実は４年の秋口、プロ志望届を出していたが、社会人入りを固めていた。「下位で指名してもらえればうれしいですが……。社会人で鍛えて結果を残して、２年後、プロ入りしたい」と本人がそう言っていた。

　それほどドラフト戦線の話題に上っていなかったし、各球団も指名するという話は漏れてこなかったのだ。そこでまさかの上位指名。別の運命をもらったような、新しく一人の選手が生まれたような、本人も周囲も失礼ながら上位指名に驚いた。「伝統ある巨人にこんなに上位で指名されるなんて思ってもみなかった」とは本人の弁。

「５０メートルは５秒８ですね」と聞いた時、「いえ、５秒７です」と間髪おかずに訂正されたことがあった。実は性格は攻撃的でプロ向き。アピールするところは心得ているとみた。なにしろ５秒８はたまにお目にかかる数字だが、５秒７はめったにいない。陸上の公式日本記録が５秒７５だそうだから。

　キャンプでの紅白戦では一、二塁間をしぶとくゴロで抜くヒット、狙いすましてレフト前に落とす当たりなど巧打を披露し、左投手の変化球にも対応して、いやらしさをみせている。盗塁も記録した。

　巨人の外野陣は長野久義、立岡宗一郎、アンダーソン、亀井善行、大田泰示、橋本到ら。ライバルは多いがレギュラー争いに割って入ってきそうだ。また、鈴木尚広という足のスペシャリストがいて走塁術の教材が身近にいる。鈴木とともにここぞという得点チャンスに代走として出場機会を与えられそう。デビューは思った以上に早いかもしれない。