祝・黒田200勝! 積み重ねた記録の重み ベースボール・グラフィック・レポート
ここで、ふとした疑問が浮かぶ。もし黒田在籍時の広島が当時の強豪チームと同じくらいの勝率だったら、勝ち星をどれだけ積み上げられたのか。黒田の実際に記録した勝敗数と、広島ならびに強豪チームの勝率差から考えてみたい。
計算式は以下の通り。なお、強豪チームで挙げたと推定される勝利数は「もしも勝利数」とする。(今季の7勝とMLBで記録した79勝は変更なし)
もしも勝利数=黒田の実勝利数+{(黒田の実勝利数+実敗戦数)×強豪勝率−(黒田の実勝利数+実敗戦数)×広島勝率}
勝利数は打線の援護や相手との兼ね合いもあるため、投手自身だけでコントロールできるものではない。より勝つ可能性の高いチームであれば、白星の積み上げが期待されることだろう。今回は強豪チームの代表格である巨人と、2000年代から優勝争いに食い込む回数が多くなった阪神とで試算した。
MLBでの勝利数、2016年の勝利数は実数で計算 【データおよび画像提供:データスタジアム】
MLBでの勝利数、2016年の勝利数は実数で計算 【データおよび画像提供:データスタジアム】
特に阪神がリーグ優勝、広島が最下位に沈み、チーム勝率が2割以上の差が出た05年は、黒田がキャリアで一度も達成していない20勝に届くと算出。実際のシーズンでは28試合に先発(うち完投が11試合)、212回2/3を投げて15勝(12敗)で最多勝のタイトルを獲得したが、さらに白星が積み上げられる試算となった。
そして巨人の時と同様、この仮定に基づくと昨季中に日米通算200勝を達成。どちらも、現実より早いペースで大台に乗っていたと考えられる。
裏を返すと、なかなか戦力に恵まれず成績も振るわない中でも、黒田は投げ続けた。闘志を前面に出すマウンドさばきや、強き者に立ち向かっていく姿に、広島ファンのみならず多くのプロ野球ファンが魅了されてきた。
広島は12球団で最も優勝から遠ざかっているチームだが、今季は他チームを大きく引き離しペナントレースを独走中。1991年以来、25年ぶりのリーグ制覇の可能性が高まっている。広島の低迷時代を知るエース、黒田博樹の日米通算200勝達成で、さらに勢いが増すのは間違いない。
(文:加賀一輝/スポーツナビ、グラフィックデザイン:澤田洋佑)