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羽生結弦が抱く成長への果てなき渇望
世界最高得点も「これがゴールではない」

危機感を持ちつつ、若手の台頭を歓迎

 この果てしなき成長への渇望はどこから来るのか。根底にあるのは危機感だ。羽生は五輪王者として臨んだ昨シーズン、GPファイナル連覇と全日本選手権3連覇を成し遂げたものの、世界選手権ではハビエル・フェルナンデス(スペイン)の後塵を拝した。けがや体調不良というエクスキューズはあったが、それも羽生に言わせれば「自分自身の管理が甘かっただけ」。SPでは一度もノーミスの演技ができず、FSにしても満足いく出来ではなかった。


 今季はソチ五輪で金メダルを争ったチャンが復帰。フェルナンデスは4回転の精度に磨きをかけ、連勝でGPファイナル進出を決めた。

今季シニアに上がったばかりの金がNHK杯でも躍進。羽生も対抗心を燃やす
今季シニアに上がったばかりの金がNHK杯でも躍進。羽生も対抗心を燃やす【坂本清】

 さらには若手の台頭も目覚しい。17歳の宇野昌磨(中京大中京高)が初参戦のGPシリーズで躍進し、ファイナルへと駒を進めた。そしてNHK杯のSPで2位につけた18歳の金博洋(中国)は、4回転ルッツのコンビネーションを武器にこの日も95.64点という高得点をマークしている。羽生は金の演技を見ていなかったそうだが、「最終滑走だったし、日本語のアナウンスもあったので必然的に得点は耳に入ってきました。『絶対に抜かしてやるぞ、見てろよ』と思いながらやっていました」と、対抗心をのぞかせていた。


 こうした若手の存在を羽生は歓迎している。


「最近、宇野選手をはじめジュニアから素晴らしい選手がたくさん上がってきています。年寄り扱いされるけど、僕もまだ20歳なんですよね(笑)。年下だからという気持ちは全然ないし、むしろやっとシニアの舞台に来てくれてうれしいです。僕自身、まだ(金が跳べる4回転)ルッツを試合に組み込むまでできていないし、(4回転)ループも確率が上がっていないので、研究させてもらっています」

「圧倒的に強くならないといけない」

 自身を脅かすライバルが増えるほど、羽生の細胞はうずき出す。「成長したい」という欲求はとどまることを知らない。見据えるのは連覇が懸かる2018年の平昌五輪だ。


「いつかはSPで4回転を2本入れないと勝てないなと思いました。自分のプログラムの中では4回転を2本入れてしっかり加点をもらえる入り方、下り方をして、その上でステップ・スピン・表現力などいろいろなところで全神経を使いながら滑り切る。それが確実に平昌五輪までに必要になってくるし、現王者として連覇するためにも『圧倒的に強くならないといけない』と思っています」


 FSでは4回転を3本組み込む構成が予想される。ミスなく演じ切れば、ISU公認スコアにおいて、合計得点で史上初の300点超えが視野に入ってきそうだ。しかしSPの結果が良いときほど、FSは難しくなるもの。実際、羽生もソチ五輪のSPで100点超えを果たしながら、FSではいくつかミスを犯し、あわや逆転を許しかねない状況に追い込まれた。だからこそSPの得点にも浮かれず、すぐに「明日がある」と切り替えられたのだろう。


「まだまだできることはいっぱいあると思いますし、これがゴールではないです。今後も挑戦しながら頑張りたいなと思っています。FSに関しては久しぶりに気持ちを楽にして臨めるなと思うと同時に、気を引き締めてしっかりと楽しみながら、できることをやりたいなと思います」


 油断や慢心はない。進化し続ける五輪王者の目はすでに未来へと向けられていた。


(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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