羽生結弦が抱く成長への果てなき渇望 世界最高得点も「これがゴールではない」
危機感を持ちつつ、若手の台頭を歓迎
今季はソチ五輪で金メダルを争ったチャンが復帰。フェルナンデスは4回転の精度に磨きをかけ、連勝でGPファイナル進出を決めた。
今季シニアに上がったばかりの金がNHK杯でも躍進。羽生も対抗心を燃やす 【坂本清】
こうした若手の存在を羽生は歓迎している。
「最近、宇野選手をはじめジュニアから素晴らしい選手がたくさん上がってきています。年寄り扱いされるけど、僕もまだ20歳なんですよね(笑)。年下だからという気持ちは全然ないし、むしろやっとシニアの舞台に来てくれてうれしいです。僕自身、まだ(金が跳べる4回転)ルッツを試合に組み込むまでできていないし、(4回転)ループも確率が上がっていないので、研究させてもらっています」
「圧倒的に強くならないといけない」
「いつかはSPで4回転を2本入れないと勝てないなと思いました。自分のプログラムの中では4回転を2本入れてしっかり加点をもらえる入り方、下り方をして、その上でステップ・スピン・表現力などいろいろなところで全神経を使いながら滑り切る。それが確実に平昌五輪までに必要になってくるし、現王者として連覇するためにも『圧倒的に強くならないといけない』と思っています」
FSでは4回転を3本組み込む構成が予想される。ミスなく演じ切れば、ISU公認スコアにおいて、合計得点で史上初の300点超えが視野に入ってきそうだ。しかしSPの結果が良いときほど、FSは難しくなるもの。実際、羽生もソチ五輪のSPで100点超えを果たしながら、FSではいくつかミスを犯し、あわや逆転を許しかねない状況に追い込まれた。だからこそSPの得点にも浮かれず、すぐに「明日がある」と切り替えられたのだろう。
「まだまだできることはいっぱいあると思いますし、これがゴールではないです。今後も挑戦しながら頑張りたいなと思っています。FSに関しては久しぶりに気持ちを楽にして臨めるなと思うと同時に、気を引き締めてしっかりと楽しみながら、できることをやりたいなと思います」
油断や慢心はない。進化し続ける五輪王者の目はすでに未来へと向けられていた。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)