【UFC】インパクト残すことが必須のベイダー ジョンソン戦はスタイル変更がポイント

WOWOW
 日本時間の1月31日(日)に米国ニュージャージー州ニューアーク プレデンシャルセンターで行われる『UFC in ニューアーク』。メインイベントは、ライトヘビー級ランキング2位のアンソニー・ジョンソンと4位のライアン・ベイダーによる、事実上の次期タイトル挑戦者決定戦。さらに、昨年『ROAD TO UFC:JAPAN』のコーチとしても活躍したジョシュ・バーネットが、ベン・ロスウェルと対戦するヘビー級ランカー対決も組まれている。この2試合の見どころを、WOWOW『UFC−究極格闘技−』解説者、高阪剛に語ってもらった。

ベイダーは自分をアピールする“柱”がほしい

ライアン・ベイダー 【(C)Photo Courtesy of UFC】

――『UFC in ニューアーク』メインイベントは、アンソニー・ジョンソンvs.ライアン・ベイダー。ライトヘビー級次期挑戦者決定戦というか、査定試合のような感じですよね。

 そうですね。とくにライアン・ベイダーにとってそうでしょう。前回、ラシャード・エバンスにも勝って、もうかなり連勝してますよね?

――5連勝中ですね。しかし、なかなかタイトル挑戦のチャンスが与えられない状況が続いているという。

 ライアン・ベイダーというのは、レスリングが強くて(元・全米学生王者)、そこにボクシングやMMAの技術を混ぜるのがうまい選手なんですよね。そして、自分のペースを崩さずに勝つことができているんですけど、“コレ”という武器が見えにくいんですよ。たとえば、右ストレートがすごく伸びてくるとか、パウンドが強烈だとか、勝負所の畳み掛けがすごいとか、そういった部分がちょっと足りないんですよね。

――プロとしての特長に少し欠けていると。

 勝つための実力ではなく、そのプロとしての部分がちょっと物足りなく感じてしまうからこそ、なかなかタイトルマッチに漕ぎ着けられてないんじゃないかな。まだ、一度もタイトル戦をやってないですよね?

――やってませんね。2008年に『TUF8』で優勝してから、もうUFCで闘うのは8年目ですから、キャリア的にも戦績的にもタイトルに挑戦していておかしくないんですけど。

 だから、タイトルに手が届くかどうかっていうのは、“そこ”なんですよね。

――現在5連勝中ですけど、すべて判定勝ちですしね。倒した相手は、オヴィンス・サンプルー、フィル・デイビス、ラシャード・エバンスら、申し分ないメンツなんですけど。いかんせんインパクトが薄いという。

 ライアン・ベイダーは、だからといってタックルでテイクダウンして固めて勝つという、動きのない試合をやってるわけでもないんですよ。

――そうなんですよね。打撃もしっかりやるし、ディフェンシブなわけでもない。

 しっかり総合の試合をやってるんだけど、器用貧乏に映ってしまうというか。一本柱がほしいところですよね。

――ライアン・ベイダーと言えば“コレ”というものがほしい。

 それが見えないから、デイナ(・ホワイト)とかUFCの首脳陣もタイトルマッチにGOサインが出せないんだと思うんですよ。

ジョンソンとベイダーは似た者同士に見えて実は正反対

――では、次のアンソニー・ジョンソン戦では、勝つことはもちろん、「ライアン・ベイダー」という存在をアピールする闘いが不可欠になりそうですね。

 そうですね。ただ、ライアン・ベイダーで自分がすごく印象に残ってることがひとつあって、2012年の日本大会で“ランペイジ”ジャクソンと対戦したときなんですけど。ものすごく遠い間合いからタックルを決めて、そのままテイクダウンを奪っていたんですよ。このタックルの間合いが遠いっていうのは、相手にとって脅威となる武器なんですね。だから、パンチが届かない距離からでもタックルが決められるというのが、ライアン・ベイダーの特長のひとつだと思うし。相手からすると、距離の設定が難しくなるんですよ。だからこそ、みんなライアン・ベイダーと対戦すると手こずっていると思うんですよね。

――なるほど。一方のアンソニー・ジョンソンは接近戦にめっぽう強い選手ですよね? 踏み込んで近い距離での強烈なフック、さらにそこからのパワフルなタックルが武器という。

 パンチもほとんどがフックで、ストレート系とか、ジャブで突いていったりとかは、あんまりしませんからね。だから、ふたりは似た者同士に見えて、まったく違うスタイルなんですよ。

――同じレスリング&ボクシングに見えるけれども、ある意味で、真逆の闘い方をするという。

 そうなんです。アンソニー・ジョンソンは距離を詰めたところで勝負。ライアン・ベイダーは、打撃にしろタックルにしろ、遠い間合いで自分の試合を作る。だから、距離の作り方ではライアン・ベイダーが一枚上だと思うんですけど、裏を返せば、遠いところで試合をしていた方が楽というか、安心できるんですよね。だから、リスクを背負っての打撃の打ち合いとかは、あまりやらない。そこがライアン・ベイダーの強さでもあり、物足りなさでもあるんですよね。

――連勝が続いた要因であると同時に、タイトルに挑戦できない原因でもあるわけですね。

 だから、ライアン・ベイダーもタイトル挑戦権をつかむためには、ここでインパクトを残すしかないですね。それは一度、タイトルマッチをやったばかりのアンソニー・ジョンソンも同じですけどね。

――ジョンソンは昨年、王者コーミエに一本負けを喫したばかりですし、ましてや前王者ジョン・ジョーンズの復帰も控えてますしね。

 あ、復帰が決まったんですか?

――まだ、いつ復帰するのかは決まってませんけど、無期限出場停止処分は解かれて、7月に開催される『UFC200』での復帰が噂されています。

 なるほど。ジョン・ジョーンズが帰ってくるとなると、またライトヘビー級勢力分布図が変わりますね。

タイトル戦を経験し化け始めたジョンソン

アンソニー・ジョンソン 【(C)Photo Courtesy of UFC】

――高阪さんは、ジョンソンvs.ベイダーをどのように予想しますか?

 ひとつ言えるのは、アンソニー・ジョンソンがタイトルマッチを一度やって得た経験値というのは、大変なものがあると思うんですよね。コーミエに敗れたものの、あの試合で得たものというのは計り知れない。だから、前回のジミ・マヌア戦でも、これまでのような、いきなり爆発力で押し切ろうとする闘い方じゃなくて、「慎重だな」と思うような場面がけっこうあったんですよ。

――“大人の闘い方”をしてましたよね。

 コーミエ戦で得た感触によって、ああいう闘い方になったと思うんですよ。あのクラスに勝つためには、爆発力だけでは押し切れない、考えて闘わなきゃいけないということが分かったんでしょうね。そして、目には見えにくい微妙なプレッシャーのかけ方とか、追い込み方をできるようになっている可能性がありますね。

――では、次の試合ではアンソニー・ジョンソンが“化けた”姿が見られるかもしれないわけですね。

 そうですね。だから、アンソニー・ジョンソン、ライアン・ベイダーのどちらが、より変わった姿を見せられるか、そこがポイントになってくると思いますね。

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