星奈津美を強くした“バタフライ攻め” 待望の金メダルでチーム日本に弾み

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初の金メダル、あふれる涙を止められず

 ロシア・カザンアリーナに、今大会初となる君が代が鳴り響いた。

 水泳の世界選手権は現地時間6日、競泳競技の5日目を迎え、女子200メートルバタフライ決勝で星奈津美(ミズノ)が2分5秒56で優勝を飾り、日本の競泳女子選手としては初となる同大会での金メダルを獲得した。この結果、来年のリオデジャネイロ五輪の代表に内定した。

世界選手権の日本勢金メダル第1号となった星。来年のリオデジャネイロ五輪の代表にも内定した 【Getty Images】

 星は、同種目で2012年ロンドン五輪の銅メダルを獲得しているものの、世界選手権では11年上海大会、13年バルセロナ大会と、2大会連続4位に終わっていた。念願のメダル獲得について「ほっとしている」と語る星は、なかなか実感が湧かなかったという。スタンドから手を振るチームメート、表彰式でのメダル授与などを経て、金メダリストとなったことを徐々に実感していった。所属するミズノの先輩である寺川綾さんがメダル獲得を喜ぶ姿を見たときには、あふれる涙を止めることができなかった。

手術から約8カ月で頂点へ

テレビ放送で解説を務める寺川綾さんを見るやいなや、これまでの思いが涙となってあふれ出た 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「自分でも『よくここまで来ることができた』と思う」と語るとおり、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。

 星は16歳の時に「バセドー病」(甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病)を患った。発病後しばらくは投薬のみだったが、昨年10月の仁川アジア大会後に、疲れが取れない状況が続くようになった。「アジア大会の後は泳げないかもと思った」というほどに悪化し、同年11月に甲状腺の摘出手術を決断した。星はそこから約8カ月、日本代表監督でもある平井伯昌コーチ指導のもと、世界の頂点を目指してきた。

 平井コーチの課す、“バタフライ攻め”という徹底的に泳ぎ込むメニューをこなし、水中で水をかくプルの力が強くなった。その結果、スピードが出せるようになり、4月の日本選手権では女子200メートルバタフライ6連覇(11年の代表選考会を含む)を達成した。タイムこそ、2分6秒66と満足のいく結果ではなかったものの、「スピードが出ているのが分かるので、しっかりと勝負ができる」と手応えを感じていた。

 6月にはスペインのシエラネバダで高地トレーニングを行い、スタミナも強化してきた。もともと後半の追い上げを得意としている星は、今大会の決勝でも150メートル時点では3位だったが、ラストスパートでトップに躍り出た。「前半は少し消極的な部分があったけど、持ち味を生かしたレースができました」と、本人も納得の表情を見せた。

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