ラグビーブームの今こそ進めたい価値向上 TLサントリーのプロモーション戦略
企業スポーツの功罪
村上氏(右)の進行で行われた質疑応答パートでは、チケット料金の値上げなどについて会場から質問が飛んだ 【スポーツナビ】
――今シーズンからトップリーグの入場料が値上げされたことについてどう考える?
(入場料収益は)一度ラグビー協会に集められてから経費を除いた分が各チームへ配分されます。(昨シーズンまで)チケットが安かったというのは、そもそも企業スポーツという設立背景から、社内で使いやすいように設定されていた、という経緯があります。(その歴史から値上げは心苦しいが)ただディズニーランドがいい例ですけど、良くするには投資が必要で、お金がかかります。企業に頼ってできる範囲には限りがあるかなと。
――海外のスポーツでは入場料収入以外にも、スタジアムでお金を使ってもらえる。秩父宮ラグビー場には何もなく、お金を落としてもらえない。
海外だと試合の2時間前にはお客さんが来て、飲んだり食べたり、2時間分のお金を落とすわけです。(19年のW杯では日本でもそういうサービスが必要になるが?)そこにはいろいろな問題がありますけど、W杯というのはそういう面を変えるチャンスかなと思います。
――強化グループと運営グループの連携はうまく取れているのか?
うちは去年9位ですから、まずは勝つことを求めるタイミングなのかなと。(普及活動は)選手の負担になる部分もありますので。勝っている強いチームが子どもを教えるというのが理想ですね。
細部まで詰めるエディー監督、センスの清宮監督
日本で結果を残してきた清宮氏と、世界的名将で日本代表を率いても結果を残したエディー氏。会場からは2人の名監督に関する質問が多く寄せられた 【写真:ロイター/アフロ】
1年は選手として、1年はスタッフとしてエディーさんと一緒でした。選手はどこかで区切りを付けないといけないわけですが、当時ジョージ・グレーガンっていう(オーストラリア代表の)すごい選手がいて、(現代表SHの)日和佐(篤)も入ってきて、次のステージに進むタイミングだと考えていました。
エディーさんがまだスポットコーチで来日している時、Bチームで試合に出ている僕のところに来て「この前の試合、良かった」って言うんです。絶対見てないんですよ?(笑) でも選手はうれしいんです。そこのケアがすごい。この人の下でスタッフをしたいなと思って、エディーさんに話して次の年にマネージャーをさせてもらいました。
――実際にエディーさんの下で働いて、どういう面が勉強になった?
エディーさんが一番すごかったのは、ストーリーを作ること。逆算するんですね。マネージャー時代にこういう事がありました。11月くらいに突然「日本選手権の過去の決勝の平均温度を調べろ」と言われるんです。そのシーズンは決勝が3月末くらいでした。
そしたら次の週に当時のジョン・プライヤーS&Cコーチが暖房をガンガン付けて、ゴミ袋被ってウエイト(トレーニング)をしてるんですよ。なぜかって、決勝はその気温でやらないといけないから。11月から準備していたんです。エディーさんは、勝つために1%でも効果がありそうなことは絶対やりますね。
――エディーさんは細部までこだわると有名だ。清宮監督はどうだった?
清宮さんはセンスです(笑)。例えば、今ある素材でうまいもの作れって言われたら、清宮さんは抜群にうまいものを作るんですよ。いろんなことをしてうまいものを作る。でもそれは清宮さんしかできないんです。清宮さんがいなくなったら、何の調味料を入れたのか誰も分からない。
エディーさんは自分で仕入れに行って、一流の素材を、一流の料理人を連れて来て、そこにプレッシャーをかけて(笑)、これでまずくなるわけないと(いう環境を整え)、そういうアプローチをします。だからどちらが良いとかじゃなくて、本当に2人とも勉強になりました。でもエディーさんの方がスタッフは大変ですね(笑)。
――ラグビーの競技人口底上げのために必要だと考えることは?
日本のスポーツのシステムで一番問題だなと思うのは、5歳からラグビーを始めたら、そのままずっとラグビーなんですよね。僕も、もしかしたらバスケットボールをやっていたらすごく良い選手になれたかもしれない。でも試すタイミングがないんです。
ニュージーランドだと夏はラグビーをやらないで、違うスポーツをやって刺激を受けて帰ってくる。帰って来ない人もいますけど、それは行ったり来たりなので、そういうことをやればいいなと思います。
――トップリーグはセブンズとどのような関係性を築くべきだと考えている?
世界的にはセブンズとユニオン(15人制)を分けよう、特化させようという流れがあるんですが、プロ化している海外と企業スポーツの日本は背景が違います。なので日本のベストが何か探していくべきだと思います。ただ15人制に戻ってきた時、選手がつらい思いをしないようにしないといけないですよね。(トップリーグも)勝たないといけないですから、コンディションも含めて正直難しいところです。
――では、サンウルブズとはどのような関係性を築くべき?
そこが日本ラグビー界の抱えている問題で、優先順位を付ける必要があります。資金力を含めたパワーはトップリーグの方が上、でもカテゴリーとしてはサンウルブズが上です。選手はどっちに軸足を置くのかと。代表も含めれば1年中プレーしている選手もいますが、どこで抜くのかちゃんと考えてあげないと。
そうすると(優先順位は)代表、スーパーラグビー(サンウルブズ)、やっぱりトップリーグは一番下なんですよ。だからさっきもお話したように、勝つことだけ、選手のパフォーマンスだけではなく、トップリーグの違う形の価値を追求しないと(いけない)。
あなたにとってラグビーとは?
ラグビーから学んだことを語ってくれた田原氏 【スポーツナビ】