熱戦を繰り広げてきた岩隈とダルビッシュ 明暗分かれた米3度目の対戦

丹羽政善

危なげなく白星手にしたダルビッシュ

ダルビッシュは7回途中まで投げ5勝目を手にした 【Getty Images】

 一方のダルビッシュは、7回2死まで投げて、6安打3失点と危なげなかった。マウンドを降りたときに残した2人の走者をリリーフした投手がかえされて3失点となったが、マリナーズ打線は完全に打ちあぐね、ダルビッシュがここぞと目一杯腕を振る場面もなかった。

 その最近の安定感は四球の少なさとも連動しているが、ダルビッシュが試合後に、これまでとの違いについて、こんな話をしたのが印象に残る。

「前回(24日、レッズ戦)みたいに5個フォアボール出したら、次のブルペンで、『ひたすらストライクを投げろ』と言われるのと、『気にするな。お前がどれだけ良い(投手)か分かってる』と言われることの差だと思う」

 例えば、制球に苦しんだ1年目は、うるさく、「ストライクを投げろ」と言われたが、今は、『大丈夫、大丈夫』と、自信を回復させるような言葉を掛けられる。今やメディアから、四球の多さを指摘されることもなく、その点でのストレスもない。

 真っすぐも走り始めた。かつては、トミー・ジョン手術により球速が上がるとも言われたが、今ではその逆であることが各種データで示されている。だがダルビッシュは、徹底したトレーニングとその効果の研究、また栄養の勉強に時間を割き、ブランクをプラスに変えた。それを今、実感している。

「正直、変わるだろうと信じてはいましたけど、ここまで急激に変わるとは思ってなかったので、そこに関してはすごいびっくりしてます」

 さて、対照的にやはり少し心配なのが岩隈。一夜明けた30日の試合前、メル・ストットルマイヤー投手コーチに呼ばれ、そのまましばらく通訳を交えて、話し合っていた。

 内容までは分からないが、当然ながら、前日のピッチングに関してであることは想像がつく。目下、疲労はピークに達しているはず。だが、チームがプレーオフ争いを続けるなかでは、もう少し無理を強いられよう。

 ちなみに2人がこのあと、ともに中4日で投げ続ければ、9月8日の試合で再び投げ合うことになる。9月1日が両チームとも休養日。両監督がこの休みをどう使うか。岩隈が、過去の投げ合いにふさわしい投球をしたいという思いがあるなら、そのチャンスがまだ、残されているかもしれない。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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