調教師と獣医、兄弟で狙う初ダービー 二冠牝馬から学んだキタサンGI仕様

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弟との強力タッグ

オーナーである北島三郎さん(右)とは開業当初からの縁だ 【netkeiba.com】

 清水師は1972年、大阪市で8人兄弟に生まれた。師が生まれた年に父・貞光さんが馬主資格を取得。2004年のスプリンターズSを制したカルストンライトオなどを所有した。

「幼稚園の頃から父親と色んな競馬場に行って、ひらがなよりもカタカナを先に覚えました(笑)」。生まれた時から競馬に囲まれた環境ゆえに、「他の仕事は一切考えたことがない」という。

 8人兄弟のうち競馬の世界に入ったのはもう1人いる。栗東トレセン内で獣医師として開業する5つ下の弟・靖之さんだ。靖之獣医師は、厩舎開業当初から全頭診ている、いわば清水厩舎のホームドクターだ。

「うまいことやっていますよ」と兄が冗談めかして笑えば、弟・靖之獣医師も「兄に関しては、思ったことを全部言えますね」と言う。

 JRAの診療所が総合病院の役割を果たすのに対し、開業獣医は街のお医者さんやスポーツドクターの役割を果たす。追い切り前に脚元や体を触って、速い調教をやっても大丈夫かという判断を下したり、疲労が蓄積しないよう予防する。

 獣医の立場から見て、キタサンブラックはどんな馬なのか。

「デビューの頃と比べると、すごくいい状態になっていますね。幼い体だったのが、トレーニングを積み、つくべきところに筋肉がついてきました。でも、柔らかくてまだ子供っぽい筋肉で、成長途上にあります。毎回、関東へ輸送をしていますが、ほとんどの馬は輸送をして帰ってくると体がしぼんでしまいます。でもキタサンブラックは、輸送後もしっかりカイバを食べるし回復が早いんです」

 栗東の開業獣医の中で調教師と兄弟なのは、恐らく清水兄弟だけだろう。珍しい兄弟タッグで厩舎初GIを狙う。

ファレノプシスから学んだGI仕様の仕上げ

最終追い切りも力強い動きで好調アピール 【netkeiba.com】

 初めての日本ダービー出走に、「やっとですね!」と清水師。完敗と語った皐月賞から、どんな逆転プランを描いているのか。

「皐月賞で先着された2頭は強いけど、敵わないとは思いたくない。100の状態かつ、坂路とウッドチップコースを併用して鍛えあげてきました。GIを狙うには、GI仕様の仕上げ方があるんだと、ファレノプシスで学びました」

 未勝利や500万下クラスでは、結果はもちろんだが次のレースのことも考えた仕上げになる。しかし、GIは違う。

「日本ダービーの後は、夏休みになるでしょう。1週前追い切りには関東から北村宏司騎手が来て、しっかり負荷をかけました。ジョッキーも乗った感触が良かったみたいです」

 27日(水)の最終追い切りは、CWコースで併せ馬。前半は併走馬をゆったりと追いかけ、ラストは四肢を伸ばし迫力のある走りで1馬身先着。

「単走よりも前に馬を置いた方が集中して走れますからね。1週前にある程度負荷をかけたので、終いの反応だけ確かめました。皐月賞もしっかり仕上げましたが、それ以上に目一杯に仕上げていきますよ」

 靖之獣医師も「兄の厩舎の馬はスパルタで鍛えられるので、それを乗り越えた馬はムキムキになって本当に強くなる」とその効果を語る。

皐月賞からの逆転

「逆転したるぞ!!」清水久詞調教師は気合満点だ 【netkeiba.com】

 皐月賞ではクラリティスカイが逃げたが、同馬は別路線を歩む。スピリッツミノルも皐月賞を見ると逃げるとは限らない。場合によっては、キタサンブラックの逃げもあり得るのだろうか。

「そこは、北村宏司騎手に任せます。今までのパターンからすれば、ゲートさえ決めれば! と思いますが、そう簡単にはいかないでしょう。内枠が欲しいですね!」

 母の父サクラバクシンオー。距離適性はどう考えているのか。

「この馬自身は長距離向きな体つきですし、スローでも折り合えます。直線は長いですが、(皐月賞の中山より)平坦になるのもいいです。皐月賞は、遠心力で外に膨れながら4つのコーナーを回っていましたが、ゆったり回れる東京コースになるのも魅力的ですね」

 開業してもうすぐ丸6年。「あっという間だった」という中で、開業当初から縁のある演歌歌手・北島三郎さんの愛馬(名義は大野商事)で、厩舎初めての日本ダービー出走となる。

「オーナーも期待されています。早く日本ダービーの舞台に行きたいです。逆転したるぞ!! という気持ちです」と目を輝かせた。

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