ヒンギス、ダブルス世界1位君臨の理由 40連勝中の35歳、勢い止まらず
ダブルス専門同士である利点
ともにダブルス専門であることのメリットは大きい 【写真:ロイター/アフロ】
「ミルザはパワー、ヒンギスはコントロール力という、タイプの違うプレーヤーなので、お互いに補い合える。ミルザのサーブ力やストローク力によって、ヒンギスの得意なネットプレーも生かしやすい。相手ペアの良さを封じ込めるような、高い完成度のコンビネーションだと思います」
実際ヒンギスはミルザのフォアハンドを「ツアーでもトップクラス」と褒め、その安心感が自分のプレーにもたらすメリットを何度も説明している。パワー不足というヒンギス唯一の弱点をミルザが補ってくれるので、ヒンギスは自分の持ち味をいくらでも発揮できるというわけだ。
またヒンギスは、ミルザが他のパートナーと違った最大の点としてダブルス・スペシャリストであることを挙げる。
「二人ともダブルスだけに専念できるという点は有利。シングルスもやっていたらどうしてもそっちが優先されてしまう」
いっしょに練習する時間もとりやすく、「絆(きずな)はどんどん深まっていった。作戦なんて細かく相談しなくても、ちょっとしたキーワードでお互いに理解できる」とヒンギス。ミルザも口をそろえて「試合でうまくいかないときでも、戦いながら解決法を見いだしてそれを実践することができる」とペアの長所を語る。そしてなんといっても、ヒンギスが「ずっと長い間、2人でナンバーワンとして戦ってきた気分」というほどの自信と喜びをエネルギーに、一戦ごとに強くなっていく印象だった。
フェデラーとのペアでリオ五輪へ
最初の引退の直接的な原因は、足の故障だったが、その遠因はビーナス・セリーナのウィリアムズ姉妹(米国)に象徴される女子テニスのパワー化の波だった。対ビーナスは11勝10敗、対セリーナは6勝7敗といずれも互角で、姉妹との勝負は対照的で非常におもしろかったが、パワーに対抗するためには相当無理なトレーニングをして負担をかけたようだ。
リオ五輪ではフェデラー(左)と混合ダブルスのペアを組む予定。写真は01年のもの 【写真:ロイター/アフロ】
五輪のメダルは、ヒンギスがまだ手にしたことのない栄光。そういえばフェドカップもそうだ。先の1回戦ではドイツを破り、18年ぶりのベスト4へ駒を進めている。準優勝した18年前のスイスチームにもヒンギスがいた。
時代を越え、苦難を越え、叶えた夢にはまだ壮大な展開があるかもしれない。