「北島節」受け継ぐ小関也朱篤の決意 平泳ぎのエースとして求められる結果
メンタル面の課題を克服できるか
五輪では2大会連続で2冠を達成した北島(左)。その振る舞いには小関(中央)も学ぶものが多いと語る 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
しかし、小関はさほど心配していないようだ。イメージトレーニングは以前から行っている。それに加えて5月上旬、日本代表の合宿で脳医学者である林成之さんの講義を受けた。その内容は“勝負脳”について。
「『勝負をする前から負けることを考えると自然とそうなってしまう』と先生はおっしゃっていました。確かにそうだと思いますし、どんな状況であっても勝つ気持ちやイメージを頭の中で考えながら、残りの日数をしっかりと過ごしていければと思います」
北島の所作も参考にするつもりだ。世界の舞台で無類の勝負強さを誇った北島の振る舞いは見習うべき部分が多くある。小関はそれを「北島節」と表現した。
「北島さんのレースに臨む姿勢、顔つき、目つきなどそういう部分を僕はずっと見て、学んできました。僕もそれを無意識のうちに出せるようにして、トレーニングを積んでいきたいですし、レースにも臨めるようにしたいですね」
北島を指導していた日本代表の平井伯昌監督によれば、「康介は試合前に負けることは一切考えていなかった」。まさに勝負脳が備わっていたわけだ。これらの部分を小関はぜひ受け継ぎたいところだろう。
「2人で良い結果を出して泣きたい」
今大会の平泳ぎには渡辺(左)とともに出場。2人で切磋琢磨しながら、メダル獲得を狙う 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
もちろん小関自身もそのつもりだ。技術面で課題としている腕の掻きとキックのタイミングをラスト50メートルでしっかりと合わせられるようになれば、自然とタイムも上がってくるはず。あとは気持ちの戦いになる。
200メートルには19歳の渡辺一平(早稲田大)も出場する。小関がイメージするのは北島と立石のような関係を渡辺と築くことだ。2人が競い合って共に良い結果を出す。ロンドン五輪ではずっと北島の背中を追ってきた立石が、その北島に勝って銅メダルを手にして号泣。それを北島が祝福した場面は感動を呼んだ。
「渡辺くんとは、ロンドンのときの北島さんと立石さんのようになれたらという話をしました。立石さんはあのとき泣いていたので、僕らも2人で良い結果を出して泣きたいです」
日本の平泳ぎはここ10数年、北島とともにあった。しかし、いつまでもその存在にすがっていては未来はない。小関に求められるのは北島の名を忘れさせるくらいの結果だ。平泳ぎのエースとして、かかる期待は大きい。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)