阪神優勝へ、鳥谷は身を粉にする覚悟 痛みを口にせず戦い続けるキャプテン

週刊ベースボールONLINE

勝負どころで高まる存在価値

海外FA権を行使して残留した今季。勝負の9月へ向けて存在価値は高まっている 【写真は共同】

「そもそも自分たちはクライマックス・シリーズ(CS)に出られたらいいなんて、思っていないから」

 前半戦終了直後、言い切った。当時、セ・リーグは混戦の極みにあった。首位・DeNAから最下位・中日まで4.5ゲーム差。阪神は首位から0.5ゲーム差の3位に位置していた。史上まれに見る“だんごレース”。目まぐるしく順位が変動する状況の中、あらためて強い決意を表明した。

「優勝することしか考えていないもん。やっぱり優勝して日本シリーズに出たいから。去年は2位からCSを突破して日本シリーズに出たけど、優勝できなかった悔しさは強くあったしね。CSしか経験していない選手も多いけど、福留(孝介)さんもそうだけどベテランの選手たちは、今年で言えば143試合を戦い抜いて一番上にいることがどれだけ重たい、価値があることなのか分かっている。だから、そこだけを目指す」

 前回リーグ制覇した05年は全146試合を戦い抜いた。「先輩たちに“させてもらった”優勝」と振り返るが、今や美酒の味を知る数少ないプレーヤーの1人。想像を絶する重圧にさらされる勝負どころでこそ、鳥谷の存在価値が一気に高まる。

 グラウンドに立つだけでチームを落ち着かせることができる。窮地(きゅうち)に立たされたとき、その背中で、そのひと言で雰囲気をガラリと変える。真のリーダーとして、時には熱く、時には冷静に、今まで以上にナインを引っ張る時期に来た。

「阪神で優勝したい。後輩に優勝を味わわせてあげたい」

 昨シーズン終了後のオフ、メジャー挑戦も視野に海外FA権を行使し、最後は並々ならぬ決意を胸に残留した。開幕直前の3月下旬には、西宮市内の焼き肉店で選手決起集会に出席。「裏方さんのためにも優勝しましょう。優勝旅行に行きましょう」と声を張り上げた。

 通算四球数で球団トップ記録に躍り出るなど、虎の歴史に日々名を刻み続ける今季。負傷の影響もあり、現時点で打率は2割8分、遊撃守備でも10失策と納得できない数字が並ぶ。それでも、リーダーは虎の支柱として1試合も欠かせない存在だ。生え抜き12年目の34歳。悲願を成就させるため、身を粉にする覚悟はとうの昔に決めてある。

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