金メダルだった北京五輪を彷彿させる韓国 特別な思いで臨む準決勝の日本戦

室井昌也

イ・デホもリーダーシップを発揮

準決勝・日本戦の先発が予告された千葉ロッテ所属のイ・デウン。プレミア12ではシーズン以上の好調さで、「対戦したことがある打者が多いという点では気楽」と語る 【写真は共同】

 今回の「世界野球プレミア12」は初開催ということもあり、当初、韓国の選手は気持ちが乗っていないように見えた。しかし試合を重ね、また、選手同士が台北の韓国料理店で膳を囲む中で、団結力が生まれていった。その中心にいるのは、野手最年長33歳のキャプテン、チョン・グンウ(ハンファ)。そして同じく33歳のイ・デホ(福岡ソフトバンク)がチョン・グンウをサポートしながら、持ち前のリーダーシップで若い選手たちを締めている。

 またトゥサンでキャプテンを務めるオ・ジェウォンは、キューバ戦の試合前、「チームスタッフが疲れているようだから」と打撃投手を買って出て、控え野手たちにボールを投げ込んだ。この一体感は9戦全勝で金メダルを獲得した2008年北京五輪の時の雰囲気に近づきつつある。

 19日の準決勝・日本戦はイ・デウン(千葉ロッテ)の先発が予告された。イ・デウンもシーズン以上にいい状態を見せている選手だ。前回先発のベネズエラ戦ではシーズン中とは異なり、先輩捕手に全幅の信頼を寄せ、サインに首を振ることなく安定感のある投球を見せた。この試合でイ・デウンは5回2失点で勝ち投手になっている。イ・デウンは日本戦について、「対戦したことがある打者が多いという点では気楽」と話している。

決勝戦を目指す一発勝負の戦い

 今回、日本と韓国が対戦する舞台・東京ドームは韓国にとって特別な場所だ。「日本プロ野球の心臓部」と形容され、東京ドームを本拠地とする巨人のブランド価値は、日本以上に韓国では高い。これまで東京ドームではWBC、アジアシリーズなどの国際大会が行われているが、今回の韓国代表の中で東京ドームでの出場経験があるのは28人中9人しかいない。それ以外の選手からは、「東京ドームでプレーしたい」という憧れの声が聞かれた。

 日韓のトップチーム同士が東京ドームで対戦するのは2009年3月9日のWBC1次ラウンド以来4度目。過去3回は韓国の2勝1敗で、いずれも2次ラウンド進出をかけたリーグ戦、スタート地点での対戦だった。しかし今回は違う。決勝戦というゴールを目指す一発勝負の戦いとなる。

 キューバ戦終了後、キム・インシク監督はこう話した。
「日本戦ということでの特別な戦略というのはない。ただ前回負けているのでそれなりに考えて戦う」
 憧れの地での戦い、札幌の雪辱、決勝進出を懸けた一戦。数々の思いが詰まった11月19日の東京ドームでの対戦はどんな結末を迎えるのだろうか。

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著者プロフィール

1972年東京生まれ。「韓国プロ野球の伝え手」として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。また編著書『沖縄の路線バス おでかけガイドブック』は2023年4月に「第9回沖縄書店大賞・沖縄部門大賞」を受賞した。ストライク・ゾーン代表。

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