一番若くて小さな日本バスケの挑戦 成熟した五輪出場国に成長力で挑む

小永吉陽子

【ポイント2】攻められなかったときにどう打開するのか

今年に入って得点力が上がっている高田真希。183センチの長身で史上最強の日本のインサイドを支える 【写真:Koki Nagahama】

 日本は4カ月間の強化の中で、海外遠征や国内での強化試合にて、予選ラウンドで戦うすべての国と手合わせをした。ただし、現地に入って試合を組んだブラジル戦以外は渡嘉敷が不在であり、対戦国もベストメンバーで臨んでいなかった。そのため、勝敗は参考程度にしかならないが、「一度対戦して感触を得ていることが多いので戦いやすい」と内海知秀ヘッドコーチ(HC)は言う。

 だが、それは対戦国にとっても同じこと。世界中の国が強化試合で対戦し合う今のご時世では、手の内を簡単に知られてしまうのはもはや当然のことである。そんな中で、今回こそは、相手が仕掛けることを上回る対策を出さなくてはならない。毎回、世界選手権での日本は、勝負所でやられてもやり返せるだけの術がなく、無策のまま敗れてきている。内海HCはこうした過去の反省から、「あと一手」を出すことをテーマとしてオフェンスを作ってきた。

 その対策として、5月に2週間に渡って、WNBAでHC経験のあるコーリー・ゲインズ氏を招聘し、オフェンスのバリエーションを増やすための練習を積んできた。相手がディフェンスを組む前に日本の得意とする速い展開で崩すことや、流れの中で足を止めずに何度もオフェンスを構築するフォーメーションを準備してきたのだ。その策を苦しいところで出して遂行できるかがカギとなる。

 また今回、日本の特長としてあげられるのはインサイドの層の厚さである。渡嘉敷(193センチ)、間宮佑圭(184センチ)、高田真希(183センチ)、王新朝喜(189センチ)の高さは史上最強であり、今年に入って?田の得点力が向上していることで、インサイド陣がタイムシェア(編注:プレータイムを全員で分け合い、常に全力を出し切る戦術)をしながら戦えることが大きな強みになった。だが、3ポイントを含めたアウトサイドシュートに関しては、まだ波がある。栗原三佳と近藤楓の3ポイント、本川紗奈生のドライブを生かすためにも、インサイドとアウトサイドの連携プレーもポイントとなる。

【ポイント3】大会中に成長できるかどうか

 各種報道などで「史上最強」とうたわれているこのチームだが、今のところその強さはスピードと高さに限定される。この布陣になってから世界大会ではまだ結果を残したことがなく、7月のセネガルとの強化試合においても詰めの甘さが見られ、相手に合わせてしまうシーンもあった。アジア連覇中といっても、世界舞台でキャリアのない日本の力は未知数。そのポテンシャルの高さを発揮するのはこれからだろう。

 成熟した相手にがっぷり四つに組まれては勝ち目がなく、日本の得意である走りを出すことと、生命線である3ポイントが当たらないことには上位進出は不可能だ。そのためには、日本よりも10数センチ高い相手が仕掛ける以上の粘り強いディフェンスを発揮して勝機をうかがうことが、もはや大前提の戦い方である。

 しかし、そうしてやるべきことに手を尽くしたとしても、成熟したチームに対抗することは非常に難しい。ならば、相手に驚きを与えることが必要になるのではないだろうか。その絶対条件は、毎試合ごとに成長していくことだ。成長の勢いが成熟を凌駕できるかどうか、そのチャレンジに挑んでほしい。

 日本の選手たちはとても勤勉でチャレンジャー精神にあふれる集団である。選手たちに聞けば皆が「五輪という最高の舞台で、小さくてもできる日本のバスケを見せたい」「この五輪をきっかけに、日本のバスケットボールをもっと知ってもらいたい」という覚悟を持って今回リオに挑んでいる。

 決してあきらめることなく、上を目指した姿勢こそが勝利へとつながる。これから変わろうとしている日本のバスケットボールへのメッセージとなる戦いを、期待してやまない。

 リオの舞台で史上最強を示したい女子バスケットボール日本代表の初戦は、日本時間8月7日の朝7時45分、ベラルーシとの戦いで幕を開ける。この一戦に日本は、リオ五輪の命運をかける。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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