避けられなかったモウリーニョ解任 暫定監督ヒディンクに託した重要な舵取り
アブラモビッチ「これ以外に手立てがなかった」
チェルシーを退団することが正式に発表されたモウリーニョ監督 【写真:ロイター/アフロ】
チェルシー、ジョゼ・モウリーニョを解任へ――。その第一報が世界中に流れたときのことである。
ほどなくしてクラブから正式にモウリーニョ退団が発表され、チェルシーの第2期モウリーニョ政権は終えんを迎えた。名目上は「双方合意の上で契約解除」。だが、これはモウリーニョが辞めるときの常套句で、特に今回は彼自身が愛するチェルシーを「自分から出て行くことはない」と再三繰り返していたことからも、事実上の解任であることは明白だ。
結果的にラストゲームとなった現地時間14日のレスター・シティ戦(1−2)を落とした時点で、プレミアリーグ16試合で4勝3分け9敗の15位、勝ち点は15ポイントしかなかった。これはプレミア前年王者のワースト成績であり、過去のデータを振り返れば降格も十分に考えられる数字だった。
「モウリーニョを失いたくなかったが、これ以外に手立てがなかった」
そう選手たちに説明したオーナーのロマン・アブラモビッチは、珍しくここまで忍耐強く浮上を待った。だが、最後には『ガーディアン』紙が言うところの「英国フットボール史上最も劇的なスランプ(ガーディアン紙)」に耐え切れなかったのだ。
サポーターは選手を非難
本拠地スタンフォード・ブリッジには、「Jose Mourinho Simply The Best」「WITH YOU JOSE」「JOSE IS OUR SPEIAL ONE」といった横断幕が多く見られた。不満の矛先を低調なパフォーマンスを続ける選手たちに向けたものも多く、「JUDAS(裏切り者)」という文字や、中にはエデン・アザール、セスク・ファブレガス、ジエゴ・コスタを名指しして「The 3 rats(3匹のネズミ)」と非難するものもあった。実際、セスクとコスタは先発メンバー発表と、途中交代でピッチを退く際にブーイングを浴びている。けがで欠場したアザールもピッチにいれば同じ目に遭っただろう。さらに、ブラニスラフ・イバノビッチ、ペドロ、オスカルとこれまた今季は結果を出せていなかった選手たちがゴールを決める度に、客席からはモウリーニョのチャントが響きわたった。
3‐1で快勝したサンダーランド戦で、皮肉にもチェルシーのプレー内容は抜群だった。『イブニング・スタンダード』紙の言葉を借りれば「威厳があり、決然としていて、落ち着き払い、熱心で、残留争いなど考えられない」レベルのパフォーマンスだったが、それがかえってファンに歯がゆい思いを抱かせることになってしまった。解説者たちの中にも、不振だった選手たちが突如として昨季のレベルを取り戻すシュールな光景はむしろ「みっともない」もので、これならモウリーニョ解任を避けられたはずだ、という意見が多かった。