“モンゴル帝国”の対抗馬は現れるか? 今春、初土俵を踏んだ注目の新弟子たち

荒井太郎

実力は折り紙つきの大輝は前相撲から

出世披露に臨む関西学院大出身の宇良(写真中央)。彼らには復活した相撲人気をさらに高める活躍が期待される 【写真は共同】

 八角部屋から初土俵を踏んだ日本体育大出身の大輝(本名・中村大輝)は大学4年間で学生相撲選手権個人決勝戦に3度進出するなど実力は折り紙つき。大学2年のときには準決勝で遠藤(現・幕内)、決勝戦で正代(現・幕下)を破り学生相撲の頂点に立った。中学、高校、大学といずれも“横綱”に輝いた有望株は「やるからには横綱を目指したい。一番強い白鵬関と早くやってみたい」とプロでも横綱を目指す。

 恵まれた体格と長いリーチを生かした突っ張りが最大の武器だが、立ち合いで鋭く踏み込んで左上手を浅く引き、胸を合わせて攻め立てる相撲も力強い。大学最終年はビッグタイトルに恵まれず、幕下付け出し資格を得られずに前相撲からのスタートとなった。

「久しぶりに緊張した」と話すが、前相撲2番はいずれも圧勝で難なく一番出世を果たした。順調にいけば年内に幕下。来年中には幕内の土俵に上がっているだろう。

話題先行の宇良は舞の海のような名脇役に

 御嶽海、大輝以上に注目を浴びていたのが、関西学院大から初めて角界入りした木瀬部屋の宇良和輝だ。相撲と並行して小学3年から始めたレスリングで仕込まれたタックルのような立ち合いで相手の懐に潜り込むと、足取りや居反りなどを繰り出す“アクロバット相撲”が売り物。172センチの小兵ながら大学3年のときには、中村大輝(現・大輝)を鮮やかな足取りで仕留めたこともある。

 宇良が出場する春場所2日目に行われた前相撲には異例となる約30人の報道陣が集結。通常は身内の観戦がほとんどで会場はガラガラだが、この日は約300人の観客が序ノ口前の土俵目当てに訪れた。しかし、注目の宇良は奇手を“封印”し、押しに徹する正攻法で相手を圧倒。翌々日2番目の相撲も押し出しで2連勝した。

「基本に忠実な相撲を取ろうと思った」

 部屋の稽古では四股やすり足、ぶつかり稽古など、今は基本の繰り返しに終始する。前相撲2番の相手はいずれも相手は15歳。地力的にも得意技を出すまでもなかった。

「(居反りや足取りは)出すときになったら出すけど、それを狙ってというのはない」

 学生時代よりも体はひと回り大きくなり、たくましくなった。今は話題が先行するが、しっかり鍛えてプロの体ができれば舞の海のような“名脇役”として幕内で活躍する可能性も秘めている。

 彼ら日本人若手ホープたちが順調に育ち、近い将来、角界を席巻するモンゴル勢の対抗勢力となれば、復活した相撲人気もさらに拍車がかかるに違いない。

2/2ページ

著者プロフィール

1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、百貨店勤務を経てフリーライターに転身。相撲ジャーナリストとして専門誌に寄稿、連載。およびテレビ出演、コメント提供多数。著書に『歴史ポケットスポーツ新聞 相撲』『歴史ポケットスポーツ新聞 プロレス』『東京六大学野球史』『大相撲事件史』『大相撲あるある』など。『大相撲八百長批判を嗤う』では著者の玉木正之氏と対談。雑誌『相撲ファン』で監修を務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント