あなたの「足腰力」は大丈夫!? PART2 運動効果を高める「正しい姿勢と歩行フォーム」

茂田浩司

間違ったフォームで歩くと怪我をする

【写真1】 【茂田浩司】

――前回も少し触れましたが「足腰力」をアップさせるには、やはり日頃から歩くことが大切ですか。

「そうですね。ただし『歩く距離を伸ばせば、必ず足腰力は上がるか』といえば、そうとも限りません」

――どんどん歩いてもダメですか?

「たとえば、健康診断でメタボリックシンドローム(内臓脂肪型症候群)と認定されると『運動不足です。もっと歩きましょう。電車を一駅手前で降りて歩いてみましょう』といった指導がされます。しかし、慢性的な運動不足で筋肉は衰え、体にたっぷりと脂肪のついた人が『一駅分歩くこと』を続けられるでしょうか。足の筋肉が追い付かずに故障するか、持久力も落ちているので歩くことがあまりにも辛くて、1週間もしないうちにギブアップしてしまうのではないですか」

――思い当たることばかりです。運動不足解消で毎日1時間のウォーキングを始めたら、1週間もしないうちに足の裏が痛み始めて、病院で『足底筋膜炎』と診断されて結局続きませんでした……。

「そういう方は多いですよ。運動不足の方が『もっと歩こう』と決めたらそのための準備をしてください。長い間、しっかりと動かしていない体は筋肉が衰えていて、運動に耐えられない体になっていることが考えられます。まず、下半身を中心にストレッチをしたり、歩くための筋肉がどこまで衰えているかのチェックをして、衰えているなら鍛える。特に大事なのが『正しい歩行フォーム』を身につけておくことです」

――正しい歩行フォーム、ですか。

「前回も触れましたが、今の30代、40代は、背中を丸め、視線を足元に落とし、小さな歩幅で歩いている方が多いです」
「私はこのような歩き方を『高齢者のコチョコチョ歩き』と名づけて警鐘を鳴らしてきました。この歩き方は足先が上がりにくく、つまずきやすいので、高齢者は『転倒、骨折』の危険があり、最悪の場合はそのまま寝たきりになってしまうのです」

――30代、40代が「コチョコチョ歩き」をしているとどうなりますか?

「体に余計な力が入ったままですから、この姿勢で長い時間を歩くと足や腰に負担が掛かります。腰痛やヒザ痛など、持病や古傷のある方は痛みが出てしまいますし、スムーズに歩けないので体がキツすぎて『ダメだ、歩けない』とギブアップしてしまうでしょう。また、体幹部(腹筋と背筋)がまったく使えていない歩き方ですから、どんなに歩いてもお腹はひっこみません。そして、何より怖いのは、この『コチョコチョ歩き』のままで50代、60代を迎えると、高齢者のように『転倒、骨折』をする危険が増えます。将来寝たきりになる可能性を少しでも減らすためには、今から歩くフォームをしっかりと修正して、長く歩いても疲れない『足腰力』を身につけておきたいですね」

ヒザを伸ばすと、背すじも伸びる

【写真2】 【茂田浩司】

――どうしたら正しい歩行フォームが身に付けられるでしょうか?

「私が高齢者の方にお教えしている方法を試してみてください。まず、足を踏み出す際に『ヒザを伸ばして踏み出すこと』を意識してください」

【写真3】 【茂田浩司】

「最初はぎこちない動きになりますが、少し大げさなぐらいヒザを伸ばすことを意識して、足を前に運んでください」

――ヒザを伸ばそうとすると、背すじも伸びるんですね。

「そうです。背中が丸まり、骨盤が後傾してお尻の位置が下がった姿勢のままでは、ヒザを伸ばして歩くことは出来ません。『ヒザを伸ばそう』と意識して歩くと、背すじがピンと伸びて、後ろに下がっていた骨盤は前に出て、お尻の位置は上がります。その姿勢のまま、視線を10メートル前方に向けてください。これが『歩く時の正しい姿勢』です」

――なるほど。

「次に、足の動きです。足を踏み出したらカカトで着地して、後ろの足はつま先で地面(床)を蹴って前に進みます」

【写真4】 【茂田浩司】

「『踏み出した足のヒザを伸ばして、カカトで着地し、つま先で蹴る』を意識して歩いてみてください。体重移動がスムーズになるので、歩幅が広がり、歩くスピードが速くなったことが分かりますか?」

――確かに「歩幅を広げよう」と思っていなくても自然に歩幅が広くなりますね。

「そこまで来たらもう少しです。さらにスムーズに歩くコツは、足を前に出す時に『骨盤から動かす』ことです。右足、左足、右足と足を前に出すのではなく『右の骨盤を前に、左の骨盤を前に』と骨盤を交互に前に動かす意識を持って歩いてください」
――上半身も一緒に動きますね。

「『歩く動作』は、ただ足を前に出すだけではなく、背骨(体の軸)を中心とした回旋運動があり、ここに足と手の動きが加わって『歩く』という動作になるのです。この『回旋運動』を意識できるようになると、歩く時にしっかりと体幹が使えますから、お腹まわりがスッキリとしてダイエット効果が期待できますよ」

――それは嬉しいです。

「ですが、背中を丸めて、足元を見ながら『コチョコチョ歩き』をしている方は、体幹が全く使えていないので、歩くことによるダイエット効果はあまり期待できません。それどころか、体に負担の掛かる姿勢で長時間歩くことをすれば、腰痛を引き起こしたり、転倒する危険もあります」

――なるほど。

「ですから、歩いて健康になるためには、まず正しい歩行フォームを身につけることから始めていただきたいですね」

通勤時間や休憩時間を使ったウォーキング

【写真5】 【茂田浩司】

――後は「ウォーキングをする時間」をどう確保するか、なのですが……。

「忙しい社会人が『週2回、ジムや近所でウォーキングをする』というのはなかなか大変ですよ。私自身、ジムに行く時間はありませんが『時間もお金もなくて運動ができない』という方に私は言うんです。『運動ならもうしているじゃないですか。通勤時間や休憩時間に歩いているでしょう。もう少しだけ工夫して、ウォーキングの時間にしましょう』と」

――なるほど。

「手元のスマートフォンを見ながら、ダラダラと歩いていたらダメですけどね(笑)。正しい歩行フォームでシャキシャキと、5分でも10分でも歩いてください。必ず健康効果がありますから。しかし『ただ歩くだけ』では飽きてしまいますから、私が手軽に出来て、健康効果のあるウォーキングの方法を今日は2つお教えしましょう」

――よろしくお願いします。

「まず『大またスピードウォーキング』です。これは背すじをピンと伸ばしながら、歩幅をなるべく広くします。腕は軽く曲げて、力強く前後に振ってください。イメージは『競歩の選手』です」

【写真6】 【茂田浩司】

「『大またスピードウォーキング』で3分歩いた後、息を整えながら普通の歩き方で3分。これを繰り返すと、かなりの運動量になりますよ」

――汗を大量にかきますから、帰宅時などにいいかもしれませんね。

「次に『階段1段飛ばし』です」
「階段を1段飛ばしで上がっていくには、歩幅を広くして、太ももをしっかりと上げなければいけません。この動作が大腰筋(太ももと骨盤を繋ぐ筋肉)の強化につながりますし、バランス感覚も養えるのでおすすめですよ」

――先生も普段からなさっているそうですね。

「私は日課の朝のウォーキングの時、近所の歩道橋を利用しておこなっています。混雑している駅の階段でやると、人とぶつかったり、階段を踏み外す危険がありますから、なるべく人のいないところでするようにしてください。オフィスまでエレベーターを使わずに階段を1段飛ばしで上がったり、もし適当な階段や歩道橋がなければ、上り坂をできるだけ大またで上がっても同じ効果がありますよ」

――なるほど。

「運動イコール、スポーツジムではないですからね。通勤時間や休憩時間で工夫して、短時間でも健康効果の高いウォーキングをしてください。そうすれば、必ず『足腰力』は今よりも上がってもっと健康になりますし、続けていけば『元気な、若々しい高齢者』になれますよ」

(聞き手・撮影:茂田浩司)

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【(C)双葉社】

野呂田秀夫著
発行:株式会社双葉社

 背筋がシャキっと伸びていつまでも若々しい人と、腰が曲がり老け込んでしまっている人がいる。その違いは何だろうか。
 答えは「足腰力」。筋肉は、何もしなければ30代、40代から衰える。早めに今の自分の「足腰力」をチェックして、衰えているなら鍛えたい。
 本書は、各地で「高齢者向け健康セミナー」を開催し「足腰力」の大切さを説き、足腰力アップ方法を指導している著者が『元気良く、一生シャキシャキと歩ける「足腰力」を持つための方法』を公開したもの。
 4人に一人が65歳以上の高齢者という、世界でも類を見ない「超高齢化社会」にあって「どうしたら、生涯、自分のことは自分でできる高齢者になれるか」は国民的なテーマ。そのテーマに取り組んでいる著者が、長年の経験から導き出した「足腰力のチェック方法」や「正しい姿勢と、正しい歩行フォーム」、「足腰力を決める大事な3つの筋肉の鍛え方」「猫背の矯正方法」などを分かりやすく伝授する。
 老後に備えた貯金と同様、将来に備えた“貯筋"を始めましょう。

【目次】

第1章 背中を丸めて、下を向いて歩く人ばかり
    なぜ日本人の足腰力は弱いのか?

第2章 足腰力の基本は
    「正しい姿勢」と「正しい歩行フォーム」

第3章 あなたはすでに衰えている!?
    足腰力を簡単チェック&トレーニング

第4章 このポイントを知っておけば、
    足腰力はもっともっと伸びる!

第5章 ジム通いも器具もいらない!
    通勤時間や休憩中の足腰力アップ法

指導者プロフィール:野呂田秀夫(のろた・ひでお)

1944年生まれ。秋田県能代市出身。メディカルクロッシングオフィス主宰。理学療法士、柔道整復師。東京警察病院リハビリテーション科室長、顧問を経て現職。またNPO法人格闘メディカル協会会長、財団法人日本スポーツ・芸術サポート財団特別顧問。
長年、総合リハビリテーション分野、スポーツリハビリでの治療ケアに携わり、人体の運動学、痛み、筋力強化の関連研究、特に手技療法や物理療法を用いたテクニックで早期にスポーツ選手を復帰させている。
現在は、足利市の社会福祉法人両崖福祉会特別養護老人ホーム清明苑、松戸市千葉シルバー福祉研究所パークヴィラ陽春館などで定期的に指導を続け、また中高年や高齢者向けの講演やセミナーで「長寿社会を元気に生きるために、筋力トレーニングで筋肉量の減少を防いで『足腰力』を向上させましょう」と呼びかけている。

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著者プロフィール

情報誌の編集ライターを経て96年からフリー。99〜02年『ゴング格闘技』編集ライター。現在はプロレス・格闘技、お笑い、教育、健康、テレビ、政治など幅広く取材。「棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか」(企画・編集)、「終わりのない歌」(構成)等。「水道橋博士のメルマ旬報」連載中

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