「アップルウォッチ」とスントの「アンビット3RUN」はどんなランナーにマッチするのか? 南井正弘のイチオシ!

南井正弘

アップルウォッチでほとんどのことが完結する便利さ

ワークアウトアプリは屋外ランニングのほかに室内ランニングやサイクリングなどのアクティビティにも対応する 【南井正弘】

 アップルウォッチの基本機能に関しての詳細は、すでに数多くのレビューがガジェットの専門家によって紹介されているので割愛する。簡単にいうと、時刻を確認する以外に、メールやフェイスブック、インスタグラムといったSNS、天気予報、マップなど、あらゆることがポケットやバッグからiPhoneを取り出さなくても手首部分で確認・操作可能となる。

 実際に使ってみるまでは「ポケットからiPhoneを取り出すくらい苦にならないのに……」と思っていたが、使い始めて2日ほどで、その考えが間違っていたことを思い知らされ、アップルウォッチでほとんどのことが完結する便利さに魅了されることとなった。

 アップルウォッチには加速度センサーが搭載されており、着用者の動きを検知し、歩行距離やアクティブカロリー(活動カロリー)を計測。これがプリインストールされたアクティビティやワークアウトといったアプリと連動して着用者の生活をアクティブにしてくれる。

 また、一般的な時計の裏蓋部分に心拍センサーも搭載されているので、胸部分に窮屈な心拍ベルトを着用することなく心拍数を計測することが可能だ。このようにランニングを楽しむのに対応するスペックを採用したアップルウォッチだが、GPS機能は搭載されていないので、この部分に関してはiPhoneを利用することとなる。

利便性だけでなく正確さも信頼できる

ランを終了させると合計距離、合計時間、アクティブカロリー、安静時消費カロリー、合計カロリー、平均ペース、平均心拍数といった項目が表示される 【南井正弘】

 ワークアウトアプリを起動させて実際に走ってみる。最初に使う際には画面に「20分ほどGPS機能をオンにした状態でiPhoneを持って走ってください」と表示されるので、指示の通りにGPSをオンにして走り始めた。走り始める前に目標とする距離、時間、カロリーなどをあらかじめ設定してからスタートするように勧められるが、フリーという項目からゴールを設定することなくスタートすることも可能。初回ということもあり、ほぼ毎日走っている距離である6kmをゴールに設定してスタート。ディスプレイには経過タイム、走行距離、現在のペースが表示されるが、カラー液晶であり、文字のサイズも大きめなので視認性は非常に高い。

 他のGPS搭載ディバイスが1kmを知らせる地点よりも20mほど手前でバイブレーション機能が作動。1kmに到達したことを知らせてくれた。しっかりと振動するので、これならランニング中も気付かないことはないだろう。このバイブレーションによる通知は1kmごとのラップのほか、目標距離の中間点や目標距離の到達時などにも行われる。

 ランを終了させると合計距離、合計時間、アクティブカロリー、安静時消費カロリー、合計カロリー、平均ペース、平均心拍数といった項目が表示される。胸の部分に心拍ベルトを身に着けることなく、心拍数が計測できるのは、心拍トレーニングを取り入れているランナーには嬉しいところ。ちなみにアップルウォッチの心拍計による心拍数と、スントの胸につけるタイプの心拍計を同時に使用して数値を比較したが、計測値の差異はあまりなかったので、利便性だけでなく正確さも信頼できると思う。

 翌日はiPhoneを持たずにアップルウォッチだけで走ってみたが、かなり早い時点で1kmラップの通知がくるなど、シューズ内部にセンサーを入れて距離を計測した初期のNIKE+の時に感じたのと同様に、加速度センサーのみでの距離測定に不安を感じた。何度かGPSをオンにした状態のiPhoneを持って走ることで正確性が増すということを聞いていたので、実際にそうしてみると、アップルウォッチだけでのランでも距離測定の正確性が徐々に増していった。これなら競技としてではなく、フィットネスとして走っているランナーなら充分に対応できるレベルであると思う。ちなみにiPhoneを携帯すればナイキ+ランニング、ランタスティック、ランキーパーといったアプリを使用し、アップルウォッチで操作することも可能だ。

ワークアウトの走行データはiPhoneのアクティビティアプリに蓄積され、確認することができる 【南井正弘】

日常生活でも活躍するアンビットシリーズ

日本語対応になったことを歓迎するランナーは少なくないはずだ 【南井正弘】

 筆者が2013年末よりメインで愛用しているランニング用デバイスがスント社の製品だ。最初が「アンビット2」、その次が機能をランニング向けに絞った「アンビット2R」、そして現在レギュラーで使用しているのが「アンビット3RUN」であり、このモデルも「アンビット2R」と同様に機能を「アンビット3ピーク」や「アンビット3スポーツ」よりも絞り、ランニングアクティビティに特化したモデルだ。

 スントのアンビットシリーズはその美しいデザイン&フォルムでも知られており、普段使用する時計としても評価が高い。他ブランドのランニングウォッチを日常用にも使用していると、「お金がなくて普通の時計は買えないのかな?」と見られがち。だが、スントのアンビットシリーズは北欧ブランドならではの洗練されたデザインが特徴で、普段使いしていると「その時計のデザインは個性的でカッコいいですね!」とか、海外の空港で「Your watch is really cool!」と声を掛けられることもある。

 というわけで、スントのアンビットシリーズもアップルウォッチと同様に日常生活でも活躍する。「アンビット3RUN」の主な機能は以前このコラムで紹介した「アンビット2R」とほぼ共通で、計測距離の正確性など、機能性に優れたランニング用デバイスであることは間違いない。

 大きな改良点としては、ブルートゥース機能を搭載することで、スマートフォンやPCへ簡単に走行データを転送することが可能となったこと。またスマートフォンにメールが到着すると、それを通知してくれるので、「アンビット3RUN」を普段使いするユーザーには嬉しい機能だ。さらに日本語表示にも対応したので、「スントのデザインや機能は好きだけど、英語は苦手なので……」という理由で購入を躊躇(ちゅうちょ)していた人には朗報といえる。

 しかしながら、今回もバイブレーションによる通知機能の導入は見送られ、音声による通知のみなのは残念なところ。「ピー」音でラップなどを知らせるタイプだと、騒々しい場所などで聞き逃すこともあるからだ。

「アンビット3RUN」にブルートゥースが搭載され、専用アプリのMovescountがiPhoneなどのスマートフォンに対応したことによって、データの転送も簡単になった 【南井正弘】

共に日常生活からランニングまで対応

 このようにアップルウォッチと「アンビット3RUN」の両方をしっかりと使ってみて分かったことは、この二機種は全くコンセプトの異なるモデルだが、共通しているのは日常生活からランニングまでしっかりと対応するという点。しかしながら、それぞれがマッチするランナーのタイプは下記のように若干異なる。

○アップルウォッチ
・腕時計にスタイリッシュなデザイン性を求めるのと同時に、手首部分でメールチェックやフェイスブック、インスタグラムといったSNSの確認をしたいランナー。
・フィットネスの一部として走っており、レースへの参加にはあまり興味がなく、ペースや距離計測の正確性にはそれほどシビアではないランナー。
・ナイキ+ランニング、ランタスティック、ランキーパーといったアプリで距離を蓄積しているランナー。

○アンビット3RUN
・ランニング用のデバイスを普段にも使用したいユーザーで、レースへのエントリーにも積極的なランナー。
・日々のランやレース時において正確なペースや距離測定を求めるランナー。
・日常生活における通知機能などにはそれほどこだわらないランナー。

 今回、アップルウォッチと「アンビット3RUN」を使ってみて思ったことは、今後ランニング用デバイスと普段使いの時計の垣根は、取り除かれる傾向にあるだろうということ。アップルウォッチのようなスマートウォッチにカテゴライズされるデバイスがより一層スポーツへの対応を進め、反対に「アンビット3RUN」のようなスポーツ用デバイスが日常生活における利便性を高めることで、両者の特徴は近い将来に限りなく近くなるような気がする。今後の動向をチェックしたい。

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著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

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