具志堅用高がほれたホープ・比嘉大吾 急成長の上昇曲線で世界挑戦も視野に
理想はロマゴン 鬼門のタイでKO勝利
野木トレーナーは「動きのセンスがいい」と才能を絶賛する 【船橋真二郎】
“地獄”と称される階段ダッシュは単に下半身とスタミナの強化だけが目的ではない。股関節の動きを意識し、その使い方を体で覚えこませる。階段以外にも下半身から上半身、腕へと動きを連動させる際に重要な股関節、肩甲骨を意識したメニューを取り入れたサーキットトレーニングで「しっかり地面の力を活かせる」体の動かし方を指導してきたが、「一言で言って、動きのセンスがいい」と野木トレーナーが絶賛する才能を比嘉は示した。
その上で手本にしたのが現役最強の呼び声高い、WBC世界フライ級王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)だ。一発一発が強く、それでいて力みのないコンビネーションブローが次から次とつながるゴンサレスは、理想の体の動かし方を体現すると同時に比嘉が高校時代から好きだったボクサー。動きをイメージするのにこれ以上ないモデルを野木トレーナーから提示され、今では“和製ロマゴン”の愛称も定着しつつある。
「特にこの1年の伸びは目覚ましい」と野木トレーナーは舌を巻くが、1年前の7月、タイに乗り込んだ比嘉は地元の全勝ホープを7ラウンドKOに下し、WBCユース・フライ級王座を獲得している。日本人選手にとっては“鬼門”のタイで最終回にダウンを奪い、WBA世界フライ級暫定王者に勝利した経験を持つ江藤光喜に「倒さないと勝てない」と鼓舞され、夢中で攻め続けた結果だった。同郷でもある江藤に肩車されながら、「人前であんなに号泣したのは初めて」と大粒の嬉し涙を流した。それ以来、ユース王座の初防衛戦、2度目の防衛戦と涙とともに自らを解放するかのように急成長してきた。
具志堅会長と同じ「21歳で世界王者」へ
具志堅会長と同じく「21歳で世界王者」という目標を達成するため、1年以内に世界挑戦も 【船橋真二郎】
「僕はよくインタビューで怖い、怖いと言うんですけど、みんなは試合が怖いと思ってるんだろうけど、試合以上にそのプレッシャーが怖いんです」
様々な人に導かれたから、ここまで来ることができたと肌で分かっているのだろう。だからこそ、絶対に期待を裏切りたくないという身を切られるような恐怖の先で涙が流れる。
「具志堅会長と同じ21歳で世界チャンピオンになる」
それが8月9日で21歳の誕生日を迎える比嘉の現在の目標。つまり、あと1年以内、デビューから3年以内の世界挑戦に照準を合わせている。
「ディアレに対して、手こずるのが普通なのに自分のボクシングで押し切ってしまった。まだ若く、まだまだ上昇曲線が描ける。そういう意味でも計り知れない力がある」(野木トレーナー)
期待の才能は1年後、どこまでたどり着いているのだろうか。注目である。