【UFC】難敵・スワンソンに挑む川尻の生き様「この試合で終わってもいいという気持ち」

(c) Zuffa, LLC

スワンソン戦受諾にも躊躇なし

スワンソン戦は「ありがたいこと」と話す 【Zuffa LLC】

――さて、今回の対戦相手のスワンソン選手ですが、現在ランキング5位、かなりの強敵だと思います。こんな難敵との試合のオファーに、川尻選手としては躊躇(ちゅうちょ)するようなことはなかったのでしょうか?

 いや、むしろありがたいことだと思いましたね。自分は前回負けたので、今回は若い選手の踏み台のようなカードになってしまうのかな、などとも思っていたところ、むしろ大きな上昇のチャンスをもらえた。そもそも自分は、こういう名のある強い選手と戦うためにUFCと契約したので、躊躇(ちゅうちょ)は全くありませんでした。スワンソンの方も、すぐにOKをしてくれたと聞いています。僕のUFCでの実績だけでなく、これまでのファイターとしての実績全体も評価されたのだと思って、しっかり結果で期待に応えたいと思っています。

――今回の試合はアーリープレリムのフューチャーバウト(2試合目)となっていますが、試合順にこだわりはないのですか?

 試合順については、時間が読みやすいという点で、早めの方が都合はいいんですよ。もっともスワンソン戦なら、第1試合だろうがなんだろうが、試合順には全くこだわらないですね。

――川尻選手の目からカブ・スワンソン選手のことはどんなファイターだと見ておられますか?
 
 アグレッシブで、右のパンチが強い、危険なファイターですね。

――スワンソンの所属先はジャクソンMMA(注:グレッグ・ジャクソン主宰、頭脳的な作戦立案に定評あり)ですが、その部分での警戒感はありますか?

 そこは正直、気になります。クレイ・グイダ(2014年4月、UFCファイトナイト・アブダビで川尻選手に勝利)もグレッグ・ジャクソンのところの選手ですが、自分のことを研究しているな、とは感じました。好選手がそろっているチームですから、スパーリングパートナーにも恵まれているのだろうし、油断はできないですね。

――川尻選手はアメリカで練習されるつもりはないのですか?

 今、自分が20代前半くらいなら、間違いなく行っていると思うんですけどね……。というか、僕は茨城から結果を出すことに思い入れを持っている面もあるんです。デビュー当時から、東京の選手には負けたくないと思って頑張ってきましたし、今では世界に負けたくないと思って頑張っています。茨城が世界に勝つとなれば、痛快じゃないですか。

川尻達也が勝ち続ける理由

――今回の試合、テクニックなどに詳しくないファンは、どんなところに着目するとより楽しめるか、試合の見方をこっそり教えていただけませんか。

 いやいや、とにかく楽しんでくれればなんでもオーケーです。そんなことより、まずは多くの人に見てほしいなと思っています。見てくれれば、答えはそこにあります。これまでは僕のUFCでの試合はWOWOWでも放送される機会がなかったし、ネットでも有料放送オンリーだったりしたんですが、今回は無料で観戦できると聞いているので、ぜひ楽しんでほしいですね。

――ところで川尻選手は、なぜこれほど長きにわたって、UFCという進化し続ける世界トップの舞台で、継続的に勝ち続けることができているのでしょうか。進化をし続けるための秘訣(ひけつ)などがあるのでしょうか?

 それはおそらく、自分がまだナンバーワンになりきれていないからだと思うんです。過去に一時代を作った人は、そこで満足感を得られたかもしれないけれど、自分の場合は一番になりきれていない、一番になりたいという気持ちでやり続けていて、今に至っているという面があります。

 進化ということについては、確かに選手としては当然、練習方法を工夫するなどの対策はしています。ただそれより、この年になると周りの人たちが変わっていく。格闘技の世界から他の仕事に転身する人もいる。世間的にも40歳前といえば、中間管理職になったり、いろいろ変化があるんだろうと思うんですね。そんな中で、僕はずっと変わらず格闘技をやっている。自分はむしろ進化していないのではないかと不安になるくらいなんです。今は、ファイターという立場、続けられる環境に感謝しながら、”変わらない勇気”を持って練習に励んでいるというのが実態なんですよ。

気持ちの勝負になる。絶対に引かない

「今はとにかく、次の試合で終わってもいい、目がダメになってもいいというくらいの気持ちでいます」と集中している 【Zuffa LLC】

――川尻選手と同じ大会に、石原夜叉坊選手も出場します。石原選手にエールを送っていただけませんか。

 石原選手のことはVTJ(2014年2月23日開催のVTJ 4th)で佐々木憂流迦選手と戦った試合で初めて見ました。その試合では石原選手は負けてしまったのですが、面白い選手だなあと、むしろ強く印象に残っています。キャラも立っているし、若くて勢いもあるので、これからどんどん駆け上っていってほしいですね。彼のような選手がどんどん出てくると、格闘技人気も高まってくるんじゃないかなと思います。もちろん、石原選手に追い越されないように、僕は僕で頑張りますよ。

 なんでも彼のTwitterによると、彼は僕の試合を中学生の時に見ていたというんですよね。そういうのを見ると正直へこみますね。自分が五味隆典選手と戦っていた頃、石原選手はまだ中学生だっただなんて……なんだか自分の年齢を痛感させられます。

――さて川尻さん! 5位のスワンソンに勝つこととなれば、もうそこから上は、マクレガーやアルドしかいませんよね。マクレガーをぶっ飛ばしていただけますか。

 そこまで考えてないですよ(笑)。今はとにかく、次の試合で終わってもいい、目がダメになってもいいというくらいの気持ちでいますので(注:川尻選手は2014年7月に自身3度目となる網膜はく離の手術を受けている)。確かに得るものが多い試合であることは理解していますが、とにかくまずはスワンソンに勝ちたい。気持ちの勝負になると思うので、その面では絶対に引かないつもりです。生き様を見てほしいですね。

2/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント