記憶に残る2015年ロイヤルズの世界一=“史上最高のカムバックチーム”の裏側
それぞれの形で全員野球を体現
ワールドシリーズ第5戦の延長12回、このシリーズ初打席のクリスチャン・コローンが勝ち越し打。選手それぞれがそれぞれの形でチームに貢献し、驚異的な粘りを生み出した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
殊勲のコローンはこれがプレーオフ初打席だったという事実も、ロイヤルズを語る上でシンボリックに思える。MVPはペレスが獲得したが、このベネズエラ出身の正捕手だけが目立ったわけではない。シリーズでのチーム最多得点はベン・ゾブリスト(5得点)、最多打点はホズマー(6打点)、最多四球はゴードン(5四球)、最多盗塁はケーン(4盗塁)、最多塁打はアルシデス・エスコバル(12塁打)。
多くの主力選手がそれぞれの形で貢献した。粒ぞろいの先発投手陣、シリーズを通じて防御率1.90だったブルペンまで含め、ロイヤルズは“全員野球”という使い古された表現を体現するようなチームだったのだ。
「やり遂げられると信じている」
今ポストシーズン中の11勝のうち8勝が逆転勝利、そのうち7勝が2点差以上で、7回以降の51得点はメジャー新記録――これほど驚異的な粘り強さを発揮した理由を、ヨスト監督はそう説明した。
“経験”にすべてを帰結させようとするのは危険だし、無謀ですらある。車が走るのにガソリンとエンジンが必要なのと同様、ベースボールでも才能、スキルがなければ良いプレーはできない。どれだけの場数を積んでいようと、現時点での能力の裏打ちがなければ活躍はできない。
誰もが歯車の一つとして仕事を遂行
それから1年、ケーン、エスコバー、ペレス、ホズマー、マイク・ムスターカス、ジャロッド・ダイソン、ウェード・デービスといった昨季からの残留組の落ち着きは際立っていた。
全米注目のワールドシリーズでもエゴはなく、誰もが歯車の一つとして仕事を確実に遂行していった。才能、個人技、勢いを糧にここまでたどり着いた感のあるメッツとは、チームとしての成熟度、総合力に雲泥の差があった。
経験に裏打ちされた献身的姿勢
最後の会見で漏らしたヨスト監督のそんな言葉も胸に響いていくる。
ロイヤルズの30年ぶりの世界一は、タレントと、経験に裏打ちされた献身的姿勢がゆえにもたらされた2年越しの勝利――。背骨を打ち砕かれるような1年前の悔しい敗北の後で、彼らは強さとたくましさを増して同じ舞台に戻ってきた。何より、そんなプロセスと結果こそが、“史上最高のカムバックチーム”が成し遂げた“最大のカムバック”だったのだろう。