走り幅跳び、山本篤の強さを支える分析力 リオでの金メダルに向けた2つの課題

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浮き上がった後に生じる両足の感覚のズレ

新たな感覚をつかみつつある山本は、空中で右足が下がることを課題に挙げた 【Getty Images】

 山本がもうひとつ課題として挙げたのが、「落ち」の場面だ。せっかく浮き上がって滞空時間が長くなっているのに、空中で足が下がってしまい、それを生かすことができていないという。下がってしまうのは、義足をつけている左足ではなく、右足だ。

「明らかに健足(右足)が早く落ちてしまっている。我慢ができない。おそらく、自分の中で着地のタイミングがあって、それが空中の時間が長くなった分、ズレが生じている。自分は着地をしようとする前に、今までの慣れで体が勝手に着地の体勢に入っている。それをもう一段階、上げないといけない」

 つまり、右足が着地体勢に入ろうとするのを意識的に耐え、着地点を先に伸ばす。そこを変えていくことができれば「(6メートル)70〜80センチはいける」と記録更新に自信をのぞかせた。

 これが実現すれば、山本が記録を更新してからわずか3週間後に記録を塗り替えた、ダニエル・ヨルゲンセン(デンマーク)の6メートル67を再び上回ることができる。

リオまで残り3カ月、どこまで進化するのか?

5月に記録した世界記録はわずか3週間後に破られた。山本は再び記録を更新できるか 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】

 山本の語った健足と義足の感覚のズレなどは、われわれに分かる感覚ではないだろう。ただ、その場でわれわれにも理解できるよう話が整理されていた。

 リオパラリンピックの開幕まで3カ月。「いろいろと試す期間があるし、自分でやりたいことがまだある」と語る山本は今後、ジャパンパラの映像を見て「浮き」の感覚があるときと、そうでないときの違いは何か、どうすれば右足が下がらずに耐えられるかを具体的に落とし込んで検証するつもりだ。

 山本の現状を認識し、課題を捉える分析力、ディテールにこだわる探究心に、強さの一端を見た気がした。

 パラリンピックにおいて、走り幅跳びは毎年どんどん記録が伸びている。その中でトップを争うアスリートたちには、心技体を鍛えるだけではなく、どう知性を使うのかも重要なのだろう。

 残り3カ月でも進化を感じさせる山本。リオでどんな姿を見せるのだろうか。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)

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