。
プレミアリーグの第7節までを終えて、シティは7失点しか喫していない。だがこれは、守備面の技術のおかげというよりも、ほとんどの試合を支配してきた結果である。シティの後方の選手たちは、これまで直面した全ての試練で、ぐらつきを露呈してきたのだ。
改革はまだスタートしたばかり
ジグゾーパズルは完成していない。ペップの改革は始まったばかりだ 【写真:ロイター/アフロ】
シティのSBは以前ほどにはオーバーラップしないようにと注文されている中で、ウインガーのラヒーム・スターリングにはさらなるスペースが与えられ、新たな芽吹きが見られる。前述したようにデ・ブライネは格別の存在となっており、アグエロの滑るような動きは、まるで手袋のように新指揮官の哲学にフィットする。
ジグゾーパズルは、完成していない。だが、それも時間の問題だ。この先2度の移籍市場で、グアルディオラ式の選手インフラが整備される。優先されるのはSBだ。イルカイ・ギュンドアンが最終的に守備的MFのレギュラーに収まることになっても、驚きではない。
グアルディオラは、グアルディオラである。
超・知的なこの45歳の指揮官は、カミソリのごとく鋭くサッカーをコントロールするマニアであり、ボール支配を要求し、選手たちにはフルのインテンシティー(プレー強度)を求める。
過去にも彼のチームがハマった時には、本当に最高の仕事を披露してきた。
これはまだ、スタートにすぎない。それが事実であるとしたら、プレミアリーグにおけるシティのライバルたちにとっては、深刻に憂慮すべき事態である。
(翻訳:杉山孝)