あなたの「足腰力」は大丈夫!? PART3 運動不足だとすぐ衰える!平衡感覚チェック

茂田浩司

体がフラついた時「とっさの一歩」が出るか

――この「開眼片足立ちテスト」ですが、年代ごとに目安となる秒数があるそうですね。

「そうですね。男性の場合、20代で90秒以上、30代は70〜80秒、40代は60〜70秒、50代は50〜60秒、60代は40〜50秒が目安となります。筋力の弱い女性は、同じ年代の男性のマイナス10秒です。30代の女性は60〜70秒、40代の女性は50〜60秒を目標にやってみてください」

――と、いうことは男女共30代、40代で「30秒間出来なかった」という人は……。

「『足腰力はすでに70代』ということですね。かなり運動不足の方でしょう」

――このテストで何が分かるのですか?

「片足立ちをすると、3つのことが分かります。
1、体を水平に保つ『平衡感覚』は衰えていないか?
2、体がフラついた時、しっかりと大腰筋(だいようきん)と中臀筋(ちゅうでんきん)で支えられるか?
3、関節(特に股関節)の可動域は狭くなっていないか?
 いずれも『足腰力』を構成する大事な要素です」

――これは年齢と共に衰えるものですか?

「20代の方なら、片足立ちをして体がグラついても、すぐに修正してバランスを取り続けることは難しいことではありません。しかし、加齢と共に重心のグラつきは激しくなります。その原因は二つあります。一つは、平衡感覚をつかさどる神経系(反射能力とバランス能力)が老化してしまうこと。もう一つは、筋力が低下し、関節の可動域が狭くなって『バランスを崩した状態から修正する力』が弱くなってしまうのです」

――なるほど。

「私がこのテストを高齢者向けのセミナーで実施しているのは理由があります。高齢者がつまずいた時、反射的に『とっさの一歩』が出れば怪我は防げます。ですが、多くの場合はとっさの一歩が出ずに前のめりにつっこんで顔を強打したり、後ろに転倒して頭を打ってしまったりと大怪我につながります。この『足腰力』シリーズで指摘してきたように、高齢者の『転倒、骨折』は寝たきりにつながります。これをどうにかして防ぎたいので、私は『とっさの一歩』が出るように指導しているのです」

――「足腰力」のある高齢者なら「とっさの一歩」は出ますか?

「普段からよく歩き、運動する習慣のある高齢者は『とっさの一歩』が出ますね。ですが、30代、40代で開眼片足立ちが『30秒持たなかった』という人は、10年後、20年後が本当に心配ですよ」

鍛えるべきは大腰筋と中臀筋。そして股関節の可動域を広げましょう!

(写真2) 【茂田浩司】

――どうしたらいいでしょう?

「強化しておきたいポイントがあります。まず、筋肉では体を支える大腰筋(だいようきん=腹部の深層にあり、背骨と太ももの骨を繋いでいる筋肉)と中臀筋(ちゅうでんきん=骨盤から太ももをつなぐ腰まわりの筋肉)です。また、日常生活で意識することがほとんどない『股関節の可動域』をしっかりと広げておくことも大切です。では、私が3つのトレーニングをお教えしましょう」

<大腰筋のトレーニング>

(写真3) 【茂田浩司】

1、あおむけに寝て、左足を曲げてお尻に引きつけながら、右足はかかとで壁を蹴るイメージで真っ直ぐに伸ばす。
2、左足を戻し、今度は右足を引き上げる。
※左右交互に20回で1セット。計3セットおこなう。

「左右の骨盤を交互に動かすイメージです。曲げた足の側の大腰筋が鍛えられます。このトレーニングをすると骨盤のゆがみが矯正されて姿勢が良くなり、腰痛の予防にもなりますよ」

<中臀筋のトレーニング>

(写真4) 【茂田浩司】

1、横向きに寝て、右足は真っ直ぐに伸ばし、左足はひざを曲げる。
2、右足を30度の角度まで上げる。この時、腰の筋肉が動くことを意識するために右手を腰に当てる。
3、右足を水平になるまでおろす。この時、足は床につけずに、再び足を30度の角度まで上げる。これで1回。10回おこない、次は逆の足へ。
※右足10回、左足10回の計10回。これを1セットにして、計3セット。

「中臀筋が弱いと、歩く時に体が左右にブレてしまいます。体をしっかりと支えて、力強く歩けるように強化しておきましょう」


<股関節の動きをよくして、バランス感覚を養う『振り子トレーニング』>
1、椅子の背もたれを両手で持って立つ。
2、右足を真横に上げる。
3、振り上げた右足を左足の前まで下ろして、両足を交差させる。この時、右足は床につけない。
4、左足と交差させた位置から、再び右足を真横に振り上げる。
※右足10回、左足10回の計20回で1セット。計3セットおこなう。

「股関節の柔軟性は特に大事です。高齢者の場合、股関節の柔軟性が失われると『歩幅』が狭くなり、小さな段差につまずいたり、バランスを崩してフラつくことが多くなります。ですから、30代、40代のうちから、この振り子トレーニングをしたり、股関節のストレッチをすることを習慣にしておきたいですね」

――なるほど。

「前回『正しい歩行フォーム』をお教えしましたが、この3つのトレーニングをすると『正しい歩行フォームを維持して歩くこと』がもっとスムーズに出来るようになりますよ。大腰筋と中臀筋を鍛えて正しい姿勢を維持して、股関節の柔軟性を上げて歩幅を広げると、歩くスピードも上がり、ウォーキングの健康効果がアップしますよ。ぜひこの3つのトレーニングをして『足腰力』をアップしてください」

(聞き手・撮影 茂田浩司)

「一生歩ける!寝たきりにならないための足腰力」 [PR]

【(C)双葉社】

野呂田秀夫著
発行:株式会社双葉社

 背筋がシャキっと伸びていつまでも若々しい人と、腰が曲がり老け込んでしまっている人がいる。その違いは何だろうか。
 答えは「足腰力」。筋肉は、何もしなければ30代、40代から衰える。早めに今の自分の「足腰力」をチェックして、衰えているなら鍛えたい。
 本書は、各地で「高齢者向け健康セミナー」を開催し「足腰力」の大切さを説き、足腰力アップ方法を指導している著者が『元気良く、一生シャキシャキと歩ける「足腰力」を持つための方法』を公開したもの。
 4人に一人が65歳以上の高齢者という、世界でも類を見ない「超高齢化社会」にあって「どうしたら、生涯、自分のことは自分でできる高齢者になれるか」は国民的なテーマ。そのテーマに取り組んでいる著者が、長年の経験から導き出した「足腰力のチェック方法」や「正しい姿勢と、正しい歩行フォーム」、「足腰力を決める大事な3つの筋肉の鍛え方」「猫背の矯正方法」などを分かりやすく伝授する。
 老後に備えた貯金と同様、将来に備えた“貯筋"を始めましょう。

【目次】

第1章 背中を丸めて、下を向いて歩く人ばかり
    なぜ日本人の足腰力は弱いのか?

第2章 足腰力の基本は
    「正しい姿勢」と「正しい歩行フォーム」

第3章 あなたはすでに衰えている!?
    足腰力を簡単チェック&トレーニング

第4章 このポイントを知っておけば、
    足腰力はもっともっと伸びる!

第5章 ジム通いも器具もいらない!
    通勤時間や休憩中の足腰力アップ法

指導者プロフィール:野呂田秀夫(のろた・ひでお)

1944年生まれ。秋田県能代市出身。メディカルクロッシングオフィス主宰。理学療法士、柔道整復師。東京警察病院リハビリテーション科室長、顧問を経て現職。またNPO法人格闘メディカル協会会長、財団法人日本スポーツ・芸術サポート財団特別顧問。
長年、総合リハビリテーション分野、スポーツリハビリでの治療ケアに携わり、人体の運動学、痛み、筋力強化の関連研究、特に手技療法や物理療法を用いたテクニックで早期にスポーツ選手を復帰させている。
現在は、足利市の社会福祉法人両崖福祉会特別養護老人ホーム清明苑、松戸市千葉シルバー福祉研究所パークヴィラ陽春館などで定期的に指導を続け、また中高年や高齢者向けの講演やセミナーで「長寿社会を元気に生きるために、筋力トレーニングで筋肉量の減少を防いで『足腰力』を向上させましょう」と呼びかけている。

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著者プロフィール

情報誌の編集ライターを経て96年からフリー。99〜02年『ゴング格闘技』編集ライター。現在はプロレス・格闘技、お笑い、教育、健康、テレビ、政治など幅広く取材。「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」(企画・編集)、「終わりのない歌」(構成)等。「水道橋博士のメルマ旬報」連載中

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