アゴを上げた方が速く走れる?? 楽RUNポジションを極めよう!

細野史晃

【Getty Images】

今回のテーマは「アゴ」

 東京マラソンも近くなり、初めてマラソンを走る人も、記録を狙っている人も練習に一層力が入る時期ですね。

 さて、今回はよくランニングでいわれるアドバイスとして
「アゴを引く!」
 ということ……。

 そう今回のテーマは「アゴ」です。

 よく、一般的には「アゴを上げるな! アゴを引け!!」というアドバイスをされます。さて、実際のところこの辺りどうなのか?

 結論から言うとアゴは軽く上げた方が良いです。

 え?? ホント?

 と思われるかもしれませんが、これは身体の構造で見ても正しいです。

良いアゴの上げ方と、ダメな上げ方

【スポーツナビDo】

 が、もちろん上げ過ぎはダメです。アゴの上げ方には、良い上がり方とダメな上がり方があります。それはどういうことか?

 アゴ以前に身体の姿勢にポイントがあります。

 以下の二つの写真をご覧下さい。

【スポーツナビDo】

 左の写真はいわゆるダメなアゴの上がり方です。右の写真は正しいアゴの上がり方になります。左の写真は、体重が落ちて後ろにあることが分かると思います。一目瞭然ですよね。この動きは完全にアウトです。ここからアゴを引くと後ろにある体重が前に乗るようになりますが、重心は下に落ちたままになります。一方、右の写真のような姿勢を優先することで、前にも上にも体重が行くようになるので走ることが楽になります。

 その時のポイントは、みぞおちとおへその間(楽RUNポジション)に体重(重心)を持ってくること。 
 このように体重(重心)が引き上がっていれば、アゴは上げた方が楽に走れます。

アゴを上げ過ぎてしまうことのデメリット

【スポーツナビDo】

 アゴを引き過ぎてしまうことのデメリットの一番は、気道を狭くしてしまうことです。そして、首や肩の動きを制限してしまいます。アゴを「軽く」上げて首の上に頭をしっかり乗せると、首の関節、つまり頚椎が自由に動きます。そうすると頸椎から胸椎、腰椎、そして骨盤へと背骨の波打つ動きを作れるので、滑らかな身体の動きを作れます。この背骨の動きを制限してしまうと、体全体の大きなエネルギー源を失ってしまいます。すると、肩関節や股関節から先の筋肉や関節の動きでしか走りを作れなくなります。

 そうした、末端の動きで走ってしまうと重心が落ちてしまい、より推進力を増す為の対策としてのアゴ引きが、逆に推進力を失う動きへと変貌してしまいます。アゴが上がって体重が落ちる癖がある人や、そういった状態に陥ったときにアゴで動きを変えることは可能ですが、最善策ではありません。最善策は重心の位置を正しい位置へと戻すこと。その位置はみぞおちとおへその間、つまり楽RUNポジションへ重心を持っていくことが肝心です。そして、アゴは軽く上げてしまった方が良いです。
 このようにアゴを上げた二つの動きの違いは一目瞭然です。また、たとえ右の写真のように楽RUNポジションで走っていても、ここでアゴを引くと、逆に窮屈な走りになりそうなのは予想がつきますよね。ですから、高い重心からその重心を外に引っ張るようにして走ると楽に走れます

 アゴの動きに注目して、姿勢を変えるだけでこれだけの違いがあります。こうした細かいチェックを正しく理解できると走りが驚くように軽くなります。

 次回は、「正しい腕振りとは?」というテーマでお届けしたいと思っています。お楽しみに!
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著者プロフィール

ランニングコーチ・スポーツコンサルタント。 Sun Light History 代表 1985年、京都生まれ、東京育ち。都立小石川高校(現・東京都立小石川中等教育学校)→国立埼玉大学→株式会社リクルート HR マーケティングを経て、ランニングコーチとして独立。中学から陸上競技を始め、高校から三段跳へ転向、大学時に日本ランキング入りを果たす。指導者がいない競技人生を経験し、よい指導者や指導法との出会いはスポーツをより豊かにするという思いから指導者を志す。自身の経験と学びから『楽RUNメソッド』を開発。短時間の指導でも自己記録更新まで導く手腕には定評がある。指導者のみならず、スポーツの価値を高めるためのアドバイザーとしても精力的に活動している。 主著「マラソンは上半身が9割」「マラソンは三日坊主で大丈夫!」

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