900試合登板の中日・岩瀬仁紀の凄さ 元同僚の前田幸長氏からのエール

ベースボール・タイムズ

コツが掴めれば来年もやれるはず

900試合登板を達成した横浜DeNA戦では1死も取れず3失点で降板。中日の先輩でもある前田氏は全盛期からの衰えが見えるものの、「退化の中の進化を追求し、日本新記録を目指してほしい」とエールを送る 【写真は共同】

――41歳となって迎えた今季は、ここまで11試合に登板して防御率8.59です。さすがに衰えというものも隠せなくなっているのが現状ですが?

 そうですね。900試合登板を達成した試合も打たれましたし、本人も苦しいところでしょう。良かったころと比べると、どの球種も勢いが足りない。若いころと同じトレーニング、準備をしても、同じ結果は得ることが難しい年齢になっている。どうしてもそれまで動いていた部分が動かなくなってきて、それがボールの勢いにも表れてしまっていますね。仕方がない部分ではあると思います。

――前田さんは38歳まで現役を続けましたが、年齢的な衰えに対してどう対応して行きましたか?

 それまでとは違った練習方法を取り入れたりはしましたけど、やっぱり苦労はしましたし、対応し切れたとは思っていないですね。プロ野球選手として、あのころの自分に戻りたいと思っても戻れないのが現実です。衰え方も人それぞれなので、「この練習をしたらこうなる」という確かなものはない。「この練習をしたら、こうなる“だろう”」と、試行錯誤をするしかない。岩瀬自身もいろんなものを試して、探しているところだと思いますし、これからもそれを続けていくしかない。

――現在は二軍調整中の岩瀬投手ですが、今季の残り試合の中ですべきこと、期待することは?

 チームは最下位に低迷して、谷繁(元信)監督が休養、岩瀬自身も働けていないということを考えると、なかなか難しい部分があることは確かです。でもその中で、岩瀬自身が打者に対して「こうすれば抑えられる」というものを掴んでもらいたい。そのコツみたいなものが掴めれば、来年もやれるはずです。残りの試合で彼がそれを見つけられるかどうか。これはコーチが教えられるものではない。岩瀬自身が、自分で見つけないといけない。

退化の中の進化を追求してほしい

――今後の期待としては、米田哲也さんの持つ日本記録949試合登板の更新です。今季は不可能ですが、来年以降の達成は十分に可能のはずですが?

 そうですね。僕も一緒にプレーした人間として、岩瀬にはぜひともナンバーワンになってもらいたいですね。最近、野球教室とかに行っても子供たちに聞かれるんですよね。「イチローと対戦したことある?」って。その時僕は「対戦したことあるぞ」「世界で一番ヒットを打った奴と対戦したんだぜ」って言えますし、今度は「日本で一番登板した奴と一緒にプレーしてたんだぜ」って言えるようになりたいですね(笑)。

――岩瀬投手が日本記録を更新するためにはズバリ、何が必要でしょうか?

 日々進化するということでしょう。当然、年齢的に退化して行くものはあるし、それは避けられない。その時に同じような結果を残すためには、別のところで進化しないといけない。肉体的な衰えを感じる中でも、投球スタイルなど、別のところで進化できるんだと、常に追求することが必要だと思います。岩瀬もそれができたからこそ、今のような素晴らしい成績を残すことができているはずです。今はもがき苦しんでいるところでしょうけど、そこで踏ん張って、諦めることなく進化してもらいたい。

――年齢的なことを考えると、どうしても引退という言葉が取り沙汰されることになりますが?

 そこはもう本人次第でしょう。自分の引き際は自分で決める。山本昌さんもそうでしたけど、岩瀬もその域の選手です。それだけに気持ちの部分、モチベーションを保ち続けることが大事になる。「これぐらいでもういいか」って思ってしまうと退化していく一方ですし、現役も続けられない。まずは今季の残り試合で「こうすれば抑えられる」というものを掴むこと。そして自分自身に諦めることなく、常に進化を続けること。それができれば、日本記録の更新だけでなく、前人未踏の1000試合登板も可能になると思います。

(取材・三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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