ゴルフ界が抱える五輪のジレンマ メジャー優勝の目標と揺れる選手の思い

違和感のある出場資格と競技方式

リオ五輪の日本代表入りが確実視される松山だが、選手の思いは複雑なようだ 【Getty Images】

 ゴルフが112年ぶりにリオデジャネイロ五輪で正式競技に復帰する。それを機会に減少するゴルフ人口に歯止めを掛けるためにも、ゴルフ関係者の誰もが、リオでの起爆剤となるような盛り上がりを期待している。しかし、そのために講ずるこれといった決め手となる方策もなく、どことなく静観している様子にも見える。ゴルフが正式競技だったのは100年以上も前であり、誰ひとりとして、それを経験した者がいなのだから無理はない。

 ゴルフが2016年と2020年の五輪の正式競技になると決定したのは、09年10月にコペンハーゲンで行われたIOC(国際オリンピック委員会)総会でのことだった。

 それは、まだタイガー・ウッズの全盛時代で、誰もがタイガーの雄姿をリオで見られると期待したし、タイガー本人も「そのとき、僕は40歳になっているけど、国を代表してブラジルに行けるならものすごく楽しみだ」とコメントしていたものだ。

 だが、その時点では、競技形式も出場人数も選考方法も確定しておらず、ようやく詳細が決定となったのは14年だった。全英オープンが行われていたロイヤルリバープールで国際ゴルフ連盟(IGF)が以下の発表を行ったのだ。

●競技形式はストロークプレーの個人戦とする。
●出場選手は2016年7月11日時点での世界ランキングで選出され、出場枠は男女ともに60人までとする。
●世界ランク15位までの選手は1カ国4人を限度とする。
●世界ランク16位以下は1カ国2人まで出場できる。ただし、15位以内に1人が入っている国は1人として、合計2人までとする。
●ホスト国ブラジルは最低でも1人の出場を保証する。
●5大陸(アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニア)から最低でも1人の出場を保証する。

 以上の発表に対して、ワールドカップのような国別対抗戦ではなかったため、出場資格と競技形式に違和感を持った者も少なくなかった。

 60人の出場で、予選落ちなしの4ラウンドのストローク競技なら、世界ゴルフ選手権(WGC)のキャデラック選手権やブリヂストン招待とほとんど同じだ。しかし、IGFのピーター・ドーソン会長は「最も多くの国が参加できる選考方法」と説明。世界でのゴルフ普及を考えた上でのプランだとしたのだ。

議論の余地さえない選手選考

 五輪の選手選考は、競技によって異なり、場合によっては国民的な関心を集め、物議を醸すことさえある。ゴルフの場合は、今年の7月11日の世界ランクで最終的に代表が決まるため議論の余地さえない。

 現状(1月12日現在)では、男子の場合、米国国籍の選手が世界ランク15位以内にジョーダン・スピースを筆頭に8人が入っており、リオに4選手が送り込まれると見られている。ちなみにタイガーは同420位で、はるかに圏外になってしまった。

 女子は15位までに韓国勢が8人で、やはり代表が4人になるのは間違いないだろう。現在、その15位に位置しているのは、昨年の日本ツアー賞金女王のイ・ボミだ。昨年は「賞金女王になる」という亡き父との約束を果たすため日本ツアーに専念したイ・ボミだが、今年は「リオに出たい」と積極的に海外メジャーに出場すると明言している。

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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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