リオへ崖っぷちのロンドン女王・ゴールボール代表、悔しさを力に変えて
攻撃力アップと若手の成長が課題
ロンドンパラリンピックでは、日本選手団最年少の 17歳だった若杉。日本の新たな武器になるため、さらなる成長が期待されている 【スポーツナビ】
ロンドンパラリンピックで控えメンバーだった若杉遥は「これまで課題だった『もう1人の自分が客観的にゲームを見ること』がずっと克服できず、(ピンチになると)『どうしよう』と気負ってしまっていた。でも、今大会に(センターの)浦田選手が出られないということで、『自分のできることを冷静にやるしかない』と吹っ切ることができたんです」と話し、3日間で7試合をこなした収穫を口にした。
日本は、多くのパターンを繰り出すことで相手に戦術を読まれにくくするために、選手それぞれが複数ポジションをこなせるようにならなくてはならない。主に攻撃中心のウィングだった若杉が、世界の強豪を迎えた今大会でセンターを経験できたことはチームの明るい材料になった。
「失点やアウトが重なって嫌な雰囲気になったときに、我慢してプレーできるよう声を掛け合うことが重要。例えば『ライトの選手のアウトが増えているから、落ち込んでいるのかな』と考えて励ますようなことが試合中にできるようになった」と若杉。ベンチで見守った“本職”の浦田も「彼女の声が響くようになって頼もしさを感じる。中から攻撃もできる、私とは違うタイプのセンター。日本のひとつの武器になると感じた」と及第点を与えた。
これまでなかなか進まなかった若手の強化を推し進めることはできた。だが、チームは結局、最下位。市川HCは「相手のデータを伝えても、若手選手は思うようなコースに投げられない。スローの技術が低かった」と肩を落とした。
残された時間は3カ月と短いが、チームは何を重点に置いて強化を図るのだろうか。浦田は言う。
「トーナメントでは、ここぞというときのコントロール力とセットプレーが必須になる。今、1秒で投げているボールをいきなり0.6秒のスピードにはできないが、声をかけて気持ちの波を整えたり、あうんの呼吸を作っておくなど、チーム練習でできることはある。11月までに小さな『できる』を増やし、チームで切符を取りにいく」
ベテランと若手が融合するチームへ
8月頭に行われたジャパンパラ・ゴールボール競技大会ではベテラン勢の欠場から最下位に沈んだ日本。リオへの切符をつかむためには彼女らの復帰が必要不可欠だ(左から2人目がキャプテンの浦田) 【スポーツナビ】
「あの決勝の舞台を自分も経験したい」と語る若杉と、同じく控えメンバーだった欠端瑛子のパラリンピックに懸ける思いは強い。「次のパラでもチーム皆で表彰台に立ち、金メダルを掲げている姿をイメージしながら練習に取り組みます」と、欠端は語気を強めた。
11月に争うリオへの切符は残り1枚だ。女子ゴールボール日本代表は、ロンドンパラリンピック女王の意地を見せることができるか。崖っぷちの悔しさを力に変えてほしい。