吉田麻也が挑む生き残りを懸けた戦い 「二足のわらじ」を履きこなせるか?

田嶋コウスケ

隙のない守備と積極的な攻撃姿勢

10月28日に行われたリーグ杯・アストンビラ戦では右SBとして先発出場、鮮やかなミドルシュートを決めた 【Getty Images】

 主将のフォンテが試合中に負傷した第11節ボーンマス戦(11月1日)では、後半開始時から吉田がCBのポジションに入った。CBとしては9月23日に行われたリーグ杯・MKドンズ戦(6−0)以来、約1カ月ぶりにピッチに立ったが、隙のない守備でクリーンシート(無失点)の勝利(2−0)に貢献した。

 実際、吉田の好プレーにスタンドが沸いたシーンがあった。ノルウェー代表FWのジョシュア・キングがペナルティーエリア内に侵入すると、吉田は安易に跳び込んだり、滑り込んでタックルを仕掛けたりせず、間合いをとって対応。落ち着いた動きと判断で突破を許さず、サポーターから拍手が起きた。久しぶりのCBにも「全然問題なかった。やっぱりCBの方がやりやすい。SBをやっていたから、心肺機能的にも楽だった」と手応えを口にした。

 一方、前述のリーグ杯・アストンビラ戦では、右SBとして先発。立ち上がりから意識して攻撃に参加し、後半にはMFガストン・ラミレスとのワンツーから左足で鮮やかなミドルシュートを決めた。

「監督が前につけるプレーを好んでいるので、積極的なプレーを立ち上がりから見せたいと思っていました。ゴール? 技術というより、結果を出したい気持ちがボールに乗ったのかなと思います」

 積極的な攻撃姿勢が、今シーズンの初ゴールにつながった。トップスピードに乗ったまま蹴り込んだ、技ありの得点だった。

生き残りを懸けて取り組む課題

吉田は自身の課題を「ミスを減らすこと」「集中力を90分間継続させること」と語る 【写真:ロイター/アフロ】

 CBとして出るのか、あるいは右SBとしてプレーするのか。本人が「いつもぶっつけでやることになるので、準備だけはしておく必要がある」と語るように、どちらでも出られるよう集中力を保ち、出番がきたら頭をすばやく切り替えることの難しさはある。特に、ベンチスタートの場合は突発的に出番が回ってくるだけに、柔軟に対応するすべを体で覚えていく必要もある。

「本当に結果を出し続けていかないと生き残っていけない。1試合で満足せずにコンスタントに高いレベルでパフォーマンスを出していけることが大事だし、それが僕の課題でもある」

 吉田が自身の課題として常に指摘している「ミスを減らすこと」「集中力を90分間継続させること」。それらをクリアし、右SBも高次元でこなすようになれば、選手としての幅はさらに広がる。だが、目指すその道は決して平坦ではない。11月21日に行われた第13節ストーク戦(0−1)で出番が最後まで訪れなかったように、高いレベルでのポジション争いに身を置くことで、もどかしさや悔しさを感じることもあるだろう。

 世界中から猛者が集うプレミアリーグで吉田は、生き残りを懸けた戦いの真っただ中にいるのだ。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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