イ・デホはゼロからの挑戦を選択 韓国代表クリーンアップ、三者三様の評価
パク・ピョンホには高い評価
プレミア12でMVPに輝いたキム・ヒョンスはオリオールズでプレーする 【Getty Images】
「ウチのチームはレギュラー一塁手が決まっているので獲得は考えませんでしたが、彼のパワーは魅力的です。韓国リーグのレベルが落ちるとはいえ、50本のホームランが打てるということは、メジャーではその半分でも評価に値します。18〜25本くらい打てれば十分でしょう。パク・ピョンホがいたネクセンには昨年パイレーツに入ったカン・ジョンホが所属していたので、ツインズのスカウトは以前からカン・ジョンホとともにパク・ピョンホのことはチェックしていました」
鹿取氏はパク・ピョンホについてこう分析する。
「プレミア12では力が入っていましたが、広角に打てる技術があります。真ん中から外のボールにもバットコントロールを使って対処できます。韓国は外角中心の配球が多いので、メジャーの外角に広いストライクゾーンに迷うことはないでしょう」
またオリオールズ入りのキム・ヒョンスはプレミア12で対戦した大谷翔平(北海道日本ハム)が「一番良い打者だと感じた」と話し、160キロ台の速球を繰り返し投げ込ませた左打者だ。キム・ヒョンスについて鹿取氏は「相手投手のデータをしっかり把握して打つタイプです。逆方向に打てて、インコースのボールは窮屈そうにしながらもさばけます。他の2人同様にバットコントロールがうまいです」と評した。
キム・ヒョンスはイ・デホ、パク・ピョンホに比べるとパワーヒッターではない。キム・ヒョンスも自らについて「自分はアベレージヒッターで長距離打者ではありません。日本の打者に例えるなら左右の違いはありますが、内川(聖一/ソフトバンク)選手のようなタイプです」と話す。またナ・リーグ球団のスカウトは「韓国人打者の魅力はパワーで、日本の選手の長所はバットコントロールとスピードと走塁」と言い、キム・ヒョンスは韓国人らしい打者のイメージとは少し異なる。その本人は昨シーズン中、「来年のメジャー行きを見据えて、今年は強い打球を打とうと意識しています」と周到に準備をしていることを話していた。
イ・デホはメジャー昇格に自信
「4番打者として自分のことを求めてくれるところ、優勝争いができるところに行く。常にトップになるために、プロとして食っていかなきゃならないから」
自分の存在価値を評価されて生きる、職業野球人の矜持(きょうじ)をいつも語っていた。
しかし今回マイナースタートとなるイ・デホは、自主トレ先から韓国に帰国した2月5日、インチョン空港で現地メディアのインタビューにこう答えている。
「メジャーは以前から夢だった。また一番下から上を目指すというのもむしろ気楽だ。ずっとトップにいたらもっといい成績を残さなければならないという負担になる。マリナーズの指名打者にはいい選手がいるというので、一塁手としてキャンプで争ってメジャーに行く。自信はある」
33歳、ゼロからの挑戦をイ・デホは選んだ。
アジアの打者のレベルを証明へ
「どれだけプライドを捨ててやれるかだと思います。開幕を3Aでスタートしても途中でメジャーに昇格できるチャンスはあります。メジャーのベンチに入った時に、レギュラーではなく代打要員だとしても怖い存在の打者であることは間違いありません」
一方でこういう見方もあるとミン・フンギ氏は言う。
「イ・デホが結んだのはメジャー昇格した時に年俸が上がるスプリット契約。イ・デホにとっては不利な条件です。それでも米国に行くということは、開幕時にメジャー枠に入れない場合は、契約解除を選択できるという項目が含まれているのではないかと思います。もしその時点でソフトバンクから声が掛かれば戻ることができますし、韓国で古巣のロッテジャイアンツと交渉となれば、FA契約となるので総額100億ウォン(約9億3700万円)くらいは得られるでしょう。ただ本人は『メジャーに行く自信がある』と言っているのでその言葉を信じたいとも思っています」
鹿取氏は3人の韓国人打者のアメリカ進出についてこう話す。
「アジア人の打者がメジャーでどれだけやれるのか興味があります」
代表チームの3、4、5番打者の同時渡米。これを日本に置き換えると、山田哲人(東京ヤクルト)、筒香嘉智(横浜DeNA)、中田翔(日本ハム)がそろってメジャー進出するようなものだ。そう考えると他国の選手とは言え、アジアのレベルを確認する意味でもイ・デホ、パク・ピョンホ、キム・ヒョンスの成否の行方は日本から見ても興味深いものとなる。