祝・黒田200勝! 積み重ねた記録の重み ベースボール・グラフィック・レポート

 広島は初優勝を果たした1975年〜80年代前半にかけて黄金期が訪れるも、その後は順位が下降気味に。98年からは15年続けてBクラスへ沈むという、低迷期に陥った。黒田は97年にプロ入りしたことから、ほとんどのシーズンをチーム成績が振るわない中で戦い続けたのだ。その点を考えても、黒田が積み重ねた白星の価値の重みがわかるだろう。

 ここで、ふとした疑問が浮かぶ。もし黒田在籍時の広島が当時の強豪チームと同じくらいの勝率だったら、勝ち星をどれだけ積み上げられたのか。黒田の実際に記録した勝敗数と、広島ならびに強豪チームの勝率差から考えてみたい。

 計算式は以下の通り。なお、強豪チームで挙げたと推定される勝利数は「もしも勝利数」とする。(今季の7勝とMLBで記録した79勝は変更なし)

 もしも勝利数=黒田の実勝利数+{(黒田の実勝利数+実敗戦数)×強豪勝率−(黒田の実勝利数+実敗戦数)×広島勝率}

 勝利数は打線の援護や相手との兼ね合いもあるため、投手自身だけでコントロールできるものではない。より勝つ可能性の高いチームであれば、白星の積み上げが期待されることだろう。今回は強豪チームの代表格である巨人と、2000年代から優勝争いに食い込む回数が多くなった阪神とで試算した。

MLBでの勝利数、2016年の勝利数は実数で計算 【データおよび画像提供:データスタジアム】

 巨人は黒田がルーキーだった97年以外、常に広島を上回る勝率を記録。その分「もしも勝利数」も伸びて、今の時点で213.5勝を挙げていた計算に。あくまでも仮定ではあるが、昨季のうちに日米通算200勝を達成していたことになる。

MLBでの勝利数、2016年の勝利数は実数で計算 【データおよび画像提供:データスタジアム】

 一方で、黒田在籍時の広島と阪神が同じ勝率だった場合はどうだろうか。阪神が広島と同様に低迷期を過ごしていた90年代〜2000年代初頭は「もしも勝利数」が伸びなかったものの、02年以降は実勝利数を上回る結果に。

 特に阪神がリーグ優勝、広島が最下位に沈み、チーム勝率が2割以上の差が出た05年は、黒田がキャリアで一度も達成していない20勝に届くと算出。実際のシーズンでは28試合に先発(うち完投が11試合)、212回2/3を投げて15勝(12敗)で最多勝のタイトルを獲得したが、さらに白星が積み上げられる試算となった。

 そして巨人の時と同様、この仮定に基づくと昨季中に日米通算200勝を達成。どちらも、現実より早いペースで大台に乗っていたと考えられる。

 裏を返すと、なかなか戦力に恵まれず成績も振るわない中でも、黒田は投げ続けた。闘志を前面に出すマウンドさばきや、強き者に立ち向かっていく姿に、広島ファンのみならず多くのプロ野球ファンが魅了されてきた。

 広島は12球団で最も優勝から遠ざかっているチームだが、今季は他チームを大きく引き離しペナントレースを独走中。1991年以来、25年ぶりのリーグ制覇の可能性が高まっている。広島の低迷時代を知るエース、黒田博樹の日米通算200勝達成で、さらに勢いが増すのは間違いない。

(文:加賀一輝/スポーツナビ、グラフィックデザイン:澤田洋佑)

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