【スターダム】紫雷イオの決意「エースの座を不動に」 団体を背負って臨む里村明衣子戦へ

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リングに立つ理由は「お客さんのため」

2月14日の“紫雷姉妹対決”から重要な戦いを続けて来たイオ。15年は「体を酷使した」と苦笑い 【花田裕次郎】

――前回インタビューをさせて頂いた時は、2月14日の“紫雷姉妹対決”の前でした。それ以降2015年はタイトルマッチなど重要な試合が続きましたね。

 まあ、選手が減ってしまったので、残っている選手に課せられるもの、求められるものが大きくなるので、大事な試合が多かったですよね。先日失ってしまったのですが、白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム)も7度防衛していますし、タッグのベルト(ゴッデス・オブ・スターダム)も『サンダーロック』で6度の防衛に成功していますから。だから今年は割と、体を酷使したかなというのはあるんですけど(笑)。
 それを乗り越えたことで、成長したところもあるので、嫌だと思うより、喜びの方が大きいですよ。

――団体としては、姉妹対決の直後となる2月22日に、世IV虎さんと安川惡斗さんの“凄惨マッチ”が起こってしまいました。イオさん自身はあの出来事をどう捉えていますか?

 こういうことが起こってしまった時、一番最初に思ったのは、会場にいるお客さんへの謝罪の気持ちでした。試合に関係ない人間だったのですが、同じ団体の人間として、本当に申し訳ないという気持ちで、謝罪の言葉を伝えさせて頂きました。
 私たちはプロである以上、お客さんを幸せにして、帰ってもらわないといけないと思うし、誰も幸せにならないものを見せてしまったことに、自分としては素直に謝らせて頂きました。そこからけがをしてしまったり、心に傷を負ってしまったりとありましたが、自分も仲間としていろいろサポートしていこうと思い、手を尽くしたつもりだったんですけど、埋まらない部分もありましたね……。
 私たちが何のためにリングに上がるのか、なんでプロレスをやるのかと聞かれたら、一番はお客さんのためにやっているんです。何があろうと、お客さんに喜んでもらうために、リングに上がっています。それが日々生きていく原動力になっているので、お客さんたちのために、すべてにおいて最優先に行動しないといけないなと思っています。
 最初は「(大会を)自粛しろ」とか「(団体を)解散しろ」という声もありました。それは仕方なくて、それぐらいショックを与えてしまったので、真摯に受け止めるしかないなと。でも、休むことによって喜ぶ人より、自分たちがリングに上がることによって喜ぶ人のことを、笑顔になってくれる人を増やしたかったので、自分たちはリングに上がり続け、試合を続けて来ました。その代わりに激しくて、強くて、美しい試合を見せ続けることが使命で、それしかできないから、それを全力でやるしかないなと思っていました。

 それを続けた結果が、ついてきてくれる人は残って、今ではまたお客さんも増えてきています。新人選手もデビューしてくれたわけで、プロレスで起こったことは、プロレスでしか埋められない。そう思って、プロレスに打ち込みました。

――団体の中で盛り上げようとする選手がいる一方で、団体を去る選手もいました。その出来事については?

 私も元々フリーでやっていたので、環境を変えることは自分自身も経験したので、それが100%悪いことだとは思いません。良い、悪いは自分で決めることなので。ただ、若い選手たちの退団は、ちょっと悲しかったですね。

――以前、風香GMにお話を聞いた時、「5年は続けてほしい」とおっしゃっていました。ただ、スターダムの事情を見ると、なかなか続ける選手が少なかったと……

 まだ旗揚げから5年経ってないわけですからね。それで、これだけの入れ替わりですから……。私もすさまじいと思います。
 ただ、辛いからだと思いますよ。練習も厳しいし、試合も激しい。求められるレベルが高いし、プレッシャーも感じます。私はフリーだったので、ほかの団体でも戦ってきましたが、スターダムほど求められるものが高くなかったように思います。お客さんが求めているものが高いので、そのプレッシャーに負けて耐えられなかったり、プレッシャーに耐えるために厳しい練習をしますが、それがきつくてやめる場合もありますし。ただその分、達成感はすごくて、ほかの団体では味わえない、喜びがあるんです。その喜びに辿り着く前にやめていくのは、やっぱり悲しいですね。

活動の幅を広げていき「世界征服!」

2016年はもっと活動の幅を広げたいと話すイオ。そのためにも23日の里村戦でベルト奪回を目指す 【スポーツナビ】

――個人的な見解ですが、ちゃんと続ければトップに上がれるというのを最近示したのが、岩谷さんだったように見えます。

 そうですよね! 麻優なんか、田舎から出てきて、止めずに頑張って今のポジションまで来ましたからね。継続って力ですよね。
 私も“どインディー”の、誰も知らないような、観客も50人しかいないところでデビューして、“誰?”って状況から続けて、ここまで来ましたし。やっぱり止めないことが一番大事ですよね。チャンスは必ず巡ってくるから。続けていれば、誰かしらチャンスは巡ってくるので、それをつかむかつかまないかの問題だけです。
 これはプロレスに限らず何の仕事でもそうじゃないですか、今の時代って? 私も、“ゆとり世代”ですけど(笑)。だから、プロレスに限らず、どの業界でも止めなければ、コツをつかんで楽しくなるよと。この記事を読んでくれている人に、「迷った時には続けることが大事だよ」と伝えたい!(笑)。

――『継続は力なり』ということですね。

 私の場合は、続けるというより、「止めるのを止めよう」と思っていました。最初の頃は、すぐにでも止めたいって思っていたんですけど、「とりあえず、次の試合をやってから考えよう」と思っていて、止めることを先延ばしにしていたんですよ。それが良かったのかも知れませんね。

――少し話は変わってしまうかもしれませんが、先日、イオさんの記事を読んでいて、「3年半前の事件」があって一番の底辺を知ったからこそ、止めずに続けられたということもありますか?

 完全にありますね。あれで“どん底”を見ているので。本当にあの時は、選手生命が終わったというか、もうリングに戻ってこれないと思いました。でも周りの方の助けもあったし、リングに戻って来れました。
 あれがあったので、その後は「大丈夫」と言い続けています。自分自身がいろいろあって、自分が大変だった時にスターダムに助けてもらい大丈夫になったわけですが、今度はスターダムを紫雷イオが助ける番で、スターダムを「大丈夫」にしなきゃいけないと。だから私がメインに立ち続けて「大丈夫」と言える激しい試合をして、補えるところは全力で補おうと。腕が折れようが、脚が折れようが、全力で続けようという覚悟で臨んでいましたね。

――その行動で団体の顔になり、さらには米国での大会も開催されたりと、幅も広がりましたね。

 そうですね。私、よく行っているように思われていますけど、米国は初めてだったんですよね。それで、どれだけ米国で通用するかを知りたくて、試したかったんですけど、スターダムUSAとして行けたことが刺激的でしたよね。
 思った以上に米国のお客さんがスターダムのことを知っていたし、求めているなと。あとは、継続していくことが大事なのかなと思っていて、1回目は成功と思えるものが見せられたので、これを点で終わらせるのではなく、続けていけたらもっとすごいものになると思います。これからは、スターダムUSAでも、紫雷イオ米国進出でもいいし。私の目標は世界征服なので。

――征服!(笑)

 あ、進出ですね(笑)。それは目標として掲げているので。伸び白しかなくて、手ごたえのみを感じました。

――今後はもっと活動の幅を広げたいと?

 2016年はいろいろなところに行きたいですね。今年は毎月後楽園大会をやりましたが、今度は毎月大阪での大会とか、地方の大会を増やしたいなという話もしていて。米国もですね。いろいろなところに出向いて、いろいろなものを見せたり見たり、触れていきたいです。

――最後になりますが、16年に活動を広げていくためにも、23日はハッピーエンドで終わりたいところだと思いますので、試合への意気込みをお願いします。

 1月の後楽園大会でスターダムは5周年になります。そこにスターダムの至宝がないというわけにはいかないし、ここまでの団体対抗戦、仲間たちの思いを背負い、団体を代表して23日は、私がメインイベントのリングに立って、里村明衣子を倒し、女子プロレス界のエースの座を不動のものにしたいと思います。応援、よろしくお願いします!

(取材・文:尾柴広紀/スポーツナビ)

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