岩隈、急転ドジャース 前田への関心は? MLBウィンターミーティングの現場から

丹羽政善

前田健太は出遅れか?

報道陣に対応する前田健太の代理人・アダム・カッツ氏 【Getty Images】

 一方、10日から交渉がスタートした前田健太に関しては、ポスティング時期が明確ではなかったこと、他の大物投手の移籍が活発だったこともあり、ウインターミーティング期間中に目立った動きはなかった。むしろ争奪戦から撤退、という空気が優勢だったのではないか。

 例えば、特にダイヤモンドバックスは前田獲得に熱心だったが、ウインターミーティング前にグリンキーと合意。8日には、ブレーブスからシェルビー・ミラーをトレードで獲得し、事実上、先発投手を必要としなくなった。

 ジャイアンツは8日、ブルース・ボウチー監督が、「あんな選手だったら、どのチームだって興味がある。われわれはビデオも見た」と話し、地元紙『サンフランシスコ・クロニコル』も、「ジャイアンツ、前田に興味」と報じたが、1時間後には、「前田とジャイアンツのことは忘れてくれ」とツイートした。どうやらボビー・エバンズGMが否定し、前GMで編成担当の最高責任者ブライアン・セイビアンも、「お金をかけて先発投手を取りにいくことはない」と話したことで、最初の報道を撤回したようである。
 
 資金力があるのはドジャース、ヤンキースなどだが、今の時点では、彼らが高いお金をかけて、先発を取りにいくかと言えば、不明だ。それなりにもう、駒はそろっている。
 
「タイミングが遅すぎた」と話したのは、旧知の米記者。さらに続けた。
 
「10日午前8時(米東部時間)から交渉が解禁となったが、その時点でもう、フリーエージェントのデービッド・プライス、グリンキー、ジェフ・サマージャ、岩隈らの契約が決まっていた」
 
 確かにその通りで、トレードでも、先ほどのミラーのほか、レッドソックスのウェード・マイリーらの移籍が決まり、先発を必要とした球団は着々と陣容を固めた。
 
 もちろんまだ、ナショナルズなど資金力があり、先発を必要としているチームはあるが、候補はかなり絞られたのではないか。そもそも、2000万ドル(約24億円)というポスティングフィーも合わせれば、総額はそれなりの金額になるので、参加できるチームは限られる。

前田は「右の井川慶」?

 また、動きを鈍くしている一因は、評価にもあるかもしれない。
 
 全体的に前田の評価は高い。制球力がある。チェンジアップの落差がある。スライダーが鋭い等々。ただその一方で、こんな見方もあるそうだ。
 
「右の井川慶」
 
 前田は、ダルビッシュ有、田中将大ほど力で抑えにかかる投手ではないことは知られている。加えて、岩隈や黒田ほど体が大きくない点もメジャー関係者は不安視し、井川のように通用しないのでは、という懸念を拭えないのだと言う。それでも公示が早ければ、先発投手を必要とする球団はリスクを犯してでも取りにいったはずだが、米記者が指摘したように、出遅れが痛い。すでに先発投手の市場は、収束に向かっている。
 
 10日はウインターミーティングの最終日。その日の朝に前田は正式にポスティングされたわけだが、会議を終えて足早にホテルを後にする球団関係者からは、前田獲得に向けての積極的な言葉は聞かれないままだった。
 
 ところで、ドジャースとの合意と伝えられてから、一度だけ岩隈から連絡があった。
 
 経緯もはっきりしてきたので、確認のため連絡を取ると、「契約が正式に決まったら、話しましょう」と返事があった。
 
 具体的にどういう経緯でドジャースを選択したのか。今は正式契約を待つしかないが、現時点では、11日に健康診断を受け、問題がなければ、12日に正式発表、記者会見という流れとなりそうだ。

※岩隈はその後ドジャースとは契約が成立せず、マリナーズと1年契約を結んだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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