最悪のタイミングで生じたバルサの崩壊 世界最高レベルのチームが苛まれた不安

順調に歩みを進めていたバルサだったが……

1カ月前には3冠に向けて順調に歩みを進めていたと思われていたバルセロナだが…… 【写真:ロイター/アフロ】

 今から1カ月前にバルセロナとアトレティコ・マドリーが勝ち点3差、レアル・マドリーとは同4差まで縮まると予言していたら、恐らく周囲からは頭がおかしくなったか、うわ言でも言っているように見られたことだろう。

 それまでバルセロナは3つの大会すべてのタイトル獲得に向けて、極めて順調に歩みを進めていた。多彩な攻撃パターンを擁するチームからは絶対の自信が感じられ、攻撃の駒数は限られていたものの、控え選手を1人や2人起用したくらいで問題が生じることもなかった。とりわけ年明け以降はアルダ・トゥランとアレイクス・ビダルが加わり、長期離脱のラフィーニャ・アルカンタラも復帰が間近に迫っていただけに、前半戦より戦力は充実していたのだ。

 だが、ホルヘ・バルダーノがこれまで何度も話してきた通り、フットボールは過去にも増して精神状態が反映されやすい競技になっている。試合結果がチームに与える影響は大きく、1つの成功が次なる成功をもたらす好循環が生じることもあれば、1つの重要な敗戦が新たな敗戦をもたらす悪循環にはまり、世界最高レベルのチームですら不安に包まれることもある。

クラシコでの敗戦、CL敗退

バルセロナはアトレティコ・マドリーとのCL準々決勝セカンドレグで敗れ、連覇の夢はついえた 【Getty Images】

 そして今のバルセロナはまさしく後者の状態にある。4月2日(現地時間)に行われたカンプノウのエル・クラシコで予期せぬ敗戦に見舞われると、続くアトレティコ・マドリーとのチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝ファーストレグでは2−1で競り勝ったものの、フェルナンド・トーレスの退場で数的優位を得たホームで勝負を決め切れず、セカンドレグでの逆転を許すことになった(0−2で敗戦)。

 平行してリオネル・メッシは新たな脱税疑惑が浮上するなどピッチ外にも問題が生じ、わずか数日の間にお祭りモードは一変。独走態勢を築いていたリーガ・エスパニョーラでも9日のレアル・ソシエダ戦で2連敗を喫したことで、アンドレス・イニエスタが「もう許されるミスはすべて犯した」と言っていた通り、手にしていたアドバンテージはあっという間になくなってしまった。

 2006−07シーズンから未勝利が続いているレアル・ソシエダの本拠地、アノエタでの一戦では、ただ試合に敗れただけでなく、先制点を許した開始5分から試合終了まで、バルセロナらしいプレーが全く見られなかった。それは開始2分に失点して以降、やはり無抵抗のまま0−1で敗れた昨年1月の対戦でも見られた光景であり、偶然のようには思えなかった。

 パナマ文書の公開により新たな脱税疑惑が浮上したメッシは、今後さらに厳しく罪が追及されることになるかもしれない。たとえ本人は認知していなかったとしても、成人である以上は責任を負う義務があるからだ。

「自分も同様の経験をした。苦しい時期だからこそ、身近な人々、友人や家族の支えが必要なんだ」。同じく脱税の罪を問われたハビエル・マスチェラーノは数カ月前にそう言っていたが、今回の一件がメッシのプレーに直接影響を及ぼしたかどうかは分からない。だがアノエタのピッチに立つ彼から、いつになく存在感を感じられなかったことは事実だ。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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